乳の方程式

Part31 ためらい…そして


バイオセル内部は、水耕設備や太陽灯が多数配置されている為、見通しが効かない。

物陰に身を隠し、武器になりそうな道具を拾ったりしながら進む船長達。

「船長、これで本当にマドゥーラ達に対抗できるんですか?」

「数で押すしかない。ここに3人以下ならば大丈夫だろう」


「いた…」

バイオセル1のほぼ中央に、一際目立つ褐色の『ティッツマッシュルーム』。 直径は軽く3mを超えているだろう。

その傍でマドゥーラは、機械に繋がれた太いパイプを外しているところだった。

「オーナンスキー、あれはポンプか?」船長が聞いた。

「バイオセル間を繋いでいる水の循環ポンプですが…何をしているんだ?」

「何を考えているにしろ、時間を与えんことだ、行くぞ」


船長達が一斉飛び出してマドゥーラに飛び掛る。

振り返るマドゥーラに頭からシュラフを被せる。

”わっぷ!?”

慌てるマドゥーラに皆が飛び掛る。

「おとなしくしろ!」 「防水布で胸を巻け!」「急げ!コードで縛れ!」

不意を点けたせいだろうか。 船長達はマドゥーラはをシュラフで包み込み、その上からぐるぐる巻きに縛り上げる事に成功した。

そして医務長は、簀巻き同然の格好でバイオセル1の中を漂う羽目となった。


「…」船長は腕組みををしてマドゥーラを睨んでいる「さて…」

「簀巻きにした私をハッチから放り出すの?」マドゥーラが静かに言った。

気まずい沈黙があたりに流れる。 

「あー…オーナンスキー…」

「せ、船長…そりゃないぜ」

「おい、覚悟を決めたと言ったろうが」

「おりゃ自分が犠牲になる覚悟をしたと言ったんだ!簀巻きの女を宇宙に放り出すなんて…」 後は言葉が続かない。

オーナンスキーの言ったことは、その場の全員に共通する思いでもあった。 

手を下すのは躊躇われるどころではない。 力いっぱい嫌だった。

「畜生。女達が、二目と見られないゾンビになって腐臭を漂わせるか、牙をむき出した吸血鬼にでもなってりゃ…」オーナンスキーが理不

尽な不満をもらす。

「目を離せないほどの巨乳になって色気を漂わせ、乳をほり出してるんだからなぁ…」

「阿呆!混ぜっ返すな」

「おい、オーナンスキー。お前だったら遠慮なく放り出せるぞ」

「なんだとぉ!」

軽口の応酬にも今ひとつ元気がない。

(最悪だな…)盛大にため息をはく船長。


「船長」オットーが口を挟む「取り合えずマドゥーラは捕獲した、まずはバイオセル1を確保してはどうだろう」

全員が賛成し、船内に通じる前後のハッチの確保とマドゥーラが壊していたポンプ、そして『ティッツマッシュルーム』の調査を手分けして

行った。

すぐに前後のハッチは直ぐ閉鎖され、バイオセル1内にはマドゥーラしか居なかった事が確認される。

一方ポンプが外された事で、水循環パイプが口を開けてしまい、バイオセル2、3と繋がっている事が判った。

「しかし内径は30cm、長さは30mはある。人には狭すぎるし、ジャムには長すぎる。通路には使えない」とオーナンスキー。

「そうか、ガスは?」

「気圧差は無い。このパイプからはほとんど出てこない。通路代わりにしようとして、当てが外れたんだろう」

「そうか…取り合えずポンプを戻しておいてくれ」

「船長、頑丈なポンプを太いボルトで止めなきゃならん。結構大変なんだぞ」

船長はオーナンスキーのぼやきを聞き流し、オットーに『ティッツマッシュルーム』の様子を聞いた。

「チャンが中に捕まっているみたいだが…」

「何!?助け出せんのか?」

オットーが首を横に振る「無理に引きずり出すと、生命の保証が出来ん。それに当人が…もう…」

「くっ…」船長は口をかんだ。

(マドゥーラと『ティッツマッシュルーム』を乗せたままバイオセル1を切り離すか、それとも…)


「船長」マドゥーラが声を掛けてきた「こんなに早く逆襲してくるとは思わなかったわ」

船長が振り返った。

「マドゥーラ、やはりおびき寄せる為のガスだったのか?」

マドゥーラは頷く。

「時間をかければ、誰かが地球に連絡を取るかも知れない。だからガスで追い詰めた…バイオセルを急いで取り返しに来るように」

「ブリッジと居住区だけで逃げるとは考えなかったのか?」

「船長は責任感が強いは、必ず残った全員の生存を図れる手を模索するはず…」

「信頼してくれて有難うよ」どうでもよさそうな口調で船長は言った「しかし、こんなに簡単に捕まえられるなら、最初から力任せで…」

ある事に気が付き船長の言葉が途切れる。

(ポンプ!三人がかりでやっと取り付けているポンプをマドゥーラが一人で外せた!?)

マドゥーラを見る船長の顔が驚愕に歪み、それを見たマドゥーラが薄く笑う。

「さすが。気が付いたのね」

鋭い音がして、マドゥーラを縛っていたケーブルとシュラフがはじけ飛ぶ。

『なんだ!?』

全員の視線がマドゥーラに集中した。


うぁぁぁぁ!?

ポンプを設置をしていたオーナンスキーと部下達が叫び、視線が其方に戻る。

「こっちはなんだ!?」

パイプから無数の赤い触手が伸びて、オーナンスキー達に絡み付いている。

続いてパイプから飛び出す褐色の物体。

「こ、これは?宇宙イソギンチャクか?」

「違う!ミドルサイズの『ティッツマッシュルーム』だ!ジャムが中にいるぞ!」

「そうか…あの赤い触手はジャム。ルウの髪の毛と同じ原理なんだ」

慌てる彼らの前で、一人の乗組員に触手が絡みつき、ツナギの中に滑り込んでいく。

「うわっ!?うわわわ?」

股間の辺りが膨らみ、ウネウネと蠢くと同時に、犠牲者が目を見開き、動かなくなった。

「毒!?」

「そんな恐ろしいことをするものですか」滑るように戒めから抜け出しながら「大事なトモダチになる大切な体なのよ…」

犠牲者の愉悦に歪んだ表情を見れば、彼の身に何が起きているか明らかだった。

ジャムの触手が生殖器に絡みつき、体の自由を奪ったのだ、深い快感と共に。

股間が溶けてしまいそうな、ジャムの愛撫に頭が真っ白になり、喘ぐ。

すると太い触手が彼の正面にすべりこみ、ジャム少女の頭を形作る。

”ねぇ…キスして…”

「あ…ぁぁ…」

彼は思わずキスする…自分の意思で。

甘いネットリと舌が滑り込み、粘膜を犯す。

彼はそれを最愛の恋人とのキスと感じ…ジャムの虜になる。

”ダイスキ…”

”モウハナレナイ…”

”アナタハワタシタチノモノ…”

赤い触手が彼を包み込み、ツナギを引きちぎり、その隙間に白い乳液が混じる。

赤白のストライプに包まれた彼を、『ティッツマッシュルーム』の乳首が咥え込んだ。

”ぐはぅ…”

腰の辺りまでが、褐色の乳房にはまり込み、そこから上は赤い触手と白い乳液に包まれたオブジェと化す犠牲者。

だが、他の乗組員にそれを観察している余裕も、まして助け出せる状態ではなかった。

パイプから。同じような『ティッツマッシュルーム』が次々に出てくるのだ…彼らを捕まえる為に。

「ふふ…ククククク…素敵な夢を楽しんで…」

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