ずぶり

其の四 骨抜き


ぬっちゃ、ぬっちゃ、ぬっちゃ……

「あぅ……あぁ……あぁぁ……」

山賊と女中の腰周りは微妙に溶け、交じり合って、糸を引く。

溶け合った辺りから、えもいわれぬ快感が、じわり……じわり……と染み込み、さざなみのように体を満たして行く。

「ええ気もちだぁ……」 空ろなまなざしで呟く山賊。

「ほんに……よい心地ですわ……」 うっとりと応じる女中。

二人はその形を失いながら、肉欲の塊となって蠢き続けた。


「四平よぉ……どこだぁ……」

一人の山賊が仲間を探してうろついていた。

「いかがされました?」 

「ん?……おう、女中さんかい。 四平つぁんがいねえんずら」

「はて……あちらでお楽しみの方でしょうか」

「お楽しみ……」 山賊の顔が険しくなる。 「仕方ねえやつずら。 こんな得体の知れねえ……あわわ」

「はい?」 『得体の知れない』女中は微笑して小首をかしげた。

彼女は、山賊を四平の所に案内する為、先に立って歩き出した。

「貴方様のお名前は?」

「おう、おらぁ五平だ。 他に一平、二平、三平、……九平、一太、二太……と続くがな」

「そ、それはまた……わかりやすいお名前で」 『得体の知れない』女中がさすがに面食らう。

「頭が適当に付けたんでな」


二人はとある部屋にやってきた。 襖の向こうから、男と女の睦声が、そして粘る音が聞こえてくる。

「あんの野郎……盛大にやってやがる」

五平は、腹立ち半分、興味半分で襖をからりと開けた。

「!」 棒立ちになる五平。 そこには、白と茶褐色の肉の塊が蠢いていた。

ああ……ぁぁぁ……

そこかしこに、人のかけらが浮き出た肉の塊から、四平と女中の睦声が生み出されている。

腰を抜かして畳の上にへたり込む五平の前で、襖が静かに閉じられた。

「あ、ありゃぁいったい……お、おめえ何を?」

五平は、襖を閉めた女中が、するりと着物を脱ぎ捨てたのを見て驚く。

「さぁ……私と交わりましょう」

「な……お、おめぇら……人でないだか! 化け物かや!?」

「私達は『ずぶり』でございます」

女中そそう言いながら、そゆっくりと自分の胸を揉む。

あ……あぁぁぁ……

甘い声を上げる『ずぶり』。 その声が、五平の耳に粘りついて離れない。

「な…なんだ?」

いざって逃げようとするが、慌てているためか足がうまく動かない。

はぁぁ……ああ……いい……ぁぁぁぁ……

『ずぶり』の声を聞いていると、腰のものが硬くそそり立ち、熱くうずいてくる。 そして、『ずぶり』自身は……

ひくっ……ひくくくっ……

「げ……胸が……」

びくびくと震えながら、その胸が膨れ上がっていき、その乳首が竹の子のごとく伸び、蛇のごとく悶える。

「す……げぇ……」

五平は息を呑んだ、彼の心の奥深くにある欲望を読み取って『ずぶり』は形を変えるのだ。 彼を己のものにするために……

ひくひくひく……びゅびゅびゅ!

膨れ上がった乳首から、ぬるぬるした液体が噴出し、五平の体を濡らした。 生暖かいその液体から、甘い香りが立ち上る。

「なんだ……こりゃ……」 のろのろした動作で、五平は体を拭う。 強烈な香りに、意識がぼやけていくようだ。

ず……ぶ……り……

「ひっ!?」

白い塊が、彼の足の上にゆっくりとのしかかって来た。 乳房を膨れ上がらせた『ずぶり』が、彼の上にのしかかって来たのだ。

「うひゃぁ!?」

乳房が大きくなりすぎて、『ずぶり』本体が見えない。

白い塊は、ゆっくりと彼を覆い、ふにふにと動いて谷間に彼を飲み込んでいく。

ひゃめれ!?……うひゃぁ!?……ひにゃぁぁ……

柔らかく蠢く乳の谷間で、かれは粘液まみれの体を揉み解され、着物を剥ぎ取られていった……褌にいたるまで。


ずばっ……

ようようのことで、五平の頭が乳の谷間から突き出す。

はひぃ……はひぃ……はひぃ…… 

たっぷり揉み解され、体に力が入らない。

「楽しんでいただけましたか?」

目の前に『ずぶり』の顔。 かすかに赤らんでいる。

「た、楽しむぅ?……さてはおめぇは、ああやっておら達を……むぐぅ!?」

五平の口を『ずぶり』の口がふさぐ。

形のよい唇が、柔らかく五平の唇に吸い付き、ぬめぬめした舌が五平と絡みあう。

(や……柔らかい……)

操られるように絡み合う舌。 体の力が抜けて行き、『ずぶり』に対する恐怖感がみるみる薄れ、あろうことか好意すら生まれていく。 そして……

とろーり……

体のどこがが蕩けていく様な甘い快感。 それを感じた瞬間。 五平の中に『ずぶり』が入ってきた。

(貴方が欲しい……貴方と交わりたい……貴方と溶け合いたい……体も魂も……とろとろに溶かして……交じり合ってしまいたい……)

押し寄せてくる怒涛のごとき快楽の波。

(あ……あぁぁぁぁ……)

五平の体は知ってしまった、『ずぶり』と溶け合う快感を。 五平は抵抗をやめた。

「あは……いい……いい……おら……おらも交わりてぇ……おめぇと一つに……」

ぬめぬめと体を撫で回す乳の谷間で、体を震わせて『ずぶり』に酔いしれる五平。

彼は、うねる乳の中で腰をゆすり、『ずぶり』の秘所を肉棒で探し当て、自分からそこに入っていく。

「ああ……固い……熱い……」

「なんて……やわらけぇ……ああ……溶けていく……体の中から蕩けていくだぁ……」

うっとりと呟く五平。 かれはもう『ずぶり』のものだった。

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