第二十二話 こたつ

4.『穴』の『中』


 フフッ……

 女は口の端に妖しい笑みを乗せ、二人の間にあったこたつを取り払う。 そこには、おぞましい光景が広がっていた。

 ゾワゾワゾワ……

 『赤』が足を突っ込んでいる穴の中の内壁は真っ赤に充血し、指ほどの太さの触手が生えていた。 そして、いつの間に脱がされたのか、むき出しに

なった『赤』の下半身、そこに何本もの触手が巻きつき、一本は彼のモノを咥えこみ、ゆっくりと蠢いていた。

 「……」

 『赤』は呆然とその光景を見つめ、続いて女の顔へと視線を移した。 女は『赤』をみて妖しく笑った。

 「さぁ……いらして」

 サァ……オイデ……

 女の声を耳にした途端、『赤』の心の中にそのおぞましい穴−−おそらくは女の『秘所』−−に入りたいという欲望が湧き上がってくるのを感じた。

 「あ……あぁ……」

 『赤』はぎくしゃくとした動きで登山着を脱ぎすて、下着を脱いだ。 そして両手で体を持ち上げ『穴』に−−女の『秘所』へ下半身を沈めた。

 
 ズニュゥゥ……

 「うぁぁ……」

 ヌルヌルとした襞と蠢く触手が『赤』の両足を迎え入れ、そして腰のあたりに巻き付いてきた。 ざわざわとした動きに腰から下が包み込まれる。 異質な

触感に一瞬嫌悪感を感じる『赤』。 しかし、それを上回る感覚が『赤』を犯していく。

 「な、なんだ……」

 ヌメヌメとした感触が、肌を通過し体の中に入ってくる。

 「うふふ……」

 女は微笑むと、棒立ちになっている『赤』の上半身に抱きついた。 女の体も、『秘所』同様にヌルヌルしていた。 二人の間で、ヌルヌルした女の乳房が

行き場をなくし、『赤』の胸の上を滑っていく。

 「いかがですか……私の中は……ああ」

 ゾワゾワゾワ……

 興奮しているのか、女の『秘所』の中が蠢き『赤』の下半身を愛撫する。 そしてヌメヌメした感触を、彼の足や腰の中へと送り込んでくる。

 「あ、足が……腰が?……」

 「ふふ……蕩けそうで……よろしいでしょう?」

 女に言われ、『赤』はヌメヌメした感触が心地よいことに気が付いた。 そして、そう認識すると腰が一人でに動き出していた。

 「ああ……いい……いい……ぞ」

 やみくもに腰を揺り動かす『赤』。 肉襞が肌の上を滑っていく感触は、言葉にできぬ心地よさだった。 そして肌に粘りついた快感が、足から肉の中へと

染み込み、彼の下半身を言いようのない快感て満たしていく。

 「蕩けそうだ……」

 「ふふ……私の中に参られた殿方は、皆同じことを……ああ……そこは……」

 女が法悦の表情を見せ、『赤』を抱き寄せた。

 「ここか……ああ……ここか」

 『赤』の足先が、つるりとした肉の壁に触れた。 そこを指先でつま弾くと、女が体を震わせて歓ぶ。 

 (ああ、ここがいいんだな……)

