ずぶり

其の十八 谷間にて


 「うーむ……便利な錫丈だな」

 頭は錫丈に?まって滑り降りながら呟いた。 地蔵の錫丈は岩棚から、仰向けに寝ている巨大『ずぶり』ののどぼとけの辺りまで届いている。

 「……」

 頭は『ずぶり』に足がつく直前で止まり、つま先で下をつついてみた。 柔らかな感触だが、足がもぐってしまうことはなさそうだ。 しかし其れ

の正体を考えると、足をつけるはどうしてもためらわれる。

 頭ぁ……いけそうですかい……

 岩棚の上から手下達が声をかけてきた。

 「ちっ」

 ここでぐすぐずしていると、臆病者ととられかねない。 意を決し、頭は『ずぶり』の喉に降り立った。

 おおっ…… 岩棚の上でどよめきがあがる。 頭はどうだと言わんばかりに胸を張り、岩棚の上に向かって手招きをしてみせた。

 岩棚の上でしばらく動きがあり、やがて手下達が錫丈に?まって降りてきた。


 「下が気になりやすね……」 誰かがこわごわと足を持ち上げ、足の裏をあらためている。

 「仕方あるまいが。 行くぞ」

 山賊達は岩棚を振り返る。 錫丈は引き上げられているが、そこから金色の輝きがあふれ出しているのを確かめ、とぼとぼと歩き出した。

 目指すは最初の難関『乳が丘』だ。


 「上から見たときもでかかったが……」

 山賊達はそばで見る、巨大な『乳が丘』の威容に圧倒された。 ここまで来ると頂にあたる乳首が見えない。

 「どうやって上を越えるか……」

 乳房は自重でたわみ、巨大な『饅頭』のような形になっており、縁の辺りの高さは人の背丈の倍はありそうだ。

 誰かが飛び上がって乳房に飛びついてみたが、弾力のある乳房に半分めり込んみ、手がかりが無く滑り落ちてしまった。

 「頭、谷間を抜けやしょう」

 小柄な八平はそう言って『乳が丘』の谷間に歩み寄った。 豊満な『乳が丘』がぴたりと合わさっているが、下の方には三角の隙間がある。 

人一人ぐらいなら抜けられそうだ。

 「狭いな……」

 頭は顔しかめたが、八平はかまわず腹ばいになり肘を器用に使い、上半身を『谷間』に潜り込ませた。

 ……先は抜けているようです……このままいってみやす……

 くぐもった声で告げ、八は平ずり、ずりと『谷間』進み始めた。


 たっぷん……たっぷん……

 「おう……揺れやがる……」

 両方の壁は言うに及ばず、肘を突き立てている『ずぶり』の胸も、かなり柔らかくなってきた。 その為か、八平は船に乗っているかの様に揺

すられ、なかなか進むのが難しくなったきた。

 「えい、めんどうな」

 手を伸ばして壁を鷲掴みし、強引に前に進みはじめた。

 びくり……びくり…… 

 八平が進むのに合わせ壁が震える。

 「……」

 八平は言い知れぬ不安を覚えたものの、其れを押し殺して前に進むことに専念する。


 「頭……なんか『ずぶり』が震えてませんか?」

 「なに?」 

 頭は『ずぶり』の『乳が丘』に手をあててみた。

 びくり……びくり……

 「乳が脈打っている……まずい!下がれ」

 「へ?」

 「いいから、少し下がれ」

 山賊は『乳が丘』から少し距離を取り、鎖骨の辺まで下がった。

 「あっ!」

 誰かが上を指した、白い液体がたらたらと『乳が丘』の斜面を流れてくる。

 「わわわっ!?」

 乳は乳房の縁で、行く筋もの流れとなって滴り落ち、彼らの方に流れてくる。

 乳に触れまいと、山賊達は鎖骨の上で、奇妙な格好で踊る羽目になった。

 
 「わ?」

 八平は奇妙な声を上げる。 背中の辺りが、生暖かい液体で濡れはじめたのだ。 そしてむせ返るような乳の匂いが辺りを埋め尽くす。

 「うわ……い、急がねば」

 八平は慌てて体を前に引っ張る。

 ずるり…… あっ……

 これが『ずぶり』乳の力なのか。 乳で濡れた肌が『ずぶり』の肌と擦れ合った瞬間、頭が白くなるほどの衝撃が背筋を走った。

 お……おお……

 思わず動きを止め、余韻に浸る八平。

 お……ほう……

 動きを止めていると、徐徐に高ぶりが収まって来た。 同時に力が抜け、くたりと地に伏せる。

 「……え、えがった……じゃねぇ……」

 今度は慎重にじわりと進む。

 ずる……り……

 うっく……

 纏いつく『ずぶり』の谷間と擦れ合う皮膚……動きが遅い分、深い喜びが巻き起こる。

 ずるり……ずるり……

 は……ぁ……は……ぁ……

 機械的に肘を動かし、八平は芋虫の様に進む。  体を包む乳の温もり、甘い乳の香り、そして全身に吸い付く『ずぶり』の肌の愛撫…… す

ぐに八平は自分が何をしているのかわからなくなって来た。

 は……ぁ……は……ぁ……

 胸を擦りよせ、腰を擦り付け、目の前の乳にほお擦りする。 たったそれだけで、えもいわれぬ快感が巻き起こり、天にも昇る心地になる。

 たぷ……たぷ……たぷたぷたぷたぷたぷたぷたぷ……

 辺りの乳が緩やかに、やがて細かく波打ち始めた。 『ずぶり』の快楽に酔っていた八平、その体が揺すぶられると、奇妙な感じが体の中に

満ち始めた。

 「……はぁ…………体がやわーくなって……溶けてくみてぇだ……」

 強面の八平の表情が緩み、至福の笑みが張りついていく。 やがて蕩けるような感覚が体の中に満ちて来ると、八平の心は考える事を放棄

し、『ずぶり』の乳に全てをゆだねてしまう。

 ああ……ぁぁぁぁぁぁ……

 とろーっとした熱くて甘い快感が体の中に満ち、体が引き締まる様な絶頂感に全身が硬直する。

 ごぽっ……ごぼっごぼっごぼっごほごほっごぼっ……

 大きな男根の様に、八平は口から白くにごった液体……溶けた自分自身を吐き出した。 その液体は『ずぶり』の乳房にみるみる吸い込まれ

ていく。

 やがて乳房の奥から、八平と『ずぶり』が睦み合う声が、密やかに聞こえてくるのであった。

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