第二十一話 骨喰の宿

9.赤鉄の宿 その伍


 「さぁ、その立派なものを……」

 「私に……」

 「私たちに……」

 湯女ちちの誘いの声は、脳天が痺れるほど甘い。 誘われるまま兄貴は、下半身がはまり込んでいる秘所の中で腰を前後させた。

 フニャリ……

 柔らかな壁に男根の先端が触れた。 そのままでたらめに腰を動かして、先端が柔らかな壁をつつき、擦りあげた。

 「あぁ……」

 「たまりません……」

 二人の湯女が喘ぎ声を漏らし、兄貴にしがみつく。 それと前後して、兄貴は自分の男根が肉襞の壁に深々と突き刺さるのを感じた。

 「うお?……あ、ぁぁ」

 壁に突き立った男根に、緩やかな肉が巻き付く感触があった。 兄貴の腰が自然に反応して前後に動いた。

 「ううっ、中にもう一つのアレがあるみてぇだ……」

 「ええ……」

 「そうですとも……ほら……」

 湯女たちはくすくすと笑い、一人が兄貴の肩を抱いて、その唇を奪った。 と、その赤い顔がグニャリと動いた。 次の瞬間、兄貴は湯女の足の間に顔を

突っ込み、その秘所を舌でえぐっていた。

 「おおおっ!? これはどうなってるんだ?」

 「私たちの体は自由自在……」

 「最初の間は人の形をしていますが……ふふっ……」

 「その気になれば、どんな形にも変わりますの。 お客様のお望みのままに……」

 「そうなのか? ああ……」

 兄貴は呻き声を漏らした。 話をしている間にも、腰は勝手に動いて湯女の中をえぐっていた。 男根に巻き付く秘所の動きに、腰から下が支配されている

かのようだ。

 「た、たまらねぇ……」

 止めよとしても、腰は動き続ける。 不思議なことに、男根が高ぶっていくは感じるのに達する気配がない。 それでいてもどかしさも感じない。 

 「なんて……いい気持ちなんだ……」

 湯女達の言う通り、この湯、いや湯女の秘所にいつまでも身を浸していたい。 そんな気分になってくる。

 
 「では、もっと……」

 「よくしてさし上げましょう……」

 そう言いながら、湯女達は兄貴に体を摺り寄せる。 先ほど湯面に体をさらしていた一人も、他の二人と一つに戻り、今度は三人の女の上体が兄貴に

抱き着いてきた。 そして、左右の湯女が彼の手を自分たちの胸へと誘う。

 「……?」

 兄貴は、湯女の胸を手で揉みしだきながら違和感を感じた。 さっきは指がめり込むほど柔らかかった乳房だが、いまは弾力があり少し固くなったような

気がする。

 「ああ、そのまま揉んで……」

 「もっと……もっと」

 兄貴の指が蜘蛛のように蠢いて湯女の乳房を揉みしだき、乳首を指先で転がす。 と、その感触がだんだん柔らかくなり、先ほどの様に指がめり込み始めた。

 「なんか、柔らかくなってきたぞ……」

 「ええ、ああ……」

 「男の人は、気が入ってくると固くなるようですが……私たちは……」

 「気持ちよくなってくるほどに、柔らかくなります……ほら……」

 最初はフニフニとした感じだった乳房が次第に柔らかくなり、ニュルニュルと泥に手を突っ込んでいるかのようだ。

 「こいつは気色いいぞ。 ん……」

 正面の湯女が身を乗り出し、その胸に兄貴の頭を迎えた。 

 ニュルリ……

 泥に顔を突っ込んだような感触がして、彼の顔は湯女の胸に収まった。 それでいて息が苦しくないのは、湯女が隙間を開けていてくれるからなのだろう。

 「ふむっ!……ふんふん!!」

 鼻息を荒くして、兄貴は湯女の胸に舌を突き入れた。 舌先が柔らかくなった湯女の胸に深々と突き刺さり、湯女が悶える。

 チュゥ

 胸を吸うと、口の中に乳房が、そして乳首が滑り込んでくる。 舌先で乳首の形をなぞっていくと、かすかな甘みが口の中に広がる。

 「ああ……」

 「もっと吸ってくださいまし……」

 乳首を吸われていない湯女達が喘ぐところを見ると、三人は互いに感覚を共有しているのだろう。 あるいは、三人に見えて実は一人なのかもしれなかった。

 「ふふ……気になりますか?」

 頭の上から湯女の声がする。

 (あれ? 俺、口に出したっけ?)

 自分の考えを口に出されたことで、兄貴の頭の片隅に微かな疑念が芽生えた。

 「すぐにわかりますよ……ああ……」

 ポトリ……ポトリ……

 (ん?)

 背中に何か落ちてきたような感じがした。 と言っても、湯の中で女達と戯れているのだ。 湯しぶきが飛んできても不思議ではない。

 ポトリ……ポトリ……

 今度は肩のあたりだ。 兄貴は顔を上に向けた。 乳房の間からこちらを見ている湯女の顔が見えた。 その顔から、滴の様なものがたれてくる。

 「お前……それは汗をかいているのか?」

 「いえ……これは……」

 「お客様に、たいそう可愛がっていただいたので……」

 「体が蕩けだしたのですわ……」

 「へ?」

 よく見ると、湯女の顔から滴っている滴は、水滴の様な粒ではなく、細い糸の様に赤い流れが落ちてきて、それが背中や肩にたれていたのだった。

 「……」

 兄貴は手の平で『滴』を受けてみた。 『滴』は溜まることなく広がり、手を赤く染めていく。

 「……」

 反対の手で赤くなった手を触ってみる。 なんだか、妙な感じがする。

 「ふふっ……」

 右の湯女が笑うと、彼女は自分の手で自分の胸に触れた。

 「え……?」

 不思議なことに、兄貴は自分の赤く染まった手の平に乳房が触れるのを覚えた。

 「こ、これは……」

 「お客様を……」

 「私たちで……」

 「包んで差し上げているのです……」

 兄貴は湯女達の言葉が理解できず呆然とする。

 「何も心配はいりません……」

 「今感じた通り。 私たちと……」

 「同じ感覚を味わうことができるのですよ……ふふっ……」

 そう言うと、湯女達は喘ぎ声をあげながら兄貴の体に身を摺り寄せる。 

 「うおぅ……」

 『体が蕩けだした』と言うのは本当の様だった。 彼女たちの体は、乳房だけでなく全身がおそろしく柔らかくなっており、摺り寄せられた体に兄貴の体が

深々と潜り込んだ。

 「うおっ?」

 「ああ、お客様……」

 ヌチャヌチャと音を立て、異形の妖と化していく湯女達。 その赤い異形の塊のそこかしこに、兄貴の体が見え隠れしている。

 「ああっ」

 彼の肌に触れるのは確かに湯女達、女の肌の感触だ。 しかしその柔らかさは、コンニャクを通り越し、柔らかい泥にずっぼりとはまり込んだかのよう。 

 「ああっ……あああっ……」

 『生きた女の泥』は兄貴の体を余すことなく包み込み、妖しい快感の中で彼を溺れさせた。 その間にも、彼の肌は湯女達の肌の色へと染め変えられていく。

 「ああ……」

 「気持ちよいでしょう?お客様……」

 「私たちもとっても……」

 「良い心地……」

 風呂の中で蠢く艶めかしい『赤い女の泥』。 それに包まれた兄貴は、魔性の快楽に身も心も奪われていった。

 
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