乳の方程式

Part25 メドゥーサ


機関部ではチャン達が配電パネルを調べていた。

「ブレーカーが落ちてるな」

「まさか奴らが細工したのか」

「いや…船内の工作用パワーサプライに余裕が無かったようだ」

なんだという顔をするディックとオーナンスキー。

「慌てて損をしたぜ」 「まったく、これなら俺一人で充分だったな」

チャンはブレーカーを戻して振り返る。

「これでいい。船尾側と船首側、順番に作業すれば問題ないはずだ」

やれやれという感じで3人は機関部を出て、接合部に向かった。


「今度こそあいつらとお別れだな」

「ディック…よせよ」

「だって…ありゃ?」

接合部にたどり着いた3人はセバスチャンと鉢合わせした。

「おい、ここで何をしているんだ」

「トイレだ」 ボソッと呟いたセバスチャンは、チャンに背を向けてバイオセル3のハッチに向かう。

接合部と各バイオセルはL字型のモジュールで連結され、モジュールの両端は気密ハッチになっている。

その端でケビンがバイオセル3のハッチを見張っているはずだった…

「ケビン?…」先頭のセバスチャンが異変に気づいた「ハッチが開いてる!?」

「何!?」チャンがオーナンスキーを押しのけ、セバスチャンの肩越しに前を覗き込む。

「ケビン!?…」


あ…ぁぁぁぁ…

開いたハッチのを漂う白いオブジェ、それはマドゥーラとその乳に体の半ばを埋め、乳首と戯れるケビンだった。

「ケ…ビン…」

声に反応し、のろのろと顔を上げるケビン。 

焦点のずれた視線をチャンたちに向ける… 

ずるり… 赤い幕が下りたように彼の目が真っ赤に染まり、その口からケビンとは似つかわしくない可愛らしい女の子の声が漏れた。

「トモダチ…」


うわぁぁぁぁ…!! 叫んだのは誰だったろうか。 

彼らは後も見ずに逃げ出した。 訓練で身に着けた0G移動のテクニックも忘れ、宙をかき、空を蹴る。 まるで悪夢の中の様だ。

チャン、ディック、オーナンスキーがハッチを抜けて接合部にたどり着き、続いてセバスチャンがハッチから飛び出して…

ニュルリ… ひっ…! 

セバスチャンの足に何かが巻きついた。 

じたばたともがくセバスチャンの体がハッチに引き戻されて行く。

「は、離せ!」 恐ろしくてハッチを振りかえれない。 


「セキバスチャン!」「なんだあれは…」

先に飛び出したチャン達がセバスチャンの声に振り返り、それを見た。 ハッチから伸びた赤い紐、いや触手、それがセバスチャンの足に

巻きついている。

ヌ… ヌヌッ… ハッチから次々にうねり出てくる赤い赤い触手がセバスチャンを絡めてっていく。

その様は巨大なイソギンチャクの様だ。

「ひぃゃぁぁ…いゃぁぁぁ…ああああ…」

ヌメヌメと蠢く触手はセバスチャンのツナギの襟元、裾から入り込み、体に巻きつき、素肌に粘りつく。

うふふふふ… 捕まえたぁぁ… ハッチの奥から、喜びに溢れる若い女の声が響いてきた。

「ルウ…」 チャンの声がかすれ、そしてはっとする。 「いかん!セバスチャンを助けないと」

オーナンスキー、そして躊躇しながらディックがチャンに続く。 しかし…

ニュルニュル… 赤く半透明の触手は、セバスチャンの体に余すことなく巻きつき、不気味にうねっている。

チャンが引き剥がそうと手をかけると、触手はチャンの腕に巻きついてきた。

ヌメヌメと腕を這いずる触手の感触に一瞬の嫌悪感を感じ、そして…

ズキン 「うぁ!?」 

重く、濡れたような疼きが腕を貫く。 体の芯を揺さぶる…ありえない快感。

「やめろぉぉぉ!」 反射的に腕を振り、弾みで触手から逃れた。

「副長?」 チャンの様子に驚くオーナンースキー達。


ぁぁぁぁぁ…

セバスチャンはチャンが感じた恐ろしい快感に、全身を…貪られていた。

手も足も自由にならない。 体を這いずる赤い触手の感触以外何も感じられない。

そして頭に響く『ジャム』の声… 

トモダチ… ねぇトモダチになろうよ…

甘美な響きの声に逆らうには、驚異的な努力が必要だった。

しかしその努力を、彼の息子が台無しにする。

う…く…

縮み上がる男性自身が、彼の意思に反して『ジャム』に誘われるままに熱い快感に浸り、白い迸りを吐き出す。

一瞬の開放感の後に、冷たく甘い『女』が男性自身に染みこんで来た。

「うぁぁぁ?」

”騒がないで” 頭の中で涼やかな声がする。 途端に嘘の様に心が落ち着いた。

”ほら…感じてごらん”

「…」 促されるままに、意識を向ける。

彼の男根は冷たく甘い粘り気に、内と外かに揉み解され。たまらなく心地よい。

「あ…」 気が付けば、それは彼の全身をヌルヌルと揉み解している。

すっと体から力が抜け、『ジャム』の愛撫に身を任せてしまった。

『ジャム』の愛撫は体を通り抜け、魂を直に撫で摩っているかの様だ。

ぶるっとセバスチャンの体が震えた

「あ…駄目…あ…ぁぁ…ぁぁぁぁぁ…」 女の子のような情けない声を上げ、セバスチャンは全身でいった。

甘い粘体の中を漂い、そのまま終らない快楽に身をゆだねてしまった。

抵抗をやめた魂に『ジャム』が妖しく囁く。

トモダチ… もう何も考えられない… さぁおいで…

あは…あは…あははははは… 


「セバスチャン…」 低い笑い声が赤い触手の塊から聞こえてきた時、チャン達はセバスチャンが行ってしまった事を悟った。

セバスチャンを捕らえたまま、触手の塊がハッチの中に消える。 そして

くふふふふ…

楽しそうな声を上げながら、裸のマドゥーラ、リタ、ティンダが水の中を泳ぐように滑り出してきた。

「うわぁ!」「逃げろ!」

悲鳴をあげ、無様な格好で逃げ出すチャン達。 それを追う赤い瞳の女達。

彼らは『ジャム』の狩りの獲物となった。

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