第三話 キーパー

8.虜


 リズは、健のモノをそっと撫でる。 熱い。

 「熱いわ……用意できてるのね……」

 健は微かに頷いた。

 「じゃあ……オイデ……」

 リズの秘所に、健のモノが導かれる。

 ズブリ……

 固く熱い健自身が、柔らかな花弁の中心にゆっくりと呑み込まれていく。 健が腰を動そうとすると、リズが背中を軽くさすり健を制した。

 「まだいいわ……私にまかせて……」

 リズは、ゆっくりと健のモノを奥へと誘う。 柔らかな肉の壁が、モノを撫でる感触が心地よい。

 ズッ……ン

 あ……

 リズの奥に健のモノが届き、リズが吐息を漏らした。

 「リズ……」

 「このまま……感じて」

 亀頭の先端で彼女を感じた。 優しい温もりが、亀頭に伝わってくる。

 シュルリ……

 リズが背中の羽を広げ、それで健を包み込んできた。 薄い羽が背中擦る感触がくすぐったい。

 「このままでいいの?」

 「ええ……私の温もりを感じて……」

 健はリズの胸に顔を埋め、モノに意識を集中させる。

 (温いや……)

 優しい温もりが、モノを包んでいる。 心地よいものが、亀頭から竿へと沁みとおってくるようだ。

 (あ……)

 ヒクン……

 モノが震えた。

 ヒク……ヒク……ヒク……

 リズの温もりが、健の亀頭モノに、そして腰へと伝わってくる。 股間のモノがジーンと痺れて、ヒクヒクと蠢きだす。

 (ああ……いきそう……)

 『気持ちいい』感覚がこみあげてくる。 モノが自分の制御を離れ、止められなくなっていく。

 (あ……あん……)

 ジーンと痺れる快感が、モノを駆け上が……らなかった。 リズに放たれるはずの快感が、健自身の中に溢れかえった。

 ああ……

 健の体、そのすべてが性器と化した。 全身を満たす快感に体は固く強張り、魂は逆に蕩けていく。

 はぁ……

 極上の快感の沼に浸った少年は、ただ吐息を漏らすことしかできなかった。

 
 リズの声がする。 夢の中にいるように、どこか遠くから聞こえてくる。

 ”健……気持ちいい?”

 ’うん……気持ちいいの……’

 ”私の中は、どう?”

 ’暖かくて……柔らかくて……気持ちいい……とっても……’

 ”そう……健はリズの中に、いたい?”

 ’……ここにいたい……リズの中に……ずっと……いたい……’

 ヒクン……健の体が震えた。

 ”健……おいで……リズの中に……夢を見せてあげる……気持ちいい……終わりのない夢を……”

 ヒクン……ヒクン……健の体が大きく震える。

 ”健……”

 ’いく……’

 ヒクヒクヒク……ビクン!

 健の体が震え、リズの中で健のモノが弾けた。

 ドク……ドクン、ドクン、ドクン……

 熱い、たぎるように熱い精が、そして蕩けた健の魂が、リズの中へと放たれ、そしてリズの奥底へと吸い込まれていく。

 あ……あ……あ……

 呆けた様に、健は喘いだ。 体の中をすべて吐き出すような性の奔流が、少年のモノから迸る。

 あ……

 糸が切れた様に、健の動きが止まり、その体がリズの腕の中に倒れ込んだ。

 ハァ……アッハァ……

 健を受け止めたリズの口から、満足のため息が漏れ聞こえる。 二人の息は、やがて寝息へと変わっていった。


 翌朝、二人はベッドから起き上がると、言葉を交わすことなく体を清め、何事もなかったかのようにいつもの暮らしへと戻った。
 
 −−−−
 
 「日記は……ここで終わっているな」

 滝と志戸は日記を閉じて振り返った。 角と羽、尻尾のある女が背後にいた。

 「あんたが『リズ』だな」

 「ええ」

 「『健』はどうなった?」

 リズは、ぐるりと辺りを見回し、ほこりを払ってベッドに腰を掛けた。

 「健は、ここから引っ越したわ。 お父様の残した財産と保険金で、成人するまで不自由なく暮らせるけど、ここだと一人には広すぎるから」

 「まてよ。 確か『健』の……魂はあんたに奪われたんじゃないのか?」

 リズは、微かに笑い自分の下腹を撫でた。

 「ええ……『健』はここにいるわ」

 ピクリとリズの下腹が震えた。

 「じゃあ……今の『健』は……生ける屍か、魂の抜け殻なのか?」

 「そんな『ゾンビもどき』じゃないわよ……まぁ、私の『虜』ってとこかしら」

 滝と志戸は顔を見合わせた。

 「『虜』ねぇ……そういえば、さっき『成人するまでは』と言っていたが、その後は『健』はどうなる?」

 「いずれ『健』は成長して、誰かと子供を作るは。 そして、その一人を連れて私の所に戻ってくるの。 あの子の父親のように」

 滝と志戸は、リズの言葉を反芻する。

 「待てよ……すると『健の父親』も、あんたの虜だったのか?」

 リズは頷いた。

 「『健の父親』も、その父親も、その父親も……ずっとリズの虜だったわ……」

 「まさか……あんた、健の一族を……飼っていたのか!……家畜みたいに」

 滝はこぶしを握り締め、リズを睨みつけた。

 「人間を家畜にして、その……魂を食らっているのか!」

 「否定はできないけどね……前は感謝されていたのよ」

 「は?」「え?」

 滝と志戸は、面食らったような顔をした。

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