ずぶり

其の十 帰還と不安


 (ええ心地だ……けんど……)

 一平は、乳の谷間に埋めていた顔を出し、女の顔を見上げた。

 「?」 女は慈愛に満ちた微笑が応えてくれる。 しかし、一平の心に影が差した……『恥ずかしい』と。

 くすり…… 一平の心の揺れを見透かしたのか、女は微かに笑い、一平を抱き直す。

 「わっぱ!?」

 一平の顔に、林檎ほどもある乳首がさらされ、緩やかにゆれる。

 「なにするだ?……あ……」

 乳首から、白い霞のように乳が流れ出し、白い風が、一平の顔を優しくねぶっていく。

 「おい……」 乳の香りが鼻腔をみたし、彼はそれを深々と吸い込んでしまう。

 …… 

 その香りは、体の奥深くで白く優しい疼きとなり、胸の鼓動にのって体の隅々まで染み渡る。 

 (……ああ……ええ匂いだ……)

 深い陶酔感に酔う一平、その頭の中に乳色の霞がかかって行き、恥も、恐れも、次第に感じなくなっていく。


 さらり……

 一平の顔を乳首が撫でた。

 一平は乳首に顔を摺り寄せ、その薄紅色の母性の証の感触を楽しむ。

 頭を乳首に預け、頬や耳、うなじの辺りまで、敏感なところを乳首に擦り付けると、微かにざらつく感触で背筋がぞくぞくするほど心地よい。

 「ふひゃあ……ひゃぁぁ……」

 夢中で乳首に愛撫される一平。 その動きに乳首が次第に固く、しこってきた。

 ちゅ……ひくひくひく……

 乳首が細かく震えると、生暖かい乳を吐き出し、一平の体をとろとろと濡らした。

 「ひへ……ちゅうちゅうちゅう……」

 一平は、顔を白く濡らしながら乳首にむしゃぶりつき、とろみのある乳をごくりごくりと飲み干す。

 「ふへ……あへ……」

 乳は、香りのときのように、体の中でねっとりとした疼きに代わり、一平の体の隅々まで行き渡る。

 「ふひ……ふひ……」

 頭の中がぼーっとして、とても幸せな気持ちになった一平は、手足から力が抜け、背中から倒れそうになった。 すると、女が背中に手を回し

一平を抱き寄せた。

 ほーお……ほーお……

 不思議な声で女が歌うのを聞きながら、一平は女の乳首にしゃぶりつき、その乳を音を立ててすう。

 (……)

