第二十二話 こたつ

6.『外』から『奥』へ


 「な、お前! こ、ここは!?」

 『青』は叫び、焦った様子で『かまくら』の中を見渡した。 女の触手……の様なものが触れたことで、正気に戻ったらしい。

 「あらあら……」

 女は含み笑いをし、『こたつ』の向かいに座っている『青』へと手を伸ばす。

 「さ、触るなぁ」

 『青』は女の手を払いのけた。

 ヌルリ……

 「な、なんだこいつの手は? ヌルヌルしてやがる!? 『黄』!どこだ!?」

 「お友達なら……後ろに」

 女に言われ、『青』は振り向いた。 『かまくら』の外に『黄』がいて、口をぱくぱくさせながら中に入ろうとしている。

 「おい、助けてくれ!」

 『青』は『黄』に手を差し伸べたが、『かまくら』の入り口から手を出すことができない。 見えない壁があるようだ。

 「閉じ込められた!?」

 『青』は振り向いて女に怒鳴る。

 「ここから出せ!」

 女は手で口元を隠して笑った。

 「外は寒うございますよ」

 「何が寒いだ! だいたいそんな薄着で寒くないのか、お前らは!」

 『青』は、自分の言葉でこの女が小屋の女の仲間だと思い当たった。

 「……そうか、小屋の中にいた女と同じ。 お前も化け物だな!」

 女はくすくすと笑っている。

 「何がおかしい!」

 「恐ろしいのですか?」

 「なに?」

 「殿方が大きな声を出すのは、怖さを隠すためと、聞いたことがあります……あら、震えがきているようですね」

 女の言う通り『青』は震えていた。

 「こ、これは……寒いからだ!」

 『青』の足は相変わらず『こたつ』の中にあって生暖かいのだが、上半身は『こたつ』から出ており、登山着を通して寒さが噛みついて来るかのようだ。 

もっとも、震えは寒さのせいばかりではなかったが。

 「それはそれは……やはり温まっていかれるとよろしいかと」

 からかうような口調で、女は着物の胸元をはだけた。 雪の様に白い肌が、ロウソクの灯りにぬらりと光る。

 「な、何を」

 「くふふ……寒さを感じない様にして差し上げましょう……」

 ヌルリという感じで、女の乳が着物の中からせり出してきた。 どこに入っていたのか首をかしげたくなるような大きさだ。

 ゴクリ……

 『青』は思わずつばを飲み込み、女の乳を見てしまった。 と、桜色の乳首がこちらへと狙いをつけるように動いた。

 ビューッ

 「うわっっぷ」

 二つの乳首から透明な液体が迸り、それが『青』の顔を直撃する。 その液体は『青』の顔を濡らし、胸元へと広がっていく。

 「な、なんだこれは」

 「ふふ……私の体を包んでいる滑りし同じものでございます……ほら、寒さを感じなくなってきませんか?」

 「なに?」

 言われて気が付いた。 さっきまで顔が痛くなるほど寒かったのに、女の乳首から出た液体を浴びた個所は、全く寒さを感じなくなっている。

 「こ、これは凄いな……」

 『青』は思わず自分の顎を撫でた。 滑る液体は生暖かく、肌の上に広がっていくようだ。

 「……」

 顎を撫で、頬を触ってみる。 雪山で吹雪に荒らされた固くなっていた肌が、餅の様に柔らかくなってきていた。

 「ふふ……お気に召しましたか?」

 「ん?……ああ……」

 「触らせていただいてよろしいですか?」

 女が『こたつ』の上に身を乗り出し、手を伸ばしてきた。 『青』はじっとして女の手を待ち受けた。

 ピト……

 白い手が『青』の頬に触れ、体温を測るかのように動きを止めた。 そして、頬の感触を確かめるようにの肌を撫でる。

 「……」

 『青』は女の手に自分の手を重ね、目を軽く閉じた。 女の手が頬を滑っていく感触が心地よい。

 ”……良い心地でしょう……”

 女の声が遠くに聞こえる。

 ”この液体……私どもは『愛油』と呼んでおりますが……これにはほかにもいろいろな効果があります。”

