乳の方程式
Part29 チェック・メイト
赤い手がそっと男根を包む、可憐な小鳥を抱くように。
赤い唇が鈴口にキス。
微かな粘り気に、亀頭が小さく震える。
ツッ…ツッ…
糸を引きながら、亀頭を弄る赤い舌。 それがチャンの男根と淫らなワルツを舞い踊る。
ヌヌヌッ…ヌヌヌッ…
傍から見れば静かな愛撫。 しかし、チャンの耳の奥では、血の猛りが欲望のルンバを奏でていた。
ズブブッ…
頬をすぼめつつ、よがる男根を滑る口腔に誘うジャム。
一気に根元までを呑み込んで、上目遣いにチャンを見上げる。
「…」
チャンは目を見開いたまま、ジャムを見つめていた。
自然に開いた口からは、熱い欲望のため息だけが漏れている。
グジュ…グジュ…
ジャムの口の中は複雑にうねり、絡みつく。 二つの男の魂も、飴玉の様に粘るジャムの舌に弄ばれるのみ。
ズクリ…ズクリ…
熱く蕩けていくような快感が、次第に股間を支配していく。 いや、本当に蕩けているのかもしれない。
ふぅ…ふぅ…
静かに息を吐き、ジャムにされるがままのチャン。
突然沸き起こる喜びの時。 女の様に悶えていた男根が、一瞬男の凶暴差を取り戻す。
ドクリ…ドクリ…ドクリ…
中を押し広げるようにして、粘る塊を亀頭が吐き出していく。
うっく…うっく…うっく…
深い喜びに呼吸が乱れる。
時を忘れるほど続いた快感がじわじわとひき始めると、ジャムは静かに口を離す。
「ああ…」 ため息を漏らすチャン。
明らかにチャンの男根が一回り小さくなっていた。 しかし、心の奥でそれを喜ぶものがいて。それがチャンを支配していた。
”良かった？…”
頷くチャン。
東洋系のほっそりした顔立ちは、いっそう細くなり、切れ長の目元には赤みがさしている。
「深くて…芯から溶けていくみたい…あっ…」
背後からジャムがチャンに抱きつき、その唇を奪った。
身を任せるチャンの胸に手を這わせ、弄る。
”焦らずに…ゆっくり…感じて…”
再び頷くチャンに、ジャムが口移しで甘い液体を飲ませる。
喉を滑り落ちた甘い液体が、体に染みて行く。
「あ…蕩けそう…」
”蕩けるのよ…” 耳元で囁きながらジャムが胸を揉む。
”蕩けなさい…作り直してあげる…女の体に…”
「…あ…」
チャンは股間にジャムを感じた。 自然に足が開き、男根が嬲られる。
下腹部の奥で、滑った感覚が少しずつ育っていくのを感じながら、彼は考えることを停止した…
シュー
微かに空気の抜ける音がして、閉ざされたハッチが開く。
「うわぁぁぁ！」
ハッチを押し開けてオーナンスキーが飛び出してきた。
「無事か！」言わずもがなの事を言いながら、船長達がオーナンスキーと入れ替わるようにしてハッチの向こう側に飛び出す。
「…」
片手でハッチ付近のロールバーを握り締め、辺りを伺うが誰かがいる様子は無い。
「オーナンスキー！副長は？ディックはどうした、セバスチャンは！？」
「セバスチャンは…引きずり込まれて…後のみんなはは知らねぇ！はぐれちまって…」
誰かがかっとなって拳を振り上げたのを船長が止めた。
「よせ。一旦ブリッジに戻る」
ハッチを閉じ、二人を見張りに残して、船長達はブリッジに戻った。
「船長、船内モニターが復活したぞ」オットーが告げた「バイオセルの中も映る…」
船長はオットーの脇からモニターを覗き込む。
「『ティッツマッシュルーム』…確かにバイオセル３だ…」
「船長…これはバイオセル１だ」
「なんだと！？」船長が驚愕し、他の乗組員は慌てて手近のモニターを操作する。
「ああっ！バイオセル２にも…」
モニターには、あの白い巨大なおっぱいが映し出されている。
「なんてこった…」
一同は言葉を失った。
『意気消沈しているわね…ふふ』
船内通話のスピーカから女の声、マドゥーラの声が響いた。
「マドゥーラ！？お前達…何をしたか判っているのか！？」 オーナンスキーの怒声が響く。
『ええ…これでバイオセル３を切り離す意味が無くなったでしょう？』
「ふざけるなよ！それなら全てのバイオセルを投棄して…」
「それでは我々は地球にたどり着けん」船長が静かに言った。
オーナンスキーと数人が絶句して船長を振り返る。
「最低でも１つのバイオセルが必要だ…」続く言葉を呑み込む船長（だが裏を返せば一つ残ればいい訳だ…）
『ふふ、どれか一つ残せればと考えているのでしょう？』マドゥーラが図星を突く。『できるかしらね…うふふ』
（マドゥーラめ、何か企んでいるのか？）船長は不吉な予感に襲われた。
「…はっ！き、来た！」 オーナンスキーが急にあたふたと辺りを見まわしだした。
「騒ぐな。どうした？」
「奴らが来た！どっかにいるんだ！」
「何を言っているんだ、ハッチは閉じた。ここには来れん」
「いや間違いない！乳の匂いが…」
「匂い…」怪訝な表情の船長。 突然はっとする。
「オットー！空調モニター！」
「え？…別に何も…」
「水性溶媒と油性溶媒の透明度センサの感度をいっぱいに上げてみろ！」
宇宙船の空調に人体にとって有害なものが混ざると、致命的な事態となる。
『ニュー・ホープ』の空調には、異物を検出する為に、溶媒の中に空気を吹き込み、レーザ光の透過率で異物を検出する装置が取り付け
てある。
「ちょっと待ってくれ…」
ピー…
オットーが応じたのと短い電子音が響くのが同時だった。
「オットー？」
「…水性溶媒に微かな濁り…今出たところだ…」
「なんだか判るか？」
船長の問いかけにスピーカが応える。
『それはね…貴方たちを天国に導いてくれるものよ…』
「ど、毒ガスか！」オーナンスキーが真っ青になる。
『あら御免なさい。言い方が悪かったわ。 この子たち、『ティッツマッシュルーム』が作り出す、とても素敵な気分になれるガスよ』
「…」 ブリッジに沈黙がおりる。
『一日も立てば、とても落ち着いて、素直になれるわ。そうしたら迎えに行ってあげる、私達の天国に』
「一日…２４時間で俺達は…」
「自分から…奴らの餌食になるだと…」
ピー…
耳障りな電子音がブリッジに響き続けた。
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