第二十話 新しいママ

11.『ボク』は


 ”あなたは誰……よくご覧なさい”

 『新しいママ』はそう言うと、『ボク』の顔を手で挟みドレッサーの方を見せた。 鏡の中から呆けた表情の裸の女の人が、こちらを見ている。 見覚えの

ない顔だ。

 ’誰?……’

 小首をかしげると、鏡の中の女の人が首をかしげた。

 ’……真似してる……’

 頭がぼんやりして、考えがまとまらない。 体もなんだか変な感じだが、不快いではない。 『ボク』は『新しいママ』に視線を向けた。

 ’誰?……’

 『ボク』が尋ねると『新しいママ』はにっこりと微笑んだ。

 ”良く判らないのね……フフフ……それでいいのよ……”

 『新しいママ』はボクの頭を胸に抱え込んだ 。 ふんわりとしたいい匂いのするおっぱいが顔を覆う。

 ”舐めて……”

 『新しいママ』の乳首が目の前にあった。 『ボク』は言われるままに『新しいママ』の乳首を咥え、舌先で舐めた。

 ”うふ……くすぐったいわ……あぁ……”

 口の中に薄く甘い味が広がる。 そして……

 ’あぁっ?……’

 頭がくらっとして、部屋が揺れた。 いや、揺れたのはボクの体の様だった。

 ”どうしたの?”

 ’なんだかめまいがし……したの……’

 応えながら『ボク』は自分の体を見た。 スラリと伸びた足がくまれ、黒い陰りが視界に入る。

 ’変なの……『ボク』別の人になっている……’

 呟く『ボク』を『新しいママ』が優しく撫でる。

 ”まぁ、それは大変ね。 今日はもう休む?”

 ’う……’

 応えかけて舌が凍り付いた。 体の中からもっと続けたいという思いが湧き上がってくる。

 ’ううん……まだ続ける。’

 『ボク』は『新しいママ』の乳首に舐り付き、音を立ててそれを吸った。

 
 ”ああっ……そう……うまいわ……”

 『新しいママ』は『ボク』の頭を抱え、のけ反ってよがっている。 

 ’そうね……『ママ』の乳首も性感帯だから……’

 口の中で『ボク』はつぶやき、続いて別の言葉をつぶやく。

 ’……どうしてそんなことが判るんだろう……’

 そう言いながらも『ボク』は、いや『ボク』の体は『新しママ』の乳首から口を離さない。 乳首を舐り、舌先で舐めあげ、強く吸う。 いつの間にか主導権は

『新しいママ』から『ボク』に移っている。

 ”お、お願い……”

 『新しいママ』が、自分の足を『ボク』の足に絡める。 『ボク』は『新しいママ』の足の間に自分の足を差し入れた。 『ボク』は自分の秘所に『新しいママ』の

秘所が密着するのを感じた。

 ”あうっ……”

 ’くうっ……’

 グチャグチャと音を立てて、『ボク』と『新しいママ』の秘所が絡み合う。 熱い快感が沸き起こり、『ボク』の頭の中が真っ白になる。

 ’ふうっ……ふふっ……ふふふっ……’

 口元から笑い声が漏れた。 何故だか判らないが、すごく嬉しい。 笑いながら『ボク』は『新しいママ』のおっぱいを吸う。 お乳が口の中に溢れ、体に

染み込み、そして頭の中へと広がってくる。

 クラリ……

 ’あう……’

 まためまいがし、すぐに収まる。 『ボク』は『新しいママ』のお尻を抱え込んだ。

 ’あれ……’

 さっきまであった尻尾の感触がない。 よく見ると、『新しいママ』の背中に合った翼も、頭に生えていた角もなくなっている。

 ’ふふっ……ということは……’

 『ボク』は自分のお尻に触れてみた。 ふっくらとしたお尻にでっぱりがあり、それがどんどん伸びている。 『ボク』に尻尾が生えているのだ。

 ’んふ……’

 お尻に神経を集中する。 生えたばかりの尻尾がぶんぶんと動くのが判った。 少しばかり動かすと、自由に動かせるようになった。

 ’ふふっ…じゃあママ……今度は『ボク』がママを気持ちよくしてあげるわ……’