 もう頭の中に言葉が生まれることもない。 一平は赤子のように女に抱かれ、乳を吸わされながら、次第に全てを忘れていく。


 二平は、とすんと床に横たえられた。

 女の乳の霞を吸ったとたん、体に力が入らなくなったのだ。

 「なに……するだ……」

 その声に微かな恐れの響きがある。 女は優しく微笑むと、たっぷりとした乳を見せつけて二平の足に擦り寄ってきた。

 「ああぁ……」

 手を回しても抱え切れそうもない大きな女の乳房。 それが二平の足にのしかかり、ゆっくりとせりあがってくる。

 ぬるる……ぬるる……

 ぬらりとした乳で濡れた乳房は、もちよりもなお柔らかく、二平の足を包み込んでいく。

 乳房に隠れた乳首が、蛭のように足に吸い付き、ちゅうちゅうと吸い上げているような感触がある。

 二平は、のしかかって来る大女と、足の上を競りあがってくる乳房を交互に見やる。 そしてその時がきた。

 「くっ……」

 競りかえった股間の物が乳房の下に消えた。

 熱い滑りの感触に続き、うねうねした動きに呑み込まれる感じが男根を襲う。

 「ああっ……あああっ……」

 乳首が其れを呑み込んで、吸っているのだろうか。 見えない分、頭の中で想像が渦を巻く。 やがて熱い迸りが、うねる筒に吸い出されてい

く快感が腰を支配した。

 「あっ……あっ……」

 激しい興奮がさると、脱力感と喪失感がやってくる、いつもなら。 しかし。 

 「ひっ……?」

 熱いどろりとした物が、力の抜けた彼自身に触っている。 そして、快感が逆流してきた。

 「い……だ……あ……」

 男根の中を熱い蜜が通り抜けた。 熱く甘い蜜が体の中に染み込み、そして体が溶けていくような快感。

 はぁ……はぁ…… 女のように、熱い喘ぎを漏らすニ平。

 彼の上で、大女はが前進を再開した。 ずるりずるりと、軟体動物のように乳が二平の体を這い上がり、その乳の下でニ平の体は、熱い快楽

に蕩けていく。

 
 あふ……もっと……

 四平は乳の狭間で喘いだ。

 乳の霞を吸い込んでしまうと、全てのことが事は気にならなくなり、ただひたすらに女の愛撫に酔っていた。

 乳で濡れた体が、二つの白い果実で張形のごとくに弄ばれる。

 (おんや……) 

 快楽と乳でふやけた頭に微かな疑問が生じた。 確かに女達は自分達より大きかったが、体が挟まるほど大きな乳だったろうか。

 四平は乳の間から頭だけを出して、他の者達に目をやった。 抱かれている一平、組み敷かれている二平……

 「おお……やっぱり……」

 女達のが大きくなっている、それとも自分達が縮んだのか、いまや女達の背丈は自分達の四倍はある。

 「……」

 ぼんやりと、視線を自分の女に向けた。 俺達はどうなるのかと。

 女は答えない。 しかし、辺りに微かな声が響いた。


 ふふふ……怖がらなくてよろしゅうございます……

 小さくなって……私達の中に……女の腹の中に……

 戻ってくるだけでございますとも……


 ああ……

 おおぅ……


 山賊達が声を上げた、期待と喜びの声を。 


 うっく……

 六平が呻いた。 大女たちの、『ずぶり』達の背丈はは見上げるほどになり、その秘所は彼の背丈とそう変らない。 そこに彼の体が抱きすく

められている。

 はぁ……はぁ……

 手で触っただけで、いってしまいそうになる『ずぶり』の秘所。 その滑る秘肉に抱かれ、舐められているのだ。 その場で溶けて、白い迸りに

なってしまいそうだ。

 ああ……ぬし様……しばし耐えて下さい……

 さあ……いらして……私の中に……

 あぁ……あぁ……

 喘ぎながら、六平は足からずぶりの中に入っていく。

 無数の襞が彼を受けとめ、優しく、そして淫らに彼を誘う。

 うぁう……うぁう……

 獣じみたうめき声を上げ、六平は一個の男根と化し、『ずぶり』の奥に、その秘密の部屋に招かれて行った。

 うぉう……

 あふぁ……

 時をおかずして、他の山賊達も次々と『ずぶり』に身を投じていく。

 やがて彼らは、無上の快楽のうちに白く熱い精と化し、『ずぶり』と交わってこの世から消えていくのだろう。


 しゃらん……しゃらん……


 「頭、どこまで行くんですかねぇ」

 「俺が知るか」

 その頃、頭たち一行は金物……おそらく錫杖の音に導かれ……いや迷っていた。

 「大体、洞窟の中なんて音が響いてどっちへ行くかなんて……おお、分かれ道だ」

 行く手で道が三つに分かれている。

 「どっちだ…左か!?」 左の道に頭を突っ込み耳を澄ます。


 じゃらじゃらじゃらじゃらじゃら……


 「なんか違うって言ってる様な気がしませんか?」

 「右か?」 右の道に一歩入って耳を澄ます。


 じゃりこん!じゃりこん!じゃっ!じゃっ!じゃっ!……


 「違うだろうが!この馬鹿者!」

 「なんだと!」

 「と聞こえたんですが……」

 「残りは真ん中か……」

 むっつりした顔で、頭が真ん中の道に足を踏み入れた。


 から〜ん♪から〜ん♪大当たりぃ〜♪


 「……」

 「……頭」

 「……黙れ」

 「……でも」

 「……いいから黙れ!」

 ものすごく不安になりながら、先へ進む山賊達。 やがてその不安は現実となるのであった。

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