ずぶり

其の二十 残りし者


 「さ、三太ぁぁ……」

 三平が重い足を引きずるようにして一歩前に出た。 毛脛の濃い男の足が、肉色の粘液にずぶりと踏み込む。

 ”ああ……そこは……”

 彼の足の下で粘液状の『ずぶり』が悶え、当然の様に三平の足に絡みつく。

 「く、くそう……」

 三平のふくらはぎにゆるゆると纏いつく『ずぶり』。 その肉色の粘液が、彼の足を這い登りはじめた。 

 「うぁ……の、上って来る……」

 ベタリ、べタリ…… 粘液が溶け崩れた棒に、それがふやけた様な女の手にと、徐々に変りながら三平の足を這い

登ってくる。

 「く……来る……がぁぁ……」

 三平が拒絶する直前に、『ずぶり』が三平の股間たどり着いていた。

 "ああ……愛しや"

 女の手が、男根をベタリとした感触で包み込んだ……それが一瞬で女の顔に変る。

 「う……う……」

 濡れた口腔が男根を捕らえて離さず、うねる舌がザラリとした感触で亀頭を舐め上げる。

 ヌルリ……ヌルリ……

 得体の知れない感触に、三平は男根がじんわりと蕩けてしまいそうだ。

 「や……溶ける……蕩けて……あ……あっ……ああ……」

 ヒクヒクヒクヒク……

 『ずぶり』の中で、三平の男根が快楽にのたうち、あまりの快感に三平はその流されに身を任せてしまった。

 「ああ……なんてええんだ……」

 陶然として呟く三平、その耳に『ずぶり』がささやき掛ける。

 "ああ……貴方が愛しい……"

 "私達を……愛して……"

 "お願い……蕩けさせて……"


 立ち尽くす三平、その眼前に一人の『ずぶり』が粘液から立ち上がった。

 「あ?」

 『ずぶり』は艶然と微笑み、濡れたように光る体をくねらせ、そっと腕を開いて三平を誘った。

 「あー……」

 三平はふらふらと『ずぶり』の腕の中に入り、その体を抱きしめる。

 「う……うぅぅぅ……」

 妖しく濡れた体が、三平の腕の中で悶え、彼を官能の沼にじわじわと引きずり込む。

 三平の腕は『ずぶり』の中に半ばもぐりこみ、三平の胸に密着した『ずぶり』の胸は三平の胸板に粘りつき、溶け合

おうとしている。

 「うひゃう……」

 異様な感触に、三平の体が震えた。 そして熱く溶けあったところから、『ずぶり』の快感が三平の体に染みこんくる。

 「ああ……もっと……もっと中に……」

 産毛の一本一本、毛穴の一つ一つにいたるまで、三平は『ずぶり』と密着し、激しく睦みあう。

 ”入ってくる……奥に……もっと……もっと……”

 「ああ……おらを離さないで……全部包んでくれぇ……」

 『ずぶり』の中は、穏やかな温もりにと優しい愛撫に満ちていた。

 三平は『ずぶり』を激しく求め、その中に埋没していく。

 彼の背後から別の『ずぶり』が立ち上がり、その溶けかけた体で背中から彼を包み込んだ。

 「ああ……ええ……これで……これで……」

 滴り落ちる『ずぶり』の雫が彼の顔を覆っていく。

 やがて、三平の体は二人の『ずぶり』の間で見えなくなった。


 その間に三蔵は、三平同様に三太の後を追おうとし、巨大『ずぶり』の秘所に踏み込んでしまった。

 てらてらと光る陰唇が彼の行く手をさえぎる。

 「この……うあっ!?」

 滑る肉襞の感触が手に染みこむ。 次の瞬間、三蔵は手でいってしまった。 彼は手を押さえてうずくまる。

 「良い心地だったでしょう?」

 彼の目の前に、着物を着た『ずぶり』が現れ、うねる肉襞を片手で捕らえ、三蔵に覆いかぶせる。

 「ひ……」

 恐怖は一瞬だった。 ぬるぬるうねる『ずぶり』の肉襞は、触ったところ全てに男の喜びを呼び覚まさせる。

 「あ……あ……あ……」

 立ち尽くす三蔵、それをくるりと取り巻いた肉襞が、彼の体が巨大な男根であるかの様に、優しく淫らに摩りあげる。

 ぶるんと大きく振るえ、三蔵はその快楽に溺れる。

 体のあらゆるところが『ずぶり』に反応し、熱い快感を感じてしまう。

 そのたびに体が心地よく振るえ、どこからか男の精が迸っていくような気がする。

 「いく……いく……いい……いい……いぐ……いぐ……」

 『ずぶり』の肉襞の筒の中で、三蔵の声だけが念仏の様に響き続ける。 やがて、筒の下のほうから、白く粘る液体

がとろりとろりと流れ出す。

 その白い液体は、三太、三平を呑み込んだ肉色の粘液と混じり、歓びに打ち震えながら奥に運び去られて行った。


 そして『ずぶり』の前には頭だけが残った。

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