星から来たオッパイ

Part F (3)


 −−某国 某所−−

 「喰えない奴だ、あの『教授』は」

 マジステール大学 日本校との会議で『責任者』を務めた男は、そう言って机の電話を取り上げた。

 ”交換です”

 「海軍の情報局に繋いでくれ」

 ”少々お待ちください”

 海軍情報局に繋がると、『責任者』は手元のメモを見ながら指示をだした。

 「私だ。 沿岸警備に出ている潜水艦に指令を出して欲しい。 『不明物体』に遭遇した場合、直ちに報告するように。 それから……『可能ならば拿捕

せよ』と伝えてくれ」

 電話の相手がたっぷり10秒は沈黙した。

 ”それは情報局の権限を越えます。 海軍軍令部から指示を出してもらわないと”

 「軍令部からは、おって命令がでる手はずになっている」

 ”ですが……命令書なしでは……”

 ためらう相手を、強引に『説得』し、『責任者』は電話を切った。

 
 −−某国 潜水艦 B-346−−−

 「艦長、長波通信が入っています。 ”浮上し、命令を受信せよ”」

 「何事だ?……潜望鏡深度に浮上。 海上確認し、通信マストあげろ」

 長波通信は海中でも受信できるが、長い電文の送受信に時間がかかる。 それで細かい指示を受ける時は、いったん浮上し短波で通信を行う。

 「コード確認。 命令は……”『不明物体』に遭遇した場合、直ちにコード10を発信し、追跡せよ。 なお、『追跡』は以後『拿捕』に切り替える予定”です」

 「『不明物体』の拿捕だぁ? なんだその『不明物体』と言うのは?」

 「詳細は来ていません」

 「問い合わせろ。 『不明物体』だけじゃ判らんとな」

 不機嫌そうな顔で艦長が通信士に指示を出していると、ソナー席の士官が振り向いた。

 「艦長。 前方の海中に正体不明の物体をキャッチしました」

 艦長の機嫌がさらに悪くなる。

 「キャッチしておいて正体不明だと? 音紋照合して相手を特定しろ」

 「推進音、機械音が聞こえません」

 「機械音がないだと? クジラじゃないのか?」

 「MAD(磁気探知機)が振り切れています」

 艦長以下、発令室(潜水艦の指揮所)の全員が驚いた。

 「なんだそれは。 空母が近くにいるのか?」

 「向こうは、こちらより深く潜行しています。 MADの反応が強すぎて、距離、大きさともに不明です」

 今度は全員が押し黙る。 得体のしれない相手に困惑しているのだ。

 「探針波、打ちますか?」 潜望鏡を覗いている副長が聞いた。

 「こっちの存在を教える気か? 通信士、”『正体不明』の水中航行物体を探知した、これより追尾する”、現在位置と合わせ、至急打電しろ」

 「了解、打電します」 通信士が復唱する。

 「副長。 『奴』に築かれない様に追尾する。 コースを検討しろ」

 「は。 奴の深度の10m下に変温域があります。 そこまで潜って追尾すれは、こちらは探知されないかと」

 「まかせる」

 10分後、潜水艦B-346は潜望鏡を下ろし、『正体不明』の水中航行物の追尾を始めた。

 
 −−北極海 謎の『カプセル』−−

 拉致された5人の子供のうち、4人がドローン女に作り替えられ、残る1人、ビィは『カプセル』の中央に連れて来られた。

 「夢だ……これは夢なんだ……」

 他の子供たちが妖しげな方法で変身させられるのを見せつけられ、ビィは恐怖を通り越して茫然自失の状態になっていた。

 ビィの両腕を2人のドローン女が捕まえ、その背後に変身したディとキィがいた。 彼女たちの前には、床から生えた大人の背丈ほどの白い『おっぱい』が、

息をするようにゆっくりと蠢いている。 ビィを除いた4人がその場に膝まづき、腕を引かれたビィが続いて膝まづく。

 ”見るが良い”

 部屋のどこかから、『マザー』の声がすると同時に、大きな『おっぱい』の乳首がボコりと膨れあがり、口を開けた。 中から、真っ白い乳が流れ出し、辺りに

乳の匂いが立ち込める。 続いて、『おっぱい』の中から人間の腕が出てきた。

 「中に……人がいたんだ」

 腕に続いて頭が、そして体が出てくる。 丸みを帯びた体つきから、大人の女性だと見て取れた。

 ”『クイーン』の誕生だ”

 (この人が、女王様なの?)