 『ボク』はママと組んでいた足をほどく。 ママが薄く目を開けて、口を動かした。 『ボク』は構わずに自分の尻尾の先をママの秘所に押し当てる。

 ”ひっ……ああっ……”

 ママが身をよじった。『ボク』は尻尾の先からママの秘所に入っていく。

 ”だ、だめぇ……”

 ’駄目じゃないわ、ママ’

 『ボク』は笑いを含んだ声で言うと、尻尾の先でママの奥をつつく。

 ”ひ……あ……ああ……”

 ’奥をこうされると気持ちいいでしょ?ママ’

 ”いい、いいの……だから、やめないで……”

 ’もちろんやめないわ……だから、最後までお乳を出して……’

 ”ヒイッ……”
 
 ママのおっぱいから乳が出てくる。 さっきまでの勢いはないが、まだ残っているはずた。

 ’もっとよ……もっとだして……’

 角と翼と尻尾かはえた『ボク』はママを責めてお乳を出させ、それを飲み下す。 このお乳が『ボク』の半身なの、それがもう『ボク』には判っていたの。

 ’ふふふっ……’

 楽しい、嬉しい、気持ちいい。 こんなことがこの世にあったなんて。 このお乳が沁みとおった体は、今の『ボク』みたいに女として完成し、角と羽と尻尾が

備わるわ。 でもそれは付帯的なこと。 本当に凄いのはこの体で性の交わりを行うと、考えられない暗い気持ちが良くなるという事なの。 そして……

 ”いい……気持ちよくていっちゃいそう……”

 ’ええ、ママ 判っているわ……ママを、ママの命を全部吸ってあげる……’

 今の『ボク』はさっきまでとは別の生き物なの。 こうして快楽を与え、代わりに命をすべて吸い取る。 最初は抵抗する人もいるけれど、最後は皆自分から

命を差し出す。 これはそれほどまでにたまらない快感なのよ。

 
 「ふふっ……あら……」

 さっきまで感じていた、夢を見ているような違和感が消えたわ。 『ボク』、いいえこの言い方はもうおかしいわね。 私はママの部屋にいて、ママの秘所に

尻尾を差し込んでる。 ママはすごく気持ちよさそうにしている。 うらやましいくらいだわ。

 「ふふっ……あせることはないわね……私が次の人に受け継ぐとき……私も気持ちよくしてもらえるんだから」

 一言呟いて、私はママの奥に尻尾を思いっきり突き立てた。 ママはかっと目を開き、意味不明の叫びをあげたわ。

 「…………!!」

 そして首をたれて、ベッドの上で息絶えたわ。 これも腹上死というのかしら。

 「……なんてことを……わたしはなんてものを解き放って……」

 苦しそうな声に視線を向けると、パパが床に倒れたまま私を見て涙を流していた。

 「ああ、パパ……」

 私の心に、パパに対する哀れみが広がってきた。 可哀想なパパ、貴方が何をしたのか知らないけど、きっとそのことで苦しんでいるのね。

 私はベッドからおりると、尻尾をゆるゆると振りながらパパへと近づいて行った。

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 「……これで話は終わりです」

 滝はゴクリとのどを鳴らし、少年を見直した。

 「そ、そうか。 しかし、今の話が君の事だったとすると、話が合わないな。 何しろ君は少年、男の子なんだし」

 「うんそーだ」 志戸も相槌を打つ。

 「そうですね……でも考えてくださいよ」

 そう言って少年は、着ていたパーカーの"度を広げ頭からすっぽりとかぶって、うつむいた。

 「か、考えるって何を」

 滝が聞き返す。

 「角や尻尾が出し入れできるんですよ……別人に化けることが出来ても……」

 少年はゆっくりと頭を上げる。 フードの下から覗く唇は、いつの間にか真っ赤に染まっていた。

 「……不思議じゃないんじゃなくて?」

 フードの下から覗くのは、蠱惑的な瞳をした黒髪の美女の顔だった。

 「……そう、私が『新しいママ』よ」

 互助が笑い出す。 ねっとりとした、魅惑的な、それでいて耳を塞ぎたくなるような声だった。

 声にあおられたかのようにロウソクの炎が揺らめいて、消えた。

<第二十話 新しいママ 終>

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