 『青』は目を開く、女が身を乗り出して彼の顔に迫ってきていた。 そのまま彼に口づけしようとする。 『青』そっと目を閉じ、彼女の唇を受け止めた。

 「うっ……」

 ズキンと唇がうずいた。 軽く唇が触れ合っただけなのに、甘くて重い快楽の疼きが脳天を直撃した。

 「ふふ……気持ちよかったですか?」

 「あ……ああ……」

 カクカクと首を縦に振る『青』、女の手と唇にから送り込まれる快感に頭が回らない。

 「愛油を浴びると……そこは性器の様に感じやすく……いえ、性器そのものに変わるのですよ……こんなふうに」

 「なに?……それは……ああ……」

 女の手が彼の胸元に入り込み、愛油をべっとりと塗り付けた。 胸が暖かくなり、感じやすくなってきた。

 「ああっ……」

 「ふふ……たまらないでしょう?……もっと……もっと気持ちよくなって……」

 ズルリと女は着物を脱ぎ捨て、『こたつ』を脇へどかした。 『こたつ』に隠れていた穴……女の秘所が露になる。 そこにはなみなみと愛液、いや愛油が

たまり、『青』の下半身はそこに浸されていた。

 「うぁぁ……」

 もはや『青』は呻くことしかできなかった。 女の秘所に下半身を咥えこまれて身動きできず、上半身は登山着をはぎとられて愛油を塗られ性感を高め

られていく。

 「なぜ……こんなことをする……」

 「まぁ……お強いのですね……ふふ……」

 女は嬉しそうに笑うと、一糸まとわぬ姿になった『青』のを抱きしめた。 ふにゃふにゃと蠢く乳房からは愛油がとめどなく流れ、『青』の胸板をヌルヌルに

している。

 「もちろん子孫を残すためでございます……」

 「……なに?」

 「ふふ……愛油に浸されたあなた様の体は……私どもの雄の生殖器へと変わり……そして私は雌の生殖器そのもの……」

 「か……は……」

 「もう何も考える必要はありません……感じるままに……体の欲するままに……交わりましょう……」

 女に言われるまでもなかった。 すでに『青』の下半身は巨大な男根そのものとなり、女の奥を求めて震え、蠢いている。 そして状版は下半身の付属物と

なりはて、魔性の快楽に蕩けて膨大な精へと変わり始めていた。

 「ああ……蕩ける……」

 「くふふ……快楽に身を任せ……蕩けてしまいなさい……肉も……魂も……私に……くださいまし……」

 熱く囁きながら、女は秘所で『青』を締め上げる。 女の動きに下半身は悶え狂い、上半身へ熱い快感を送り込む。

 「げぼ……どぼ……」

 人語とは思えぬ響きが青の口から洩れ、次の瞬間その体が異様な形にねじくれた。

 「どボッ!」

 ビクンビクンビクン!!

 『青』の上半身が激しく震え、続いて内側へとしぼみ始めた。 女の言う通り、妖の生殖器と化した体は内から溶け。精液となって女の巨大な秘所へと

それを捧げているのだ。

 「ああ……熱い……」

 しぼんでいく『青』の体を抱きしめ、女は天を仰いで絶頂に酔いしれる。

 (気持ちいい……)

 女の中で蕩けながら、『青』も快楽の極みに達していた。 その体は妖の快楽にドロドロに溶け、形を失って妖の秘所へと呑み込まれていく。

 ”きゃぁ”

 ”きたわきた”

 ”こっちよ、こっちにおいで”

 (なんだ?)

 女の中から自分を呼ぶ声がする。 『青』の魂は声のする方にひかれていく。

 キュッ

 何かが自分を捕まえた、と思ったらフワリと甘い感覚が走った。

 (ああ……卵たちだ……卵が精をよんでいるんだ……)

 女の中に無数の卵があり、精になった『青』を呼んでいたのだ。 一つ、また一つと『青』の魂が卵に咥えこまれていく。

 ”捕まえた”

 ”さ、一つになろう”

 ”こっちにも来てぇ”

 現実なのか、夢なのか、『青』の魂は無数の卵たちに愛され、その中へと吸い込まれていった。

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