ずぶり

其の五 狂饗


 大広間では、まだ宴が続いていた。

 浮かれ騒ぐ山賊達。 が、頭をはじめ何人かは、杯を傾けつつも、鋭い目で辺りをうかがっていた。

 また一人、誰かが外に出て行く。

 「頭……」 副頭目の一人、一太が目線で其れを示す。

 「うむ」 頭は頷き、女中達に指図していた白い襦袢の女を呼ぶ。

 「おい、手下が何人か姿が見えぬが?」

 「まぁ……逞しい殿方ばかりですからきっと……如何です、お頭も」

 女は口元を袖で隠し、媚を含んだ口調で応えた。

 「ほう……そうかい」 頭は物騒な気配を隠そうともせず、女をぐいと引き寄せた。 「あまりなめないでもらいてぇ」

 白い喉元に、冷たい刃が押し当てられる。

 宴の場が凍りついた。


 「か、頭?」 事態がのみ込めない手下が、頭を止めようとした。

 「すっこんでろ! おい?」 手下を一括し、頭は女に凄んで見せた。

 「まぁ、このおもてなしはお気に召しませんでしたか?」 女は動じる様子も見せない。

 「では、あちらをご覧くださいまし……」 女は頭に羽交い絞めにされたまま、広間の一角を指し示した。

 つられてそちらを見る山賊一同。 

 そちらには、壁一面に布の幕が垂れ下がり、壁を覆い隠していた。

 皆がそちらを見ると、ちょうど中央から布がわれ、左右に開いてゆく。

 「なんでぇ……これは?」 あっけに取られる一同。

 幕の向こうには舞台が作られており、山賊達がいる所を客席に見立てると、大広間は芝居小屋のような作りになっていた。


 チャン……タン……タタン……

 拍子木の音がし、その調子に合わせて一人の女中が舞台の真ん中に進み出た。

 びょう……びょう……びょうびょうびょうびょう……

 囃子にあわせ、女中は扇子を手にし、舞を始めた。


 「なんのつもりだ」

 「ほんの座興でございますよ」


 おおっ……

 山賊たちがざわめいた。 優雅に舞っていた女中、その着物がするりと脱げ落ちたのだ。

 はっ!……ひょうひょうひょうひょう……

 囃子の調子が変わる。

 女中は次第に艶かしさを増しながら、舞い続ける。

 一枚、また一枚と着ているものが脱げ落ちて行く。

 白くうねる女体が少しずつ露になり、男達の視線を誘う。

 山賊たちは、声もなく女の舞に見いっている。


 「……?」

 頭は異変に気がついた。 静か過ぎる。

 声を出そうとして、体が動かないのに気がついた。

 (な……)

 「お静かに」 女が艶っぽく笑った。 


 (ああ……綺麗な女子だ……おら好みの) 舞台を見ていた九太がそう思ったとき、女中が彼を見た。 濡れた瞳に、九太が映る。

 女中はゆっくりと舞台に座り、足を広げ、そして手を這わす。

 ざわり…… 山賊たちがざわめいた。

 あ……ぁぁ……

 女中のねっとりとした声が、辺りに流れて行き、そして九太の耳朶に纏わりつく。

 (いらっしゃいまし……ここに……)

 ふらりと九太は立ち上がり、ふらふらと舞台に上がる。

 ぁぁ……ぁぁ……

 己を慰め続ける女中の秘所に、誘われるままに九太の手が重なる。

 にちゃ…… 粘りつく秘所が彼の指を咥え、くいくいと誘う。

 「ああ……」

 九太は女の秘所をゆっくりとまさぐり出した。

 とろとろと、透明な蜜があふれ出て、彼の手を濡らす。

 「暖けぇ……」

 陶然と呟く九太の手に、女中の白い指が絡みつき、己が胸に誘う。

 ふ……わぁぁ……

 しっとりと柔らかい乳房が彼の手に吸い付き、乳首が手のひらをくすぐる。

 「ふぅぅ……」

 女の胸を掴んだまま、呆然としている九太。 その腰に女が秘所を擦り付けてきた。

 所在投げに固く突っ立っていた男根に、柔らかく蠢く陰唇が纏いつく。

 「うっ……」 

 股間を襲う、痺れにも似たあの感触……しかし、九太は動かない。 いや、動けない。 横たわる見事な女体、その美しい顔、全てが彼の理

想の形となり、目を離すことも、動くこともできないのだ。

 さぁ……いらっしゃいまし……

 女中が腰をうねらせた。

 ずぶり……

 九太の固いものが、蠢く無数の襞の谷間に呑み込まれた。

 ひ……ひっ……

 妖しい蠢き、その動きが彼のものを通して体の中に伝わってくる。 肉襞が彼の中に入って、体の芯に絡み付いて優しく撫で回しているかの

ようだ。

 「いい……蕩けそうだ……」

 「蕩けますとも……身も心も……白い精に変えて差し上げますとも……」 女中の声が九太の頭の中に響く。 「さぁ……ゆっくりと動いてくださ

いまし」

 「ああ……ああ……」

 九太はがくがくと頷き、ゆっくりと腰を動かす。 

 一突きするごとに、体の中がとろとろになって行くのが判る。 自分があふれて出て言ってしまいそうだ。

 「駄目ですよ……他に行っては。 さぁ……私の中に……」

 九太はがくんと頷き、女中の中に自分自身を放つ。

 どろ……どろどろどろ……

 ねっとりとした快感に溶けながら、九太は女中の中に流れ込み、そして溶け合う。

 あ……

 ぁぁ……愛しい方……もう離しません……

 溶け合った所から、女中の囁きと深い喜びが伝わってくる。

 九太は体の内側から溶け、次第に女中の中に吸い込まれていく。

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