第二十六話 山の女

6.お祭り


 ザザーッ……

 里山の木々の間から、一斉に鳥たちが飛び立つ。

 ズシッ……ズシッ……

 ザザッ……ザザッ……

 里山の木々が揺れ、それをかき分けるようにして、白い女体、『山姫母』が姿を現した。 それを見た村の者達は腰を抜かしかけた。 その背丈は

『山姫姉』の倍はあろうかという巨体であった。

 
 「……なんて身の丈だんべ」

 「奈良の仏さんが立ち上がったら、あれくらいになるんでねえか」

 村人一同の視線は、『山姫母』にそそがれ、そして吾作へと移動する。 流石に吾作は茫然としている。

 「モノが大きいかどうとかいう話でねぇだよ、あれは」

 「んだ、海の潮吹く勇魚(鯨)辺りを持ってこねぇと……」

 一同が話している間に、『山姫母』はのっしのっしと歩いてきて、寺前で足を止めた。

 「一応、田は避けてくれたかぇ」

 「あの足で踏まれたら、一歩で一反がつぶれるだな」

 村人に交じって立っている『山姫姉』が『山姫母』を見上げ、何事かを話しかける。 『山姫母』は頷くと、その場に座り込んだ。

 「うーむ大きいのぅ」

 近くで見る『山姫母』の迫力は、想像を超えるものだった。 この身の丈では、身にまとう物もままならぬと見え、腰の辺りをぼろ布のようなモノで隠して

いるだけで、ほぼ全裸。 その白い女体は、意外なほどに滑らかで整っている。 その大きさこそ並外れているものの、物の怪には見えず、神々しさすら

感じる。

 
 「さて……皆の衆」

 『山姫姉』が振り返った。

 (おんや?)

 村長は『山姫姉』の表情に、困惑を見て取った。

 「しばらく母上と会うておらんでいたのだが……どうもお主に頼んだのは、ちと無理難題であったな」

 『山姫姉』が吾作にすまなさそうに言った。

 「母上の身の丈が、思っていたより大きかったようでな……」

 (ありゃ)

 どうやら『山姫姉』も、『山姫母』がここまで大きいとは思っていなかったようだ。

 「すまんな、なにしろ最後に会ったのは百年ほど前で……わしも小さかったのでな……」

 弁解する『山姫姉』の前に村長は進みでて、どうするかを相談し始めた。 すると、何を思ったのか吾作が進み出で、『山姫母』を見上げる。

 ”んー?”

