第二十七話 チェンジ

2.ドール


 扉の向こうには、呼び込みに似た女がいて、ヒロシとタカシを招き入れた。 女は二人を奥へと案内し、突き当りの扉を開けた。

 「おや?」

 扉の向こうには、もう一つ扉があった。 ヒロシは中の扉の左右に視線を巡らす。 扉の両側には2mほどの壁がある。 目の前の扉の女が開けて、

二人を中に入れた。

 「すぐにショーが始まります。 ごゆっくり」

 扉が背後で閉じた。

 
 「想像していたのと少し違うかな?」

 「ああ」

 二人が通された部屋は5m四方ほどの狭い部屋で、正面がガラスの壁になっていて、その壁の方を向いてソファが置いてある。 ガラスの向こうは暗く

て良く見えない。 二人は椅子に座り、ガラスの向こうを透かしてみるように身を乗りだす。

 「おいタカシ、前のガラスの壁、入り口の壁より狭いな」

 タカシは背後を振り向き、部屋の中をぐるりと見渡す。

 「ホントだ。 見ろよ、床が台形になってる」

 その時、ガラスの向こうに灯りがつき、二人の注意はそちらに向けられる。 ガラスの向こうは、クッションを敷き詰めた小さな部屋で、奥の壁は黒っぽい

ガラスの様に見える。

 「あっちの部屋も変な形だな……六角形か?」

 「七角形じゃないか? 正面の壁に角が見えるぜ……ははあ、なるほど。 ショーを行うのはあの七角形の小部屋で、それを囲むように客が入る

小部屋が並んでいるんだ」

 タカシの言ったことを、ヒロシは頭の中で思い描いた。 小さな七角形の部屋を取り囲む大きな七角形の部屋があり、外の部屋は一角ずつ壁で仕切られ

七つの台形の小部屋になっている。 自分たちはその一つに座っていることになる。

 「凝った造りだな……お?」

 ガラスの壁の一つが向こう側に開き、奥から二人の裸の女が現れ、部屋の真ん中にうずくまった。

 「なんか、個室ビデオ屋と変わらんような……」

 「生だぞ。 お、始めた」

 二人の女は、髪を結い上げるとゆっくりした動きで抱き合い、唇を重ねた。 二人の間で乳房が柔らかく形を変える。

 「ん?」

 タカシはソファから立ち上がり、ガラスに顔をくっつけるように覗き込む。

 「おい、がっつくなよ。 女達が呆れるぞ」

 「大丈夫そうだ。 マジックミラーらしいし、こっちの方が暗い。 見ろよ、他の部屋の中がまるで見えない」

 ヒロシはタカシの指さす方を見た。 ガラスは黒い鏡のように女達の虚像を映すだけで、中に人がいるのかどうかまるで判らない。

 「向こうが見えたら興ざめだものな……」

 女達はクッションに身を横たえ、体をすり合わせい互いの秘所を弄る。 上になった一人が向きを変え、下の女の秘所に顔を埋めた。 すると、二人の

体が水平方向にゆっくりと回転していく。

 「ほう、回転ベッドか」

 女達の向きが変わり、ヒロシとタカシは秘所を正面から見る形になった。 濡れてテラテラと光る秘所を、もう一人の舌が舐めあげ、指が潜り込む。

 「おぅ」

 「ビデオじゃこの迫力はないぞ」

 生の女のモノをみた事はあるが、至近距離でレズを見るのは二人とも初めてだった。 向こうから見えていないのをいい事に、二人はガラスに張り付く

様にして、中を覗き込む。

 「けっこうレベル高いぞ」

 「おっぱいも大きいしな」

 AVの巨乳モデルと見まごうばかりの乳房を遠慮なく見せつけ、二人の女はあられもない格好での絡み合いをヒロシとタカシに見せつける。 二人はそれ

こそ食い入る様に、レズショーに見入る。

 クッ……

 アウッ……

 微かな喘ぎを漏らして二人の女は果て、クタリとクッションに沈み込んだ。 荒い息をつく女達の乳房が波打っている。

 「へぇ……自前かな、アレ」

 「整形してるだろう。 手術の跡はみえないけど」

 「うん。 きれいなもんだ……およ」

 ガラスの一枚が開き、二人はその向こうに消える。 入れ違いに一人の裸の女が入って来た。 手に何か持っている。

 「今度は、自慰か?」

 「かもな。 でもアレ、ディルドーじゃないぞ」

 女は、ヒロシとタカシの方を向き、艶然と微笑んだ。 二人は見られているような気がしてソファに戻る。

 「あれは……人形か?」

 「おもちゃの人形みたいだな。 アクションドールとか言う」

 人形を使って何をする気なのかと訝しんでいると、女は人形を脇に置き、二人の方に向けて足を開いた。 秘所が二人の眼前にさらけ出される。

 (きれいな色だ)

