星から来たオッパイ

Part H (5)


 「エミさん、寝技勝負に入ったみたいですけど、上の『パチ子』の方が有利なんですよね?」

 麻美がスクリーンをチラ見しながら尋ねた。

 「柔道の試合じゃないんだから、抑え込み一本にはならないわよ。 まずいかも……身長差がありすぎる」

 『パチ子』が25m、『マザー』が30mぐらいなので、見た感じではライト級とヘビー級ぐらいの対格差がある。

 「もうちょっと『パチ子』のパワー上げられそう?」

 エミの問に、麻美が首を横に振り、ブレーカーを押さえているミスティを目で示す。 ミスティだけでなく、黒肌のボンバー、金髪のブロンディの三人が、煙を

吹き始めたブレーカをかわるがわる抑えている。

 「あまり持ちそうもないわね」


 『マザー』の上の『パチ子』の体が揺らめいた。

 ”ДБГ(こいつ虚像か)?……”

 『マザー』は、自分の上に乗っている『パチ子』の足首をつかみ、ぐっと引いた。 『パチ子』体が『マザー』の双丘の上で弾む。 「ふみっ!?」

 『マザー』を責めようと、彼女の神秘に顔を埋めていた『パチ子』は『マザー』の頭の方に引かれ、顔がおへその穴にはまってしまった。

 「ふんぐぅぅぅ!」

 『パチ子』は肘を使って『マザー』の腹の上で匍匐前進を試みたが、足をガッチリつかまれている。

 「ぬぬぬぬ……うにゃ!」

 突如『パチ子』の首が伸び、顔が『マザー』の足の間に潜り込む。

 ”!?”

 
 「ややっ、ろくろっ首だぁ!」

 ミスティが手を打ってはやし立てる。

 「呪いだと思ってたけど妖怪もまじってるのかしらね、『パチ子』は」

 エミはマイクを取り上げて叫ぶ。

 ”『パチ子』、時間がない! 電源が持たないわ!”

 「エミさん、あの巨乳宇宙巨人にも聞こえるわ」

 「日本語が判らない事を祈って」

 
 ”Д(中に)!?……”

 『マザー』の秘所に吸い付いた『パチ子』は、今度は舌を伸ばして中を舐め始めた。 そのまま、奥へ奥へと舌を伸ばしていく。

 ”!”

 『マザー』も負けじと『パチ子』の足を開かせ、彼女の秘所に口づけ、やや小ぶりな秘所を、下で舐めあげて中を責めようとした。て

 ”!?”

 しかし分厚い舌が秘所の入り口につかえ、奥に入れられない。 体格差が逆に不利に働いている。

 
 「おおっ、良く判らないが『パチ子』が優勢だぁ!」

 「いけぇぇぇぇ」

 やたら盛り上がる、エミ、麻美、ミスティに対し、男性陣はやけに静かだ。 エミがそれに気がついて、室内を見回すと、太鼓腹をはじめとした学生一同は、

スマホを構えて動画撮影の真っ最中だった。

 「馬鹿者ぉぉぉ! 機器制御に専念しろぉ!」

 エミの怒声に、学生一同があたふたとコンソールや制御盤に戻る。 そのなかで、ランデルハウス教授だけが険しい表情でスクリーンを見つめていた。

 「教授?」 エミが声をかけた。

 「見たまえ。 『アップルシード』に動きがある」

 教授がそう言った時、スクリーンのに映る『アップルシード』から、『パチ子』めがけて黒いものが放たれた。

 
 ギュルン!

 『パチ子』の長い首に、黒い触手が絡みついた。 同時に、『パチ子』の体が大きく揺らめき、走査線の乱れのようなモノが走った。

 「ぎっ!?」

 『パチ子』が悲鳴を上げる。

 
 「『パチ子』!?」

 「あれは『アップルシード』の表面を覆っていた砂鉄だ。 磁力線を細かく制御し、砂鉄を触手状にしているのだろう」

 「教授、『パチ子』が苦しんでます」

 「ブラウン管の画像は磁気に弱い。 『パチ子』の体がもたん」

 
 「ぎぎ……くぅぅぅ!!」

 『パチ子』は触手を振りほどき、頭突きする勢いで『マザー』の秘所に突っ込んだ。

 ”!!!?”

