星から来たオッパイ

Part G (3)


 ”ああーん”

 B-346がミシミシ音を立てた。

 「副長、深度が急降下……いえ急上昇、異常です」

 「奴の膣圧で水圧計が正常に働いていないんだ」

 副長は、床の傾斜が緩やかになって来たのに気がついた。

 「奴め、仰向けになったな」

 「副長! 今なら後進して抜け出せます」

 操舵手の言葉に副長は思案を巡らす。

 (距離を取って水雷を……しかし、外したらそれまでだ……よし)

 副長は意を決し、艦内マイクを取った。

 「モーター全開、全速前進!」

 「副長!」

 「奴の奥へ突っ込め! 離れたら、もう勝機はない」

 発令所に沈黙が下り、全員が副長の顔を見る。 そして全員が自分の持ち場に着く。

 『モーター全開』

 「全速前進」

 モータ−が唸りを上げ、Bー346は『マザー』の膣を押し広げるように前進する。

 ”あっ……あっ……ああーっ”

 ズニュゥゥゥ

 艦体が柔らかいものに擦れる音が響き渡る。

 「副長……」

 ソナー士官がヘッドホンを外し、情けない顔で振り返る。

 「……戦闘中だ! 報告! 艦外の様子!」

 副ソナー手が、生きている艦外カメラを切り替え、報告を入れる。

 「奴の……肉襞らしきものが、艦外に纏わりつき……前進を阻んでいます……」

 「ちっ……一旦停止、全力で後進かけろ!」

 「アイ、後進かけます」

 B-346のスクリューが止まり、逆回転する。 B-346の艦体が、さっきと逆方向に肉襞を擦りあげ、『マザー』が身を震わせた。

 ”ああーっ……”

 「膣……いえ水圧が下がりました」

 「今だ! 再度全速前進!」

 B-346のが再び前進を開始し、力強い振動が艦体を震わせる。

 ”ああーもっと……”

 「……副長……”もっと”と言ってますが」

 「聞こえてる! 雑音に構うな! 奥まで突っ込め」

 「アイ! 全力で突っ込みます!」

 『副長!機関部より報告、モーターの負荷がわずかに下がっています』

 機関室からの報告に、副長が首をひねる。

 「圧力が下がったのか?」

 『いえ……思うに……濡れてきたのではないかと』

 再び発令所に沈黙が下り、外の音が響いてくる。

 ズニュゥウウウ……

 ヌチャァァァァ……

 「副長……」

 「何も言うな! それより発射用意」

 「はい、いつでも!」

 「ズボンをおろすなぁぁぁ! そっちじゃない!」


 B-346の奮闘(?)を、白い人魚達が人魚の長『母上様』に伝えている。

 「母上様。 人間の『鉄鯨』が……巨人女を責めています……」

 ”巨人の女?……とんでもないのが出てきましたね……責めているというと、武器で攻撃しているのですか?”

 「いいえ……巨人女のアソコに……あの……その……」

 ”まぁ……そんなに大きいのですか……危なくなったらすぐ逃げるのですよ”

 
 「副長!前方に突起、中央に小孔が見えます! 恐らく子宮孔ではないかと!」

 「開いているのか!」

 「いえ!」

 お産を控えた産婦人科の診察室のような会話が飛び交う。

 「副長! あそこに全力で艦首を押し付ければ、いかせられるのでは」

 「いかせてどうするかぁ」

 怒鳴り返す副長に、甲板長が聞き返す。

 「ではどうするつもりです」

 「あそこに水雷を叩きこむ」

 副長の言葉に、甲板長が反対する。

 「洞窟にはまり込んでいるような状態で、目の前の目標に水雷を使ったら、本艦も無事では、いえ、確実に破壊されます」

 「判っている。 だが、奴を確実に仕留めるにはこれしかない」

 副長は淡々と言葉を続ける。

 「シュノーケルも潜舵も失った状態では、逃げることはできない。 やつと刺し違える」

 発令所にいた乗員が蒼白になった。 が、すぐに事態を呑み込む。

 「……了解しました」

 「すまんな。 さぁ、地球の船乗りのきつーい一発を食らわせてやるぞ!」

 『おー!!』

 「モータ全開。 艦首を子宮孔に押し込め! 水雷発射管1,3、4、6番開け!」

 ゴボリ……

 B-346の艦首に四角い穴が4つ開いた。 その状態で、B-346は残る力を振り絞って艦首を『マザ−』の奥に突き当てた。

 ”んぁー!!”

 「副長!奴は感じているようです!」

 「水雷発射!」

 B-346から4発の水雷が射出され、子宮孔に突き当たり……爆発することなくズルズルと奥へ入っていく。 爆発を予期して身が舞えていた乗員たちは

虚を突かれた、顔を合わせた。

 「爆発しない?」

 「しまった。 水雷の信管は対船舶用だ。 鉄の船体の磁気か、船体に当たった衝撃で爆発する」

 「そりゃあまあ、女の膣用の信管なんてありませんが……」

 そんなものがある訳がない。

 「水雷というより、精子を発射したみたいですね」

 暢気な会話をしている間に、水雷は『マザー』の子宮内に突入し、奥底に突き当たった。

 ”ああーっ……いいーっ……”

 「喜んでますね……」

 「うーむ……おおっ!?」

 B-346の艦体が震え、かなりの勢いで後退し始めた。

 「機関部! 後進は命じていないぞ!?」

 『モーターは全速前進中です』

 「副長、膣圧が上がっています! 奴の膣が我々を排除しようとしているんです!」

 ソナー士官が報告するのと、B-346が『マザー』の体外に排出されるのが同時だった。 海中に放り出されたB-346は、安定を失って大きく揺れる。

 「浮上しろ!」

 副長が命じたとき、艦の外から声が響いてきた。

 ”坊やたち、なかなかよかったわよ……その頑張りに免じて、今回は見逃してあげましょう。 また、遊びましょうね……”

 「今のは……さっきの奴か?」

 「多分……どうやら助かったようですね……」

 かくして、潜水艦B-346は乗員に多数の犠牲をだし、艦が航行不能になるほどの損傷を被るも、宇宙人との戦闘に生き残ることが出来た。

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