 ピンク色の秘所が、くぱっと口を開ける。 女の細い指が周りから中をクモのように蠢き、奥から透き通った愛の滴がトロトロと溢れ指に絡みつく。

 あ……ああ……

 女の喉から喘ぎが漏れ、じれたように腰が動いた。

 き……て……

 壁の向こうから女が呼ぶ。 ヒロシとタカシは女の秘所にくぎ付けになったまま、身動き一つしない。

 
 ”……ふ”

 女は息をつくと、傍らに置いた人形を拾い上げる。

 ゾクリ……

 ヒロシの体に冷たいものが巻き付いた。 頭を巡らすと、彼は女の手に握られていた。

 ”ん……”

 顔を上げると、大きな女の顔が間近にみえた。 女は嫣然と微笑み舌でヒロシの顔を舐めた。

 ”?”

 随分と舌が大きい。 もう一度辺りを見回す。 ここは七角形のガラス壁で囲まれた部屋の中だ。 彼は女の手に握られた人形になっていた。

 ”可愛いわ、貴方”

 女は、胸の谷間にヒロシ人形を収めた。 柔らかいしっとりとした肌が彼を包み込む。

 ”……”

 ヒロシは驚かない。 当然だろう、彼は人形なのだから。

 ”いま、よくしてあげますからね……”

 女は、ヒロシを乳房の間に収めたまま、乳房を両手で揉みしだいた。 乳房がタプタプと揺れ動き、ヒロシの体に優しく纏わりつく。

 ”ああ……”

 女の乳房は、中身が液体のように柔らかく揺れ動き、ヒロシは人肌の湯に浸っているような錯覚を覚えた。 あまりの心地よさに体が弛緩し、乳房と

自分の体が溶け合っていく様な気がした。

 ”お乳をあげましょうね”

 女は乳房を手で持ち上げ、乳首を自分の口に含んでチュウチュウと吸う。 乳首から口を放すと、唇から乳が流れ落ちてヒロシの頭に降り注いだ。

 ”ああ……”

 ヒロシの体は女の乳で白く染まる。 女は再び乳房をこね回す。 ヒロシの体は乳房の谷間に沈み、暖かく優しい愛撫に包まれた。

 ”溶けちゃいそうだ……”

 ”どうなってもいいのよ。 好きなように感じていいの……”

 ”うん……もっと……して……”

 女はヒロシの求めるモノが全てわかっているようだった。 白い乳房の谷間は、甘く優しい愉悦で彼を捕まえ蕩かしていく。 ヒロシの体に、甘い快感が

染み込み、彼を満たす。

 ”あ……あ……あぁ……”

 深い陶酔の中で、彼ははてる。 体が硬直し、絶頂感に感覚の全てが白く塗りつぶされた。

 
 「……う?」

 ヒロシは我に返った。 正面を見ると、ガラスの向こうの女は、谷間に人形を収めたまま果てていた。

 「ひ、ヒロシ?」

 傍らを見ると、タカシが目を擦っている。

 「今のは……夢か?」

 「それとも……ヤクか?」

 顔を見合わせる二人。

 「なんか、本当にヤバイか?」

 「ああ……おいあれ?」

 人形を持った女はガラスの扉の向こうに消えると、入れ替わりに別の女が出てきた。 この女は見事な胸を見せつけるようにくるりと一周した。

 ”アマリアです……さぁ……坊や……おいで”

 女が別のガラスに向かって手招きをする。 ガラスが開き、中から出てきたのは、タカシとヒロシの先に入ったあの少年だった。

 ”あ、あの……”

 ”うふ……またお姉さんのおっぱいが欲しくなったのよね。 いいわよ”

 アマリアは、少年に微笑むと彼の衣服を脱がし始めた。

 「こ、これはヤバイ」

 「おおいにヤバイ」

 ヤバイを連発しながら、二人はガラスの向こうを食い入る様に見つめるだけだった。
   
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