 今度は『マザー』の体が跳ね、下腹が波打つ。 形勢不利と見た『パチ子』が、舌を『マザー』の奥底に突き入れ、全力でかき回しているらしい。

 ”……!!!!”

 『マザー』が弓なりにのけ反り、秘所から透明な液体が溢れた。 二人はそのまま硬直したように動きを止めていたが、やがて『マザー』の体から力が

抜け、地面に横たわった。

 
 「やった……のか?」

 「あっ『パチ子』が!」


 『パチ子』の体に無数の走査線が走り、『パチ子』の姿が次第に薄れ、消えていった。 後には『マザー』だけが残った。

 ”……”

 『マザー』は寝返りを打つように体を反転させ、四つん這いで『アップルシード』の開口部に転がり込んむ。

 ズン……

 重々しい音を立てて、『アップルシード』が口を閉じる。

 
 「引き分け?」

 「む……」

 制御室に重苦しい沈黙がながれる。 その時、背後で大きな破裂音がして、火花が飛び散った。

 「うわっちちち」

 「大変だ!消火器!」

 ボンバーが抑えていたブレーカが破裂し、配線があちこちで火を噴いている。 学生一同が慌てて消火を始めた。

 
 十分後、消火剤の粉まみれになった制御室で、教授、エミ、学生たちが被害状況を確認する。

 「配線は焼失しました。 修繕しないと、バックボードの再点灯は無理です」

 「『パチ子』とビデオデッキは?」

 「ビデオデッキは無事ですが、『パチ子』は磁気のダメージを受けているかと」

 エミは沈痛な面持ちでビデオデッキに手を置きいた。

 「『アップルシード』の様子はどうなっているかね?」

 教授の問に、実験棟屋上の観測班が応答する。

 ”女巨人が中に入った後、触手も引っ込みました。 動きはない……いや、ちょっと待ってください”

 観測班の声に緊張が走り、エミと教授がスクリーンに視線をやる。

 「変わりはないようだけど……」

 「いや、表面が動いている?」

 スクリーンに映った『アップルシード』、その黒々とした表面が、じわじわと動いている。

 ”『アップルシード』から磁気が出て、少しずつですが強くなっているようです”

 「教授?」

 「戦闘で飛び散った砂鉄を回収しているようだ。 今度は触手で攻撃する気か?」

 「あるいは磁気を強くして、周りのコンピュータや電気機器を破壊する気かも」

 配線を点検していた太鼓腹が振り返った。

 「そんな! そうなったら『セイレーン』ちゃんが!」

 「判っているわ。 取りあえずビデオデッキと中の『パチ子』を退避させて」

 電気科の学生がビデオデッキの配線を外し、台車に乗せて制御室を出ていった。

 「さてどうしてものか……」

 「白旗を掲げて交渉してみるのはどうでしょう。 あるいは教授を囮にして『アップルシード』を遠ざけるのは」

 太鼓腹の意見に、何人かが賛意を示した。

 「こうなったからには、私が囮になるのもやむを得んが、エミ君はどう思う」

 エミは手を顎に当てて考えていた。

 「試してみてもよいと思います。 ただ『アップルシード』が動かない場合の対処も用意する必要があるかと」

 「プランCという訳だな。 わかった、そちらは君達で考えてくれるか。 私はキキ達と『アップルシード』と交渉を試みよう」

 教授は川上刑事と制御室を後にした。 残ったエミたちは、顔を突き合わせて相談に入る。

 「それで、プランCとは?」

 「交渉、排除が失敗した場合だから、実力行使になるわね」

 「『パチ子』なしで? 人外部隊に再招集をかけるんですか?」

 首をひねる太鼓腹に、エミは苦笑で答えた。

 「ここにいるメンバで対処するしかないわ。 貴方は、学内の設備で使えそうなものを探してもらえる?」

 太鼓腹は思い切り顔をしかめたあと、スマホで連絡を取り始めた。 エミは振り返って麻美とミスティに声をかける。

 「あなたたちも協力してくれる?」

 「えええ! 実力行使!? あ、あの何をすれば」慌てる麻美。

 「んーと……えーと……どうしよう」 何も考ていなさそうなミスティ。

 エミはため息をついた。

 「最初から『セイレーン』止めて運び出した方が良かったかしら」
  
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