第二話 宿り
4.『宿り女』
シトシトシト……
細かい雨が傘を差しかけた小僧を包んでいた。 霧雨にかすむ姿がぼやけるほどに……はたしてそれは霧雨のせいだろうか……
閉じた眼が見る淫靡な幻、それは小僧の進んでいた道、その真逆を極めた光景だった。
”んむ……”
赤い唇が小僧の唇を咥え、ヌラヌラとした舌が、小僧の口の中を這いずる。
’ちゅう……’
女が息をすう。 今度は小僧の舌が女の口へと吸い込まれた。 香しい香りの艶めかしい洞の中を、幼い舌がさまよい、濡れた蛇のような女の舌に
絡めとられる。
”んふぅ……”
小僧の心に姦淫の戒めはすでになかった。 あったとしても、小僧の内に溶け込んだ『宿り女』の心がそれを溶かしていく。
’ふふ……あなたを……蜜で満たしてあげる……足を開いて……’
コクンと小僧は頷き、切株に腰かけたまま、足を開いて少女のような溝となった股間を露にする。
’可愛いわ……’
闇の中から、秘所をさらけ出した『宿り女』の太腿だけが現れ、愛液が舌たる秘所を小僧の溝に重ねた。
ビ……チャ……
”はうっ!”
熱い陰唇の襞が小僧の溝と、熱い『口づけ』を交わす。 できたばかりの少女の証が、熱い女の性に翻弄される。
”ああっ……”
’気持ちいいでしょう……さぁ……遠慮なく味合いなさい……女の快楽を……’
『宿り女』の秘所はビチャビチャと淫猥な音を立て、獣の顎のように小僧の溝を噛み、その中へと熱い愛液を送り込んだ。
”あ……ああっ……あああっ……入ってくる……熱いのが……”
大量に流し込まれる『宿り女』の熱い愛液に、小僧の溝は男の怒張を入れられるかのように押し広げられ、かき回された。 妖しい粘液は小僧の中を
満たし、フルフルと震える肉襞を弄る。 、その中へと染み込んだ。
”あうっ……熱い……もっと……もっと……
小僧のがめくれ上がり、肉の花びらのような陰唇が現れた。 ビラビラと蠢く肉襞は、『宿り女』のそれと絡み合い、互いをため合うように動く。
”はぁ……はぁ……”
小僧は腰をしきりに動かし、『宿り女』の秘所と自分の秘所を深く噛み合わせた。 いや、動かしているのは小僧ではなかった。 女にされた、小僧の
下半身が貪欲に『宿り女』をもとめ、小僧はそれに引きずられていたのだ。
”ぼ、僕のが……ああっ……勝手に……”
’判るわね……そこから少しずつあなたの体は女になる……私が宿るために……’
小僧はコクコクと頷いた。 その間にも、彼の体は変わっていく、少しずつ。 へその下あたりで腰はくびれ、尻の辺りは丸くふっくらと膨らみ、開いた足の
間では……肉の花が息をするように蠢いている。
”はぁ……ああっ……あがってくる……”
へその辺りがヒクヒクと蠢き、少年の体が艶めかしい曲線に縁どられた少女、いや女のモノへと変っていく。 その異様な光景は、恐ろしいまでに
淫靡であった。
クハッ……
突然、胸が締め付けられるような寂しさに襲われ、自分で自分を抱きしめる。
フワリ
両腕に胸の柔らかさを感じた。 骨ばっていた胸板が、優しく膨らんでいた。
”ああ……”
自分の乳房を、手で揉み解す。 女の胸を少年の手が掴み、指が乳房に埋まった。 白い果実を求めて蠢く指が、次第に細くなっていく。
”あ……あ……”
甘く喘ぐ声に、艶めかしい香りが被さった。 切株の上であられもなく悶えているのは、すでに小僧ではなくうら若い娘だった。
’さぁ……宿らせて……’
『宿り女』の声がして、食い込んだ秘所から熱い蜜が溢れんばかりに注がれる。
”くぁ!……”
娘の秘所へ注がれた蜜は、中を突き上げ、奥へと満たされる。 甘く熱い蜜で満たされ、娘の中を『女』の快感が走り抜ける。
ビクン!
硬直した娘の体が一気に伸び、女の体へと変わっていく。 小僧の僧衣はその変化についてこれず、ブチブチと音を立ててあちこちがさける。
”あ……ぁぁ……”
体の中を満たす快感の荒波に乗って、『宿り女』の心が小僧の中に流れ込んだ。 蕩け切った小僧の魂に、『宿り女』の心が溶け込んでいく。
”あは……気持ちいいの……この体……”
歓喜に震える小僧、いや『宿り女』は降り続く雨の中で悶え狂った。
シトシトシト……
雨の夜、一人の小僧が神隠しにあった。 しかし、よくあることとして、長く伝えられることはなかったと言う。
−−−
「……その小僧は『宿り女』とやらに取りつかれ。 身も心も奪われ、姿を消した……という言い伝えなのか?」
滝が首をひねりつつ女に尋ねる。
「ええ……」 女が頷いた。
「しかしなぁ……その話の最後が本当だとすると、小僧がどうなったか、誰も知らないことになるよなぁ? だったら、言い伝えが残っているわけが
ないじゃないか」
志戸の指摘に、滝が同意する。
「そうだよな」
「ええ……ですから、今の話は作り話……ですよね」
女は笑みを含んだ声で、志戸の意見を肯定した。
「さて……まだ雨が止む様子はありませんね……」
滝が振り返ると、祠の外は依然として雨が続いている。
「こんなものでよろしければ、お持ちになりますか?」
女が、抱えていた和傘を二人に差し出した。 その動きで、女の着物の胸元が少し開いた。
「……?」
着物の奥に、破れくすんだ別の布、古い僧衣のようなモノが見えた。
「どうぞ……お持ちくださいな……」
女が顔を上げた時、滝と志戸の姿はなかった。 二人が雨の中を走って逃げる音だけが、祠の中に残った。
<第二話 宿り 終>
【<<】【>>】