ずぶり
其の七 愉悦と拒絶
「や……やめれ……」
七平は、弱々しく足を振った。 その勢いでは、とても『ずぶり』を引き剥がせそうもない。
しかし、『ずぶり』はその動きだけで七平の足から離れてしまった。
ああ……悲しや……
『ずぶり』は、七平の足先でしくしくと泣き崩れ、その様に七平の胸がずきりと痛む。
(いけねぇ……こいつは……わなだぁ……わな……)
『ずぶり』が涙に濡れた顔を上げる。 泣き崩れた顔は、親に捨てられた幼子の様であり、妙に愛らしかった。
七平の心に罪悪感が重々しくのしかかる。
なぜに……私を拒みなさる……
その声は、七平の胸に突き刺さり、この女が、恐ろしい物の怪である事を一瞬忘れた。
「拒むなんて……おらはただ……」
するり……
『ずぶり』の手が伸びてきて、再び七平の足に触れ、愛しげに七平の足をさする。
さわさわ、さわさわ……
『ずぶり』の白く繊細な手が彼の足を、丹念に撫でさする。
「お、おめぇ……」
七平は何か言いかけたが、『ずぶり』の顔を見たとたん何も言えなくなる。
嬉しそうであった。 『ずぶり』は、ただ七平に触れている事が嬉しい、そう表情で訴えていた。 そして、七平もまた……
さわさわ……
『ずぶり』の指は七平を丁寧にさすり、舌先でつぅーと舐めあげていく。
舌先が描く唾液の跡が、銀の、そして淫らな文様を七平の足に描きあげながら、次第に這い登って来る。
「や……」
七平と『ずぶり』の目があった。 濡れた瞳に映るのは七平のみ。 そして七平の目に映るのは……彼を愛する『ずぶり』のみ。
(なして……なしておらはこの女を拒むだ……)
ふっと意識がかすみ、心の奥で何かが『ずぶり』を求める。
(ああ……なんていじらしい……この女と……)
ああ……貴方さまと……
さわさわ……ふにふに……
白い指は、七平の男の証をそっとつつき、こね回し始めた。 とても大事なものを扱うように。
「あ……あぅ……」
中身がゆっくりと揉み解され行く感触は、何物にも変えがたい心地よさだった。
そして、七平の中に『ずぶり』に対する愛しさが湧き上がってくる。
「ああ……おめぇだけにさせたくねぇだ……なぁ……おらにも……」
ああ……嬉しゅうございます……
七平は仰向けになり、その顔の上に『ずぶり』が覆いかぶさって来た、てらてら光る愛液を垂らす秘所が。
(ふあぁぁ……)
七平を求めて身をよじる秘所を目にしたとたん、七平は吸い込まれるようにそこにむしゃぶりついた。
あぁぁぁぁ……
『ずぶり』の秘所が、甘いうめき声を上げた。
七平は、陰唇を軽く噛み、舌を奥深くに差し込む。 とろとろに溶けた女の肉が舌に絡みつき、奥に招く。
ぶちゅぅ……じゅばじゅはじゅば……
大きく開いた秘所が、七平の顔を包み込み、肉襞がぬらぬらと彼の顔をさすり上げる。
その一方で、『ずぶり』の口が彼の男根を咥え込み、伸びた舌が彼の陰嚢に巻きついて、ずりずりと絞り上げていた。
(極楽だぁ……)
『ずぶり』の舌が這い回ると、陰脳の中身がとろーり、とろりと柔らかくなっていくのがわかる。
そして『ずぶり』の秘所に顔を突っ込んでいると、魂の奥深くがほんのりと暖かく、柔らかくなっていくようだ。
愛しいかた……
『ずぶり』のささやきは、彼の魂に染み込み、不思議な幸福感が魂を芯から蕩けさせていく。
「いとしいだ……おめえと交わりてぇ……おめえと交わりてぇ……ひあ……」
体の芯がじんわりとほぐれ、それがゆっくり蕩ける快感に置き換わっていく。
気を引き締めれば、それの感覚から逃れることも可能だったかもしれない。
しかし、七平はその快楽に身を委ねる事を選んだ。
にゅる……にゅく……にゅむ……
体の節々で、不自然な快感が生まれ、気持ちよさに頭がぼうっとしてくる。
にちゃ……にちゃ……にちゃ……
七平の目の前で、柔らかい『ずぶり』の闇が、その奥が彼を誘っている。
身を乗り出すせぱ、肉の闇は彼を受け止め、絡みつき、彼を呑み込んで行く。
ずぶり……ずぶり……
顔から頭、そして肩が、優しい温もりと滑りに包まれ、ぬらぬらした愛撫に体が柔らかくほぐれていく。
「奥へ……あの奥へ……」
いらして……愛しい方……とろとろに溶けて……私と交わりましょう……
その囁きが七平に止めをさす。
「ひっ!……」
一声うめき、七平はかって感じたことのない絶頂感に包まれた。
ひっく……ひっく……ひっく……ひっく……
どこからどう放っているのか判らないまま、七平は自分をとろとろに溶けた白い粘液に変え、『ずぶり』の奥に注ぎ込む。
「気持ち……ひっく……ええ……たまんねぇ……」
大きく口を開けた『ずぶり』の秘所に、頭から呑み込まれながら、七平はゆっくりと溶けていった。
「畜生!くるなぁ!」
山賊たちの多くは、あちこちで七平や九太と同様に『ずぶり』に捕まっていた。
しかし、少なくない人数が『ずぶり』から逃れることに成功していた。
「頭ぁ!?」
白襦袢の女、いや、『ずぶり』に捕まっていた頭もなんとか『ずぶり』を振りほどいていた。
「よるなぁ!」
「何故に拒むのです?」 白襦袢を着ていた『ぶずり』が聞く。
「お、お前たちのえさになぞなんねぇ!」 頭が吼えた。
その間に、『ずぶり』から逃れた手下たちが、頭の周りに集まってきた。
「くるなぁ!」「よるな!」
『ずぶり』たちは、媚を売り、乳をまさぐって山賊たちを誘う。 しかし、なぜか直接触ろうとしない。
「か、頭。 こいつらひょっとして、『来るな』と言われると近寄れねえんじゃ?」
「何ぃ? そんなばかな!?」
頭は目を剥いたが、言われてみると『ずぶり』たちは、残った山賊たちから数歩の所に立って、近寄ろうとしない
「そ、そうなのか?」
【<<】【>>】