 ビィが考えている間に『クイーン』の全身が『おっぱい』から出てきた。 中身を失った『おっぱい』小さく縮み、ビーチボールほどの大きさになってしまう。 

『クイーン』は、床に片膝をついて身を起こし、ビィと4人のドローン女の前に立ち上がった。

 (なんだか……どこかで会ったような……)

 『クイーン』は、辺りを見回してから4人のドローン女を順に見つめ、最後にビィの顔を見つめる。

 「ビィか……」

 ビィは『クイーン』が自分の名を呼んだことに驚き、『クイーン』の顔を見返した。 そこに見知った人の面影を見出した。

 「あ、チルダ姐様!?」

 それは集落を束ねる頭目の情婦チルダだった。 もっとも顔かたちに面影が残っている程度で、男と見まごうほどに逞しかった体は女らしさを取り戻し、

胸にはマシュマロのような乳房が備わっている。

 ”『クイーン』よ”

 『マザー』の声を耳にした『クイーン』チルダは、視線を上げた。

 「はい『マザー』」

 ”お前は、他のドローンたちと異なり、ポッドの中で時間をかけて変異させた。 元の知識と記憶は残っているな”

 「はい『マザー』。 チルダとしての記憶は持っています。 ですが、私は『マザー』の忠実なしもべです」

 『クイーン』チルダは床に片膝をつき、姿の見えない『マザー』に恭順の意を示す。

 ”よろしい。 では、最初にその少年をお前の手で変異させよ”

 「ええっ!?」

 ビィは驚きの声を上げ、次にがたがた震え出した。 『クイーン』チルダは立ち上がり、震えるビィに歩み寄る。

 「あ、ああ……姐様……やめて……」

 彼女は、ビィから少し離れたところで止まり、彼の顔を見つめる。

 ”恐れているな、理由は判るか?”

 『マザー』の問に『クイーン』チルダが答える。

 「未知のモノへの恐怖、それに私自身への恐怖も思い出しているのでしょう」

 ”暴力で支配してはなりません。 恐怖を感じさせてもいけませんよ”

 「承知しました『マザー』」

 律儀に答えた『クイーン』チルダは、自分の胸を見せつける様に、ビィの前に膝まづく。 迫ってくる巨乳に、ビィがやや引いた。

 「ち、チルダ姐様なの……姐様ですか……」

 集落の大人たちは、しょっちゅうビィらに手を上げていた。 チルダも例外ではなかった。 その記憶がビィを怯えさせていた。

 「そうよ、ビィ。 私は『マザー』に作り替えていただいた。 そして、私が貴方を変えてあげる」

 「変えるって……」

 ビィはちらりと後ろを見た。 女の姿に変わったディとキィが控えている。

 「ディたちみたいに? そんなの、やだ!」

 強く否定したビィに、チルダが身を乗り出す。 ビィは身を引いて、身構えた。 ぶたれと思ったのだが、今のチルダは別人のように優しかった。

 「あらあら、いやなんだ。 仕方がない子ね」

 笑いを含んだ声で言ったチルダは、ビィの手に自分の手を重ね、そっと自分の胸に導いた。 優しくやわらかな温もりがビィの手の中に納まる。

 「どう?」

 「どうって……柔らかくて……暖かいよ」

 ビィの手が、しっとりとした乳房をゆっくりと撫でる。 しっとりとした肌とザラつく乳輪の感触、そしてぷっくりとした弾力のある乳首を愛でる。 

 「おませさん……んふ……あ」

 チルダが小さく喘ぎ、乳首の先から白い乳が迸った。 ビィの小さな手が白い乳に濡れる。

 「ん……」

 ビィは自分の手を目の前に持ってきた。 ためらいがちに、甘い匂いのする指をなめる。

 「甘いや……」

 「甘いでしょ。 私のおっぱいを飲むと、キィたちみたいに女の子になってしまうのよ」

 「えっ!?」

 思わず自分自身を確かめたビィは、ちゃんとついていることに安堵する。

 「舐めた程度じゃ変わらないわよ」

 「脅かさないでよ……チルダ姐様」

 そう言ったビィの顔が緩む。 さっきまで感じていた恐怖が、いつの間にか消え去っていた。
 
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