 『赤』は足先で女の胎内を愛撫する。 すると女の体が歓び、肉襞と触手の愛撫で『赤』の体を快感に蕩けさせる。

 「ああっ……ああっ……」

 「くうっ……くあっ……」

 すでに二人の意識はどこかにいき、二人の体だけが歓び、快楽を貪っていた。 それは、あたかも巨大な性器が交わっているかのようだった。

 「あっあっあー……」

 「は……あああ……」

 果てしなく続いていた交わりは、唐突に終わりを迎える。 体の中がすべて流れ出すかのような、激しい絶頂が『赤』を襲う。

 「!」

 体が硬直し、下半身が快感に震える。 男性器だけではない。 女の中にある彼の下半身全てが、絶頂に震えていた。

 「ひぃ……」

 今や『赤』の上半身は付属物に過ぎず、下半身から伝わってくる快感の余波に、ただ震えることしかできなかった。

 
 「……ふう」

 「ひぃ……」

 ようやく絶頂から解放され、女と『赤』はため息をもらした。

 「……ふふ……いかがでした? 私との交わりは」

 女に囁かれ、『赤』は顔を上げて女を見た。

 「凄かった……あんなのは……君はいったい……」

 『赤』の質問に、女は笑みを返す。

 「私は妖でございますよ。 殿方を咥えこみ、交わる……フフ……『秘所』の化け物……フフフフ……」

 女の言葉には、ぞっとするような、どこか冷たい響きがあった。 しかし『赤』はそれを感じ取ることが出来なかった。 女は自分の胸に手を当て、乳を

てのひらにこぼして『赤』に差し出した。

 「さあ、お舐めなさい……」

 サア……オナメ……

 『赤』は素直に女の手を舐める。 不思議な甘さの乳が、舌に染み込んでくる。

 「……甘いな……」

 「ええ……さぁ……」

 女が『赤』に自分の乳房を差し出す。 『赤』は陶然の様に乳首を咥え、軽く吸った。 暖かい乳が体に染み込んでくる。

 チュウ、チュウ、チュウ……

 微かな音だけが小屋の中を満たす。

 「おいしいでしょう……その乳を吸ったあなたは、私のつがいに……男根の妖になるのです」

 ……

 女の恐ろしい言葉にみ『赤』は乳を吸うのを止めようとしない。 顔からは表情が消え、その目は焦点があっていない。

 「フフフ……さぁ……」

 女は『赤』の両頬を挟んで事らを向かせ、その唇を奪った。

 「ふぅっ!?」

 一瞬目を白黒させた『赤』だったが、すぐに忘我の表情になってされるがままになる。

 ふあっ……

 女唇を離すと、『赤』がため息をついた。

 「凄い……口づけだ……」

 「うふふ……私が凄いのではありませんよ。 貴方の体がそう感じるように変わったのです。 ほら」

 女が『赤』の唇を指でなぞると、『赤』はうっとりとされるがままになっている。

 「唇が……こんなに感じるなんて……」

 「うふふ、貴方はもはや人の形をしたおおきな男根……ほら……」

 女が『赤』を抱きしめると、彼の体を言いようのない快感が支配する。

 「あああ……」

 「気持ちいいでしょう? さぁ、感じてくださいまし……そして、私にあなたの精を捧げて……」

 「ああ……いいとも……」

 うつろな表情で応え、『赤』は女の『秘所』にはまったままの下半身を揺り動かした。

 「あん……」

 「うぁぉう……」

 下半身から伝わってくる甘い痺れに上半身が反応した。

 「と、蕩けるう……」

 『赤』の体を満たす快感に、体の芯が蕩けていく、ドロドロと気持ちよく蕩けていく。

 「ええ、そうですとも……さぁ……こぼしてはもったいない……私の中へいらして……」

 女の『秘所』の動きが変わった。 襞が『赤』に纏いつき、中へ引きずり込もうとしている。 『赤』は逆らうそぶりも見せず、腰から上を揺り動かしながら、

体を女の『秘所』へと沈めていく。

 「なんて暖かくて……いい気持ちだ……ああ……蕩ける……」

 「蕩けなさい……気持ちよーく……とろとろに……」

 ズブズフと音を立てながら『赤』の体が女の『秘所』へと沈んでいく。

 「暖かい……いい気持ち……あぅ……」

 『赤』は全身を女の秘所へと沈め、首だけ出して愉悦の声を上げた。 体がドロリとしたもので満たされ、それが出て行くのが判る。

 「あっあっあー……」

 「あふぅ……」

 『赤』が呻くのと同時に、女も声を上げた。 中で『赤』が放ったのか、それとも溶けた『赤』の体が女の感じる所を刺激したのだろうか、

 「ああ……もっと……もっと中へ……」

 「ああ……いくとも……」

 呻くように言って『赤』の頭が女の『秘所』に沈んだ。

 プハッ……

 『秘所』の口が息を漏らす様に開き、すぐに閉じた。 そして『赤』を呑み込んだ女は、腕で胸を抱くようにして、体を震わせて喘ぎ続ける。

 「ああ……そう……そうよ……もっと……もっと……」

 ガタリ……

 土間の方で音がした。 女がそちらを見ると、恐怖の表情を浮かべた『青』と『黄』がこちらを見ていた。

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