第十九話 ランプのせい

10.虜


 壁を背にして床に腰を下ろし足を投げ出した格好で、『彼女』自分の股間をゆっくりと撫でている触手を眺めている。

 「か、感じるって……なんのこと?」

 ”ええ……”

 ”ふふ……”

 ジーニーたちはクスクスと笑っている。 その間も、触手はウネウネと動き『彼女』の『蕾』をくすぐり続けている。

 ク……パッ

 股間に違和感があり、続いて太腿が濡れたような感じがした。

 「な、なに?」

 ”ほら……感じるでしょう……”

 ”『女』が目を覚ましのを……”

 『彼女』は目を見開き、おずおずと自分の股間に手を伸ばす。 『男』の大事なものが影も形もなくなっているのは予想済みだったが……

 クチュ

 「ひっ!」

 手に触れたのは淫らに濡れた花弁。 それが自分の指を咥えこもうとしたのだ。

 「こ、こんな……」

 ”感じたんですもの……”

 ”濡れて……開いて……当然ですよ……ご主人様……”

 ベッドの上のジーニーたちが囁くと、二人から伸びた触手がその意を受けて、『彼女』の濡れた花弁へにじり寄っていく。

 「い、いや……あ……」

 赤い半透明の触手がそろりと花弁を撫でまわすと『彼女』の体がビクリと震えた。 触手は花弁に中央に走る溝を撫でるように這い、何度も往復する。

 「なに……あ……」

 『彼女』はじんわりと花弁が暖かくなっていくのを感じ、それと共に触手が、いや彼女の花弁の奥から熱いものが湧き出てくるのを感じた。

 「い……いや……」

 ”嫌じゃないでしょう……”

 ”体は……喜んでいますよ……”

 ジーニーたちの言う通り、『彼女』の花弁はヒクヒクと震え、暖かい愛の滴で触手を濡らしている。 まるで、触手を誘うかのように。

 「ち、違う……ああっ……」

 花弁が震えるたびに、甘酸っぱく暖かな波が体に広がってくる。 『彼女』はそこから意識を反らそうと試みたが、自分の花弁から湧き上がってくる暖かい

快感に心がからめとられていく。

 「ああ……引きずり込まれそう……」

 ”当然ですよ……ご主人様……”

 ”男の体しか知らないんでしょう? 女の体をの快感に……逆らえるわけがありませんよ……フフフ……もっと……よくしてあげますから……”

 ジーニーたちはそう言うと、ベッドの上からむくりと起き上がった。 そのまま立ち上がるかと思ったが、体の半ばが崩れたままベッドの上から床へと流れ落ち

ゆっくりとこちらへ向かってくる。

 「……」

 『彼女』は手で這いずって逃げようとしたが、腕の力が入らないことに気が付いて愕然とした。 その間にジーニーたちは、彼女の足元までやってくる。

 「こ、こないで……」

 ”ご主人様……口ではそう言っていますけど……”

 ”下のお口は別の様ですよ……”

 使い古されたセリフだ、などと考える余裕があったのは一瞬だった。 溶け崩れた赤いゼリーからオブジェの様に突き出た赤い女の腕が、『彼女』の蕾に

そっと触れる。

 「ああ……」

 熱い快感に、思わずため息が漏れた。 その間にも、花弁の間で蠢いていた触手が、じわり、じわりと一寸刻みに花弁の奥に潜り込んでくる。

 「ああ……入って……くる……」

 ”ご主人様……さぁ感じてください……”

 ”中に入ってくるのは……いやですか?……”

 「なにを……」

 ばかなことを、と思い触手の動きに気を向けたのが失敗だった。

 「……ああ……」

 体の中に入ってくる柔らかな触手の動きは、想像を超えたエクスタシィだった。 自分の中に生まれたばかりの女、その襞の一枚一枚が、優しく撫でられる

ごとに女に目覚め、熱く濡れてくるのが判る。

 「こんな……」

 ”判るでしょう……体が女として目覚めてくるのが……”

 ”たまらないでしょう……ご主人様……女に変わるのは……最高に気持ちいいですから……”

 「ええ……たまらない……」

 ジーニーたちの官能的な囁きを、『彼女』は夢うつつで肯定してしまう。 意識が薄桃色もの靄に包まれ、思考がままならなくなってきた。

 「……あ……ああっ!?」

 突然、お腹の中に熱いものが突き上げてきた。 衝撃に、目を見開く彼女。

 ”ふふ……ここがご主人様の……”

 ”聖域……”

 ジーニーたちの声が遠くに聞こえる。 お腹の中で、ヌルヌルとした熱いものが蠢くのが判る。 一瞬感じた生理的な嫌悪感が、次の瞬間熱い快感の波と

なって『彼女』を襲う。

 「なに……これ……こんなの……」

 ”ご主人様……”

 ”大丈夫……優しくしてあげますから……”

 ジーニーたちが彼女の背後に回り込みを、壁との間に割って入った。 赤いゼリーに半身を埋めた格好で『彼女』体の中の触手の愛撫に悶える。

 「ふぅっ……ああっ……」

 息を荒げ、腕や足を動かす『彼女』。 触手の生み出す快感に体が付いてこない。

 ”ワーヒド、ご主人様がよくないようよ……

 ”イスナーニ……ご主人様を導いてあげて……”

 ジーニー・イスナーニが『彼女』耳をそっと咥えた。 丸めた舌が、耳の中にヌルリし這い込み……『彼女』とイスナーニが繋がる。

 (ああ……熱い……ああっ)

 ”ああ、ご主人様……初めてなのでなれていなかったのですね……ワーヒド、もっとゆっくりと……”

 ”すみませんご主人様……”

 『彼女』の中でうねっていた触手が動きを沈め、怒涛の様な快感の波がさざ波のように緩やかになった。

 「あ……はぁ……」

 ため息をついた『彼女』の唇を、ジーニー・ワーヒドが奪った。

 「んむ……」

 意識が朦朧としていた『彼女』は。粘りつく様なワーヒドの口づけを拒むことが出来なかった。 なまめかしい赤い舌が、二人の口腔で絡み合う。

 ”ワーヒド……ずるい……”

 ”ふふ、ごめんなさい……イスナーニ?”

 ”ん……そこ……舌のうらを……もう少しゆっくり……”

 「ん……ん……」

 二人の赤い女は体の反応を確かめながら、内と外から『彼女』をじっくりと、時間をかけて愛した…… 


 「はぁ……ああん……」

 『彼』が『彼女』に変わってからかなりの時間が経過した。 もはやその肉体は完全な女と変わり、その心だけはかろうじて『彼』のままだった。 しかし……

 「はぁ……ジーニー……もっと……」

 ”ふふ……ご主人様……もうすっかり私たちの虜ですね……”

 ”ではまいりましょう……”

 「あふ……どこへ?」

 ”お風呂場へ……そこで私たちに浸らせてあげます……”

 「ジーニーの……お風呂……あは……素敵……」

 ”そして……私たちと……”

 ”一つになりましょう……”

 ジーニーの言葉を聞いた『彼女』の心に、期待と喜びが沸き起こる。 ジーニーの言う通り、『彼女』はジーニーの虜だった。
 
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