第二話 宿り

3.宿り場


 ”え!”

 小僧は驚いた。 自分の中に何か、いや、『宿る女』がいる。 驚愕と恐怖の稲妻が背筋を走り、脳天を直撃した。

 ”『宿り女』!?……『宿り女』?……『宿り女』……”

 だが冷たい恐怖は、日に照らされた残雪のようにゆるゆると溶けていった。

 ”そう……『宿り女』なんだ……こうやって傘の形で待ち受けて……雨宿りをする人に宿る妖……それが『宿り女』……”

 不思議だった。 知っているはずのない事が、頭の中に湧き上がってくる。

 ”そうか……『宿り女』に取りつかれつつあるから……『宿り女』の知っている事が判るようになるんだ……あれ?”

 さっき感じた恐怖が消え、不思議と心が落ち着いてくるのを感じる。

 ”逃げられると困るから……怖がらないように……するんだ……え?”

 小僧が立ち上がり、傘を投げ捨てようとした。 しかし、小僧はすぐに傘を担ぎなおし、切株に腰を下ろしす。

 ”駄目だよ僕……傘を放しちゃ……『宿り女』が宿れないじゃないか……”

 小僧の唇に、微笑が浮かんだ。 そして、傘から光る滴が小僧に滴り落ち、僧衣の下の体を濡らしていく。

 
 依然として目は開けられない。 見えるのは、全裸になった自分と、闇の中から現れる『宿り女』達の幻だけだ。

 ’うふふふふ……’

 ’ほほほ……’

 『宿り女』達は含み笑いをしながら、小僧の体を撫で、舌を這わしてくる。

 ”ああ……”

 淫らな幻に小僧は喘いだ。 時折心がざわつくのは、魂が抵抗しているからだろうか。

 ”ふふ……いやなのかな……僕は……”

 『宿り女』を受け入れたいと思う心が、ゆったりとした波のように体を満たしていく。 それとも……

 ”ああ……お肌から『宿り女』が染み込んできて……だんだん……僕の心に『宿り女』の心が混ざって来る……”

 小僧は、甘い喘ぎを漏らした。 『宿り女』に憑りつかれていくとき、体と魂が蕩け、『宿り女』のそれが溶け込んでくる。 その時、取りつかれる人間、

憑りつく『宿り女』、双方が深い歓びを覚える。

 ”あはぁ……”

 口をだらしなく開けると、柔らかい唇が重なって来て、舌が絡みついてくる。 幻のはずなのに、現実よりもはっきりとした感触がある。

 ”んむ……むぅ……”

 小僧の股間が、固くなりヒクヒクと震え出す。

 ”あん……そこ……おねがい……”

 闇の中から、赤い妖花のような『宿り女』の秘所が現れ、小僧のモノを呑み込んだ。

 ”気持ちいい……ヌルヌルして……暖かい……”

 ベチョベチョと卑猥な音を立て、『宿り女』の秘所が小僧の下腹の上で蠢いている。 容赦のない雌の抱擁に、小僧自身は身を固くした少年のように、

されるがままになる。

 ”犯されてる……もっと……もっと犯して……”

 『宿り女』の秘所は、小僧の感じるところが判っているかのように蠢き、咥えこんだ少年を思うがままに弄る。 小僧は、『宿り女』に肉を、そして魂を犯され

、雄の歓びに酔いしれた。

 ”ああ……いく……”

 ビクン!

 少年のモノが大きく震え、初めての快感とともに怒涛の如く精を吐き出した。

 ”やん……”

 未知の感覚に、少年は身をよじって悶えた。 その体を、いくつもの『宿り女』の手が捕まえ、優しく擦る。

 ’さぁ……だして……’

 ’もっと……もっと……全部……吐き出しなさい……’

 ’だした分だけ……蜜で満たしてあげる……’

 『宿り女』の囁きには、抗うことのできない甘美な響きがあった。 促されるまま、小僧は精を吐き出し続けた。

 
 ”……く……はぁ……”

 全てを出し切り、小僧は甘い溜息を洩らした。 自分の中が空っぽになったようで、力が入らない。

 ’さぁ……’

 ’入れてあげる……宿ってあげる……’

 甘い囁き声に、小僧は応えた。

 ”……きて……おねがい……”

 ’くすくすくす……’

 『宿り女』の手が、力を失い縮こまった小僧の股間を、包み込むように握った。

 ”ふ……にゃぁぁ……”

 奇妙な心地よさが、股間に生じた。 くすぐったい、それでいて心地よい。

 ギュッギュッギュッ

 容赦のない圧力が、少年から雄になったばかりのモノを揉み解す。 ほぐしながら、中へと押しこんでくる。

 ”にゃっ!?”

 ゴクッ

 2つの宝玉が、中へと押しこまれた。 心地よい不思議な衝撃が、小僧の脳天を叩く。

 ”ああっ……あああっ……”

 ギュ、ギュギュッ……

 入ってくる。 得体のしれない快感と共に、股間のモノが体の中に入ってくる。 小僧は喘ぎ、身をよじってよがる。

 ”変な気持ち……でも……いいの……”

 ’ほほ……判るでしょう?……私達の、『宿り女』の、宿り場所ができていくのが……’

 ”うん……もっと……もっとしてぇ……”

 小僧は、少年から女に変えられていく。 彼は、自分に何が起こっているか、何をされるのか、判っていた。 判っていたが、拒むことはできなかった。 

いや、自分から『宿り女』に、体を、魂を差し出していた。 身をよじる小僧の股間に、『宿り女』が手を突き入れた。

 ”あ……あ……あぁっ!”

 一声大きく鳴き、小僧は身を震わせた。

 ”は……”

 ガクリと小僧はうなだれた。 さっきまで股間で猛っていたモノは影も形もなくなり、一本の深い溝が刻まれていた。

 ”はぁ……はぁ……”

 ’ふふ……よかった?’

 ”うん……よかった……の……”

 小僧が顔を上げた。 顔かたちは変わっていないはずなのに、匂うような色気が顔に張り付いている。 男へと向かいつつあった体も、微かに丸みを

おびて、色気、いや妖気を漂わせている。

 ”はぁ……お腹が……”

 ’なに?……’

 ”お腹の奥が……さみしい……空っぽ……”

 小僧の顔に憂いがさす。 体から漂う妖気が次第に濃くなっていくかの様だ。

 ”おねがい……”

 小僧は、ねっとりとした調子で求めた。

 ”満たして……熱い蜜で……おねがい……”

 『宿り女』は妖しい笑みを浮かべ、小僧の唇へ自分の唇を重ねた。

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