第三話 キーパー
7.魂の
ふう……
健とリズはベッドに体を預け、快楽の余韻を味わっていた。 仰向けになって息を整える健。
「どう?」
からかうようなリズの言葉に、健は焦る。
「うん!……えと、えと……す、すごかった! リズは最高!」
「ありがと。 お世辞でも嬉しいわ」
「お世辞なんかじゃない! うん、そうだとも!」
くすくすとリズは笑い、健は余裕の無さを見透かされたような気がし、ぷいっと横を向く。
「ふふっ……」
リズが隣で横になったのを感じ、健もベッドに背を預けた。 見あげると薄暗い天井が視界に入る。
(暗いや……)
唐突に心に寒いものを感じ、思わずため息を漏らす。
「何?」
リズに聞かれたわしい。 健はリズの方を見る。
「なんか……天井を見ていたら……思わず」
リズは微かに笑い、健に体を摺り寄せて尋ねる。
「思わず?」
「うん……なんか、気持が妙に沈んだような……」
リズは健に覆いかぶさり、顔を近づけた。 間近に見るリズの顔に、健は顔を赤らめる。
「そっか、『不安』になったんだね……お父さんがいなくなったからかな?」
「う、うん……」
リズは手を伸ばして健の髪に触れ、軽く撫でた。 健は子ども扱いされた様に感じ、口をとがらせる。
「リズ」
「不安を感じるのは当たり前だよ。 健と同じ境遇になれば、だれだってそう」
リズは健の頭をなでながら、耳元で囁く。
「うん……強くならなきゃ駄目なんだよね」
健の返事に、リズが軽く笑う。
「勇ましいね、健は。 でも大丈夫、強くならなくても大丈夫」
「え?」
キョトンとした健の耳元で、リズが囁く。
「リズが健の不安を取り除いてあげる」
リズは健に体を摺り寄せ、掌で健の胸を撫で、乳首を爪の先で刺激する。
「く、くすぐったいよ……変な事しないで……」
「おやぁ? 健はリズに変な事をしたのかな?」
「そうじゃなくて……男が女……の人の乳首を触るのは普通……いや……」
しどろもどろの健をみて、リズはくすくすと笑う。
「男と女の愛の交わし方には、いろんなやり方があるのよ。 ましてリズは、『コレ』だもの」
リズは自分の髪をかき上げ、二本の角を健に見せつける。
「うん……」
「リズにまかせて……」
リズは健に跨ったまま、健の胸板をまさぐった。 滑らかなで優しい愛撫に、『不安』が薄れて……いくような気がする。
(うん……ん?)
健は、リズの手が胸板を滑る感触に酔いしれていた。 撫でられているうちに、だんだん体の中に暖かなモノが入ってくるような、不思議な感覚が
生まれてきた。
(これ?)
目だけでリズの手の動きを追う。 リズの手は肌を滑っているだけだが、その手の下、体の中にくすぐったいような感覚がある。
「リズ?」
「感じる?」
健はコクンと頷いた。
「この感じ……なんなの?」
「リズはね、『魂』と交わることができるの」
「『魂』? それって本当に、あるの?」
「ある……みたいね」
リズは肩をすくめて見せた。
「本当はなんなのか、リズにも判らないの。 でもこうやっていると、貴方の中の『魂』、それとも『心』かな、それに触れていられる、そんな気がするのよ」
そう言って、リズは健の乳首を爪弾いた。
「うっ」
「あ、ゴメン。 痛かった?」
「ううん。 ちょっとびっくりしただけ……」
そんなやり取りの間も、リズは健の胸を弄る手を止めない。 愛撫されるごとに、体の中をくすぐられる様な感覚は強く、そして深くなってくるようだ。
サワ……サワ……サワ……
羽のようなモノで、体の中を愛撫されるような、不思議で、心地よい感触に健は陶然としてくる。
「あ……」
「うふ……気持ちいい?」
「うん……なんだか……体が蕩けていくみたい……」
言葉通り、健は蕩けた表情でうっとりとしている。
「ふふ……じゃぁ、蕩けさせてあげるわ」
リズは手の動きを止め、健の胸に口づけした。
「ふぁ……」
「舐めて……アゲル……」
リズは舌先を健の乳首に突き入れた。 舌先が健の胸に浅く食い込む。
「あう……入ってくる……」
胸を這いずる舌の感触が、さっきの手の感触同様に体の中へと入ってくる。 軽やかな羽の愛撫に代わり、濡れて這いまわるような愛撫が、少年の胸の、
その中へ、中へと入ってくる。
「ああ……ああ……」
(僕が女の子だったら……リズに愛されていたら……こんな風に感じるのかな……)
漠然と考えたその時、リズの舌先が健の『魂』に届いた。
ベロリ……
「ひゃぅ!……」
生の『魂』、その壁をリズの舌に舐めまわされた。 あり得ない感覚に、健の体か跳ねる。
ベロリ、ベロリ、ベロリ……
「あ、あ、あ……」
肉を介ず、『魂』を直に愛される快感を健は知った。 抵抗できない快楽に、健の魂が震える。
「溶ける……溶けちゃう……」
「ソウヨ……モットキモチヨクナッテ……トロトロに溶けてしまいなさいな……」
健の体が跳ねたのは一瞬だった。 その後は健はぐったりとベッドに横たわり、リズにされるがままになった。 手足が震え、口から熱い息が漏れ聞こえ
ていた。
「うっ……うっ……あ……」
健が呆けたように口を開き、リズは彼が達したことを悟った。 彼の股間のモノは、固く屹立したてヒクヒクと震えたが、絶頂したのが『魂』だけだったせいか、
何かを吐き出すことはなかった。
「ふふ……もっとも、ここで出しちゃっら、本当に『逝ってしまう』ところだったけど……」
リズは、上気した顔に笑みを浮かべたまま、健の様子を伺った。 少年は目を見開いたまま、体を震わせて絶頂の呻きを漏らしていたが、やがて動きを
止めた。
「健……健?」
健は、しばらく呼びかけに答えなかっが、やがてぎくしゃくとした動きで首を回し、リズの方を見た。
「リ……ズ?」
リズは頷いた。
「うふ……『魂』が蕩ける感触はどうだった? 気持よかった?」
カクカクと、健は首を縦に振った。
「ヨ……カツタ……良かった……」
リズは健の答えに満足したのか、満面の笑みを浮かべた。
「そう……じゃぁ、貴方の『魂』を……奪ってあげる……」
リズが固く反り返った健のモノに手を添えると、健の体がびくりと大きく震えた。
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