第十九話 ランプのせい

8.変化


 "きて……"

 ワーヒドがベッドに横たわり腕を広げた。 赤一色のその姿は食虫花を連想させる。

 「ああ」

 短く答え、男はワーヒドの腕の中に体を滑り込ませた。 何度となく味わた、弾力に富んだゼリーでできた女体が、彼を捕まえる。

 ”私たちみたいに……”

 ”楽しみたいのでしょう……”

 イスナーニが彼の耳元で囁きながら、かれに覆いかぶさって来た。

 「ああ」

 もう一度短い答えを返し、かれはワーヒドの唇に、自分の唇を重ねた。

 ”では……”

 ”私たちに……おまかせを……”

 呟きながら、二人のジーニーはゆっくりと体を揺らした。 二つの赤い女体が、間に捕らえた男の体を優しくくすぐる。 まどろみにも似た不思議な陶酔感が

ゆるゆると湧き上がってくる。


 ”さぁ……”

 下のワーヒドが胸を持ち上げ、かれの口元へ乳首を宛がう。 彼はその動きに応え、赤い乳首を唇の端で捕らえて軽く吸う。

 チュ…チュ……

 微かな甘みが口の中に広がり、かりはその甘みを飲み下した。

 フワ……

 「お……」

 彼は、体が軽くなったような不思議な感覚を覚えた。 体だけではない、頭のなかがフワフワと軽くなっていくような気がする。

 「なんだか……いい気分だ……」

 ”ふふ……お気に召しましたか?……”

 ”遠慮なさらずに……たんと召し上がれ……”

 「ああ……」

 男はワーヒドの胸に口づけし、再びそれを吸い始めた、ゆっくりと……舐めるように……

 ”ああ……ご主人様……”

 ”素敵です……その優しい動き……”

 いつもならば、女を貪るように組み敷き、情熱をぶつけるのが男の好みだった。 しかし前の晩激しく楽しんだせいか、いまは激しく動く気がしなかった。

 チュゥ……チュウ……チュウ……

 ヌル……ヌル……ヌル……

 ベッドの上で三人は一つの塊になり、静かに蠢き続ける。


 フワリ……フワリ……

 「ああ……いい気分だ……」

 ゆっくりした動きでも、確実に快感は高まって来ていた。 甘酸っぱいものが、体の中を満たしていくような心地よさ。 いつもの、腰が熱くたぎる荒々しい

快感とは違い、優しく漂うよような、いつまでも浸っていたくなるような、そんな快感の中に男はいた。

 ”ああ……ご主人様……”

 ”もっと……感じて……”

 二人のジーニーは、半ば溶け崩れて一体化しながら男を包み込んでいる。 彼の目の前には、ジーニーの顔、乳、女性の神秘が入れ替わりで現れては

彼を求め、彼は彼女たちの求めに応じ、優しくそれを愛した。 彼に愛されると、ジニーたちはさざ波の様に身を震わせて喜び、その喜びの動きが彼にさらなる

快楽をもたらした。

 「ああ……」

 ”ああ……”

 ”ああ……”

 ゆるゆると動いていた三人は、誰からともなく高みに上り詰め、果てた。 男のモノが、甘酸っぱい快感にヒクヒクと震える。

 ヒクリ……ヒクッ……ヒクッ……ヒクッ……ヒクッ……

 楽しみが長引いたためか、彼のモノは静かに蠢いて、ゆっくりと精を吐き出す。 いつ果てるともしれぬ動きで、それは快感に震え続けた。


 「……ん」

 ふと気が付くと、彼はベッドに直に寝ていた。 ワーヒドとイスナーニはかれの両脇に横たわり、彼の体を撫でたり、甘えるようにすり寄ったりしている。

 ”ご主人様……?”

 ”いかがでしたか……”

 「ああ……とっても……よかった……」

 応えながら、男は自分の声をひどく遠くに聞いていた。 夢の中をさ迷っているかのように、現実感が希薄になっている。

 ヌルリ……

 ワーヒドの手が彼の胸を滑った。 ヌルヌルの掌の感覚が胸に心地よい。 

 「ふぅ……ん?」

 体を起こそうとして、男は違和感を覚えた。 体から力が抜けて、重く感じる。 それに、体の節々がいつもと微妙に違うよな