乳の方程式

Part10 エマジェンシー・コール


(医務長までやられてる!?)

船長はゴーグルをマドゥーラ医務長に投げつけながら叫んだ。

「チャン!」

船長は医務長を突き飛ばし、食堂の中央に漂い出る。

その足を医務長が掴もうとして失敗した。

マハティーラの足を掴んでいたチャンが、顔を上げ医務長と船長を交互に見やる。

「船長?医務長…一体?」

「ちっ!…全員、ヒッグスを連れてブリッジ側ハッチから出ろ!医務長とマハティーラから離れるんだ!」 

チャン副長を始め、乗組員がが事態を呑み込めていないと判断し、船長はマドゥーラ達と他の乗組員を引き離す策に出た。

チャンはマハティーラを離すと、反動をつけて一気に飛んだ。

その間に他の乗員達が漂うヒッグスを捕まえ、ハッチに引っ張って行った。

「待ってよ…クク…」 ゆがんだ笑みを浮かべる医務長が、チャンに追いつく寸前でハッチが閉まった。


「…オットー。ヒッグスの具合はどうだ」

船長の声で一同は我に返った。

「…い、命に別状は…し、しかし、体が動かんようだ…医者に…」

「その医者があのざまだ…畜生!どうなってんだ」

吐き捨てる船長を皆が不安そうに見た。

「船長、医務長のあの目の色…『宇宙人』達と同じに…」

「そうだ…オットー、医務長に何が起こったんだと思う?」

オットーは神経質に目をしばたたかせた。

「…わ、判らんが…医務長は『ティッツ・マッシュルーム』を調べていたから…何かの影響を受けたのかも知れん…」

「じゃあマハティーラは?彼女はバイオセル3には入っていないし、『ティッツ・マッシュルーム』も触っていないはずだぞ」

チャンが指摘するが、オットーに答えられるはずもない。

「オットー、端末でマドゥーラの調査報告を調べろ。チャン。ランセンを呼び出して食堂の機関部側ハッチを閉じさせろ」

「…二人を隔離するんですか?」

問い返す風のチャンを船長は無言で促し、チャンは機関部を呼び出す。

「チャンより機関部。ランセン技師長、緊急連絡です」

サー…

「チャンより機関部…機関部?…機関部!」

「どうした?」

「機関部が応答しません」

その場の全員に緊張が走った。

「まさか…」


「技師長、会議、いいのか?」

機関士のティンダが聞いた。

「いい」調子のおかしいボードを外しながらランセンが短く答えた。

無口なランセンと英語の下手なティンダ、この二人の間では会話が弾まない。

パネルを閉めるランセンの背中に、ティンダの体がが密着する。

「狭い…」

「仕方ない、当直、私と技師長」

二人が居るのは人間一人が抜けるのがやっとの狭い場所で、両側は19inchの標準規格ラックに固定された機器が所狭しと並んでいる。

小太りのランセンと、身長が2m近いグラマラスなティンダではどう見ても定員オーバ、ランセンの背に覆いかぶさるようして、ティンダが

ボードのコントロールを調整している。

「レイアウト、問題…くっ?…ううっ?」

ティンダが妙な声を出し、ランセンが振り返った。 ティンダの豊かなバストで張り裂けそうなツナギが視界を占める。

「ティンダ、どうした?」

視線を上に上げると、ティンダの黒い顔が歪んでいる。

「胸…締め付けられてる…」

呆れるランセン。 しかし…

ぐっ…ぐっ…うぐぐっ…

ティンダが唸り、身を捩ると、そのツナギの胸もとがバリバリと音を立てて裂け始めた。

目を見はったランセンの顔を、褐色の乳房が雪崩のごとく襲い掛かった。

鈍い音がして、ランセンの後頭部がラックのパネルにぶつかった。

くぁぁ… ティンダが呻いた。 膨らんだ乳房…いやティンダの胸に取り付いた『ティッツ・マッシュルーム』の先端がパネルにぶつかったのだ。

むくむくと膨らんでいく乳房に押されたティンダは、背中が反対側のパネルに押し付けられてしまう。 身動きできなくなる二人。

ランセンは自由になろうと必死もがく。 が、それはティンダの乳房と同化しつつある『ティッツ・マッシュルーム』を刺激することでもあった。

あぅ…あぅ…ああっ…あああっ… 甘い声を上げてよがるティンダ。

パネル表面で押しつぶされた乳首の感触、冷却液を流すポンプの振動、そして谷間でもがくランセンの動き、全てが心地よい刺激に変わる。

(うう…いい…)

胸の奥がじーんと熱く痺れ、乳首が心地よい、何かにこすり付けたくて堪らない。

はぅ…はぅ…はぅぅぅ…

獣の様に唸りながら、ティンダは体を揺する。 信じられない大きさに膨らんだ乳房が、ランセンの上半身を包み込んだままゆさゆさと揺れる。

ジュル、ジュル…

濡れた音を響かせ、乳首がパネルと擦れる。 望んだとおり、ひと揺すりごと痺れるような快感が伝わってくる。

あはぁ…ぃぃ…いい… 

甘い感触が乳房から胸の奥に染みこみ、そして全身に広がっていく。 

胸が…体が…魂までが溶けていくような甘く濃い快感にティンダは浸り…我を忘れ…。


(どうなっている?) ランセンは思った。

ティンダの乳房…の様なものに絡め取られたらしい。

異様に柔らかい為、身動きはできるものの抜け出せない。 

呼吸はできるが、むせ返るほどに女くさく、頭がくらくらするほど乳くさい。 

そこにティンダが乳を揺すり始めた。

ランセン上半身を乳房に包まれたまま揺すられ、柔らな乳房の感触に、顔や首筋を嘗め回されるようだ。

ずる…ずる…

(なんだ?)

なにが…と思ったら肩が露出した。 続いて胸の辺りがはだける。

ビクビクビクッ! 彼を包み込んでいる乳房が激しく震え、露出した肌が、滑らかな乳房に擦り上げられる。

(く…くくっ?) 言葉にならない心地よさ、一瞬ランセンの意識が飛んだ。

その隙を狙ったかのように、甘い匂いのするネットリした液体がランセンに塗りつけられる。

『いってしまった』ティンダの乳首が放出した妖しい『ミルク』が、谷間に流れ込んだのだがランセンには判らない。

ただ、それをもろに飲んだランセンの思考力はみるみる低下した。

ああ…ぁぁぁ… うつろな呻き声をあげ、ランセンは感じるままに行動し始めた。

周りを包むやさしい肉の壁に顔を埋め、頬ずりし、舐め、吸う…

それはそのままティンダに新たな快楽を呼び起こす事になる。


ユッサ… ティンダが体を揺する。

ビクン… ランセンが体を震わせる。

ズルン… ティンダが乳房をずらす…

ビクビク… ランセンが谷間で蠢く…


二人は感じるままに動き、人型の性器となって様に互いを貪り、この不自然な交わりに溺れていった…

そして機関部には、船長からの呼び出しに応える者はいなくなった。

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