 『山姫母』が吾作を見下ろす。 上から大きな顔に見下ろされると、相当な威圧感があり、村人たちは不安そうに少し下がった。

 「あの、『山姫』様」

 吾作が『山姫姉』の方に顔を向け話しかける。

 「母上様にお越しいただいた以上、おもてなしができねば、供物を差し上げねぇとなんねぇんですか?」

 吾作の言葉に、村人一同が青ざめた。 この巨体、どれほどの供物を出さねばならぬか、想像するだけで気が遠くなりそうだ。

 「う……うむ」

 さすがに『山姫姉』も気まずそうだ。 かってにやってきて供物を出せ、では山賊と変わらない。

 「母上に来ていただいて、供物なしでお帰りいただくと……いろいろ障りがあるだろうな……」

 「そ、そんな」

 「我と妹は、供物のを受けた分、山の実りを約束するが……母上の障りはそれを上回るであろうな……」

 村人一同、顔青ざめて言葉も出ない。

 
 「よし、腹を決めただ!」

 吾作はポンと手を打ち合わせた。

 「吾作?」

 「誠心誠意、母上様のお世話させてもらうだ」

 その言葉に、『山姫姉』が驚いた様子になる。

 「お主のモノはたいそう立派だが、いくらなんでも母上とは……みよ、モノどころかお主が通り抜けられるぞ。 なんぞ考えがあるのか?」

 「体当たりでやるだけだ。 やることは同じだべ」

 気合を込めた吾作の言葉に、村人は顔を見合わせる。

 「どうする?」

 「吾作どんだけにまかせるわけには……」

 「やるだけやってみるか。 おい、若くて体に自信のある奴!集めてこい」

 「やる気だけはあるぞ!」

 村人はわいわい騒ぎだし、名乗り出る者が相次ぐ。

 「なんか……目的が変わって来てねぇか?」

 「まぁ、ええ。 とにかく、『山姫』様をおもてなしして、障りなくお帰りいただこうて」

 
 寺の近くに、村祭りが開かれる丘があった。 土地が高くなっていて、水が引きずらいので祭りや農作業に使われていた。 そこに蓆を開き、『山姫母』様の

おもてなしの場とした。 そこに、吾作を筆頭にした体自慢の若い衆が三十名、締め込み姿でやってきた。

 「おうおう、勇ましいのう。 わしももうちっと若ければ……いや、いまからでも……」

 「やめんかい! 『山姫』様の不興を買ったらどうすんじゃ!」

 『山姫母』は、寺前からこちらに移動し、蓆の上にどっかと腰を下ろしている。 格好は大仏様のようでもあるが、巨大な女体はあまりに生々しい。

 「えーむ、見事なお胸……釣鐘より大きいわ」

 「あの間にはさまれたら……死んでも悔いは残らんのう……」

 年配の者たちが悔しがる中、『山姫』様をもてなす祭りが始まった。

 
 『それ!』

 『おう!』

 足を開いて投げ出した『山姫』様に男たちが群がり、太腿や肩を渾身の力で揉む……のは無理なので、杵で叩く。 『山姫』様の肌に木根があたると、

太鼓のような音がして杵が跳ね返る。

 「えい!」「おう!」

 「えい!」「おう!」

 『山姫』のお加減はと見上げると、目を軽く閉じて杵の感触を楽しんでいるようだ。

 「続けるぞ!」

 ドンドンドンと、景気のいい音が響き渡る。 その間に、吾作を筆頭に五人ほどが、『山姫』の女陰に歩み寄っていた。

 「では、ほぐさせていただきますだ」

 吾若い百姓が二人で『山姫』の襞を左右に開……こうとするが、厚ぼったく滑る女陰は手掛かりがない。

 「つかめねぇぞ!」

 「両の腕で挟んで、肘で押さえるだ!」

 腕を『く』の字にまげ、両肘を挟んで女陰を引っ張る。 が、この格好だと……

 「ぬおっ!?」

 「うあっ!」

 男たちは、濡れた外陰に胸から腰を押し付けてしまい、『山姫』の愛液で体をヌルヌルされてしまう。

 「あぁ……」

 恍惚とした表情になった男らは、自分たちのモノを外陰に押し付け、腰を上下させたしまった。 ドロリとした心地よさが体が溢れてくる。

 ドクリ……ドクッドクッドクツ……

 二人は白目を剥き、『山姫』の女陰にしがみついて体を震わせる。

 「ああっ……いっちまったか」

 ドサッと地面にひっくり返った二人を、他のモノが抱え起こして連れていく。

 「きばれよ! 気いぬくと、あれだぞ!」

 「んだけど……あれでもいいがなぁ」

 今度は、焼き物や見習いの職人が『山姫』の下腹に上り、腹ばいになって上から女陰に迫った。 そこから、女の宝玉を慰めるつもりらしい。

 「ろくろで茶碗を、いんや壺だな。 女の壺だから、ちょうどよかんべ」

 意味不明の言葉をつぶやきつつ、淫皮の下に隠れた宝玉を、慎重に弄る。

 ”ふゃぁぁぁ……”

 『山姫』の口から、喘ぎ声らしきものが漏れた。 これは効いたかと、周りで見ている一同がはやし立てた。

 「ふぇ?……ふゃぁぁぁ」

 今度は職人見習いがおかしな声を上げた。 彼の手が『山姫』の宝玉を弄っていると、その下から、甘い匂いが溢れ、彼を包み込んだのだ。

 ”ああ……もっと……もっと……”

 頭の中に、響く『山姫』の声に命じられるまま、彼は手の中の宝玉撫でまわしていたが、やがてくるりと向きを変えると、自分の股間それに押し付け、

力いっぱい腰を擦り付けた。

 「はぁぁぁぁ……」

 彼は達してしまい、職人見習いは女陰の手前に滑り落ち、そのままヒクヒクと喜びに震えている。

 「三人目だ」

 祭りは続く
   
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