第二十七話 チェンジ

11.囁かれて


 キィ

 ドアが開いてアマリアが入って来た。

 「綺麗になったわよ」

 彼女が差し出したのは、ヒロシの服だった。 上にクリーニングの領収書がのっている。

 「あ、ああ。 悪かったな」

 ビニールに包まれた服を受け取る。 受け取りながら、アマリアの顔を見る。

 「なに?」

 「君は……何者だ?」

 「何って?」

 「男を……その性転換させる。 魔女とか……」

 「さぁ?」

 肩をすくめるアマリア。

 「昔はただの『立ちんぼ』やってたけど。 あの子と『して』から、こうなったの」

 「『あの子』?」

 「そう、あの男の子」

 ヒロシは、はっとした。

 「あいつか。 今日、おれをここに誘った」

 アマリアは頷いた。

 「ずいぶんと前のになるはずよね……お客を取ってたら、あの子が話しかけてきて……」

 「ちょ、ちょっと待て! それはいつの話だ!?」

 「さぁ? あれから随分たつけど……」

 彼女は指をおって数えている。

 「10年より前だと思う」

 「そんな、あいつ幾つなんだ」

 「知らない。 気にしたこと無いし……いえ、この商売始めてからね、気にならなくなったのは。 最初の時は、未成年の男の子を客にしていいか、迷った

ような気がするもの」

 「……」

 「それからよね、胸が大きくなって『母乳』……あれが母乳だったらだけど……が出るようになったのは」

 「……」

 アマリアは頷いた。

 「ひよっとすると、アタシもあの時変えられたのかも、あの子に」

 アマリアは何でもない事のように言い、ふっと笑う。

 「変えられた?」

 「そう、それまでの自分から『チェンジ』したってわけ」

 ヒロシは呆然とした。 何でもない事のように言うが、彼女の話が事実なら、あの子はアマリアを人でない『何か』に変えたことになる。 そしてアマリアは

自分が変えられた事を、全く気にしていない事になる。

 「何者なんだ、あいつは。 いや、それよりあんたはそれでいいのかよ」

 アマリアはめんどくさそうに頷いて見せた。

 「その前の暮らしよりは、今の方がずっとましよ。 それにね……『チェンジ』した後は、世界がぱーっと明るくなったし」

 ヒロシはあまり物事を深く考える方ではない。 だから、『ヤバイ』遊びもやってきた。 しかし、アマリアの話が本当だとすれば……

 「それって……体だけじゃなくて、心まで変えられたんじゃ……」

 ヒロシの中でだれかが言う、『逃げろ』と。 だが悪魔が囁く『クスリじゃないんだ。 大丈夫、一回ぐらいなら』と。 ヒロシの葛藤を見透かしたように、

アマリアが体を寄せる。

 「そう……変えられたかもね。 貴方も変わってみる?」

 アマリアが顔を寄せてきた。

 「ね?」

 彼女がヒロシの唇を奪った。 甘い味が口の中に広がる。

 「あ……」

 不意を突かれた訳ではない。 ただ、アマリアの口づけを拒むことができなかった。

 「逃げなかったね」 アマリアが言った。

 「あ、ああ……」

 アマリアはヒロシの顔をじっと見つめる。

 「する?」

 10秒後、ヒロシは頷いた。 いや、頷いてしまった。

 
 「その気だったのね。 凄いわぁ」

 裸になったヒロシはベッドに横たわり、アマリアは彼の足に体を重ね、そそり立つモノを谷間に誘う。 柔らかくしっとりとした肌が、熱いモノを包み込む。

 「くっ!」

 モノがビクンと跳ねた。

 「感じやすいんだ」

 「ま、まあな」

 アマリアはくすくす笑いながら、ゆっくりした動きでモノを乳房で愛撫する。

 「いきそうになったら、いって」

 「ど、童貞じゃないぞ……うぅっ」

 アマリアの乳房の谷間は天国のような感触だった。 心地よい痺れがモノに集まってくる。

 「お、おい……あんたも」

 ヒロシはアマリアを誘った。 アマリアは頷き、体の向きを変えてヒロシの顔に自分の秘所をさらした。

 「お」

 アマリアの秘所は綺麗な薄紅色で、恥ずかしがるように陰唇が中を隠している。

 (とても経験豊富とは思えんな)

 舌先で、薄い肉のカーテンをめくり、中に舌を踊りこませる。

 「あん」

 アマリアが甘い声を上げた。 感度もいい。 ヒロシは彼女の尻を抱え、顔を埋める。

 「んふ」

 アマリアも負けじと乳房の愛撫を再開する。 柔らかい谷間で、モノがほぐされている様子がヒロシの脳裏に浮かぶ。

 「う、うまい……あ」

 股間の痺れに睾丸が縮み上がり、背筋を快感の波が駆け抜ける。 ヒロシは負けじと、舌を奥へと差し込み、陰唇を唇で咥えた。

 あふぅ……

 はう……

 二人は、静かに、深く、互いを愛撫した。 湧き上がる快感が二人を蕩かして一つにする。 一つの生き物となり、約束された歓びへと歩みを進めていく。

 「も、もう」

 「いって……」

 乳房の間で、ヒロシ自身が達する。 同時にアマリアの体が強く震えた。

 あ……

 う……

 男と女の体が一つの歓びで結ばれ、ベッドの上で硬直し、果てた。

 
 「……貴方のミルクでいっぱい」

 アマリアはクスリと笑い、乳房の谷間を清め。 白い乳房がまぶしい。

 「ああ……」

 気だるげに頷き、ヒロシはアマリアの乳房を見つめている。

 「どんな感じなんだ? 女になるって」

 「さぁ? 私はもともと女だし」

 そう言って、アマリアはヒロシの頭を胸に抱いた。 ヒロシのモノの匂いはすでになく、むせるような甘い乳の匂いが彼を誘う。

 「……」

 「怖い? これが」

 からかうようなアマリアの言葉に、ヒロシは小さく首を縦に振った。

 「少しな」

 「正直ね」

 アマリアはヒロシに体を重ね、耳元で囁いた。

 「やっぱり帰る?」

 返事の代わりに、ヒロシはアマリアの乳首を咥えて吸った。

 「ああ……」

 アマリアの乳が口の中から体に染み込んでいく。 体が柔らかく蕩けていくような、未経験の感覚がヒロシを包んだ。

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