第二十一話 骨喰の宿

10.赤鉄の宿 その陸


  ヌチャリ、ヌチャリ、ヌチャリ……

 湯女達は愛しそうに兄貴に擦りより、その体を自分たちの中へと取り込もうとする。 赤い体は『柔らかい』を通り越し、彼の体が潜り込むときもほとんど

抵抗は感じない。 しかし中に入ってしまうと、しっとりとした優しい感触で纏わりついてきて、離れようとせず、外へ出て行こうとすると、柔らかな粘り気で彼を

引き留めようとする。

 ”いかないで……”

 ”ここにいて……”

 ”もっと感じて……”

 纏わりつく湯女の肉が、兄貴の体に囁いてくる。

 ’ああ……感じる……もっと……’

 兄貴の体がふるふると震え、湯女に囁き返した。

 ”うれしい……”

 ”さぁ……”

 ”よくしてあげる……”

 甘い声で囁きながら、湯女達は体を震わせ、中の兄貴の体を愛撫する。 これまでに以上に甘く、優しく。

 「あ……」

 湯女達の愛撫、その蕩けそうな心地よさに、兄貴は吐息を漏らした。 

 「いい気持ちだ……まるで……女の肉に浸っているみたいだ……」

 「くふふ……そうですとも……」

 「この世に……ただ一つの……」

 「女の肉の温泉……」

 そう言って、湯女達は笑いさざめきながら、彼の体を愛撫し続ける。 その感触は肌に沁みとおり、次第に彼の肉へと染み込んで来るかのようだった。

 「ああ……蕩けそう……」

 「ええ……」

 「そろそろ……」

 「溶け合いましょう……」

 湯女達の言葉に兄貴は目を見開き、自分の体を見直した。

 「!?」

 なんということか。 湯女達の肌と同じ色に染められた彼の体と、それに纏わりつく湯女達の体が、あちこちで一つに溶けあい始めていた。 が、驚きは

一瞬だった。

 「あ……う……」

 つながったところから、異質の快感が体に流れ込んでくる。 熱い男の肌と体を重ねている快感、男のモノを体の奥に体に受け入れ、その熱い精を受け

止める衝撃、そして……人の男と一つになりたいという湯女の欲望……湯女達の感じているものが、兄貴の体へと流れ込んできた。

 「あ……あぁぁ」

 「お客様を感じる……」

 「ああ……私たちに愛でられると……こんなに良いのですね……」

 兄貴が湯女達の快感を感じているように、湯女達もまた、彼の感じているものを受け止めていた。

 「いい……」

 「ああ……」

 喘ぎながら、湯女達は兄貴の肌を余すことなく包み込む。 触れ合う肌がひとつに溶けあい、そこから互いの快感が流れ込む。

 「はぁ……自分が……なくなっていきそうだ……」

 湯女達と体が溶け合い感覚が一つになり、兄貴は自分がどうなっているのか判らなくなってきた。

 「お客様頑張って……」

 からかうように湯女達が励ます。

 「もっとよくなりましょう……」

 「うは……うぁ……はぁ……」

 兄貴は、訳が分からないまま手足を動かし、腰を突き入れる。 しかし、夢の中でもがいているかの様で、自分が動いているのか、まだ体があるのかすら

わからなかった。

 「ああ……」

 「そのようにされては……」

 兄貴の動きが湯女達を刺激したらしく、熱い喘ぎを漏らす。 もっとも、その快感は兄貴自身にも伝わってきていた。

 「ああ……中が熱い……ああん……おっぱいが……気持ちいい……」

 「お客様……それは私のおっぱい……」

 「ああん……柔らかいものが……絡みついて……」

 「そ、それは……俺のモノだ……」

 だんだん訳が分からなくなってくる。 そして湯女達と兄貴は一つの赤い塊になり、互いを貪りながら湯の中でぐにゅぐにゅといつまでも蠢いていた。

 
 「……ん」

 兄貴は目を開ける。 目の前に湯女の赤い顔がある。

 「?」

 きょろきょろと辺りを見回すと、右と左にも湯女の顔。 視線を下に向けると、見慣れた自分の体がある。 ただし、その体の色は湯女達と同じ色に染まった

ままだ。

 「今のは……?」

 「くふふ……いかがでしたか?」

 「私たちと一つになる快感は……」

 「良かったでしょう……」

 湯女達が妖しく笑う。

 「……」

 黙り込んだ兄貴にしなだれかかりながら、湯女が囁いてきた。

 「このまま……完全に一つになりましょう」

 「一つに?」 うつろな声で兄貴が問い返す。

 「ええ、お客様……」

 「私たちは……男の方と……」

 「一つに……溶け合いたいのです……」

 「こうして……」

 囁きながら、湯女達が兄貴の体を撫でまわす。 そこから、甘く蕩けるような感覚が、そして湯女達の欲望が伝わってくる。

 「あ……」

 兄貴の中にも、彼女達と一つに、溶けあいいたいという欲望が湧き上がってくる。 それは、湯女達の欲望なのかもしれなかったが。

 「ひ、一つに……」

 「溶け合って……」

 「混ざってしまいましょう……」

 正面の湯女が、湯の中で足を開いた。 赤く色づいた湯女の秘所が口を開けて兄貴を誘っている。

 「おいでなさいませ……」

 「私たちと交わって……」

 「一つになってしまいましょう……」

 背後から二人の湯女が抱き着き、兄貴をそっと押しやる。 ほとんど抵抗せずに、兄貴は屹立したモノを湯女の胎内へと沈めた。

 「う……ぅぅぅ……」

 「あ……ぁぁ……」

 文字通り蕩けるような快感が、繋がったところから湧き上がる。 

 「お客様……さぁ……もっと奥に……蕩けさせて……そして二度と離しません……」

 湯女達に体を預ければ、跡形もなく蕩かされて戻ってくることはできない。 それが判っていながら、兄貴は抗うことが出来なかった。

 「ああ……蕩ける……もっと……蕩けさせてくれ……」

 熱に浮かされた様に呟きながら、兄貴は湯女の中へ、中へとモノを沈めていく゜

 ズブッ、ズブッ、ズブブッ……

 赤い秘所は柔らかく広がりながら、兄貴の腰を迎え入れ、泥沼のようなそこは、兄貴を奥へ奥へと迎え入れる。

 「くぅぅぅ……」

 うめき声をあげて、兄貴がブルブルっと震えた。

 ブビュルルル……

 二人の交わった場所から異様な音が響いてきた。 兄貴のモノが精を、あるいは別の何かを放った音だった。

 「ああ……お客様……」

 「うう……もっと……」

 間髪を入れずに動き出す湯女と兄貴。 その二人を励ますかのように、残る二人の湯女が抱き着き、体を舐め、撫でさする。

 「ふぁ……」

 「たまりません……」

 「ああ……」

 「溶けちゃいそう……」

 口々に悦楽の喘ぎを漏らしながら、兄貴と三人の湯女達は妖しい交わりの深みへ、身を沈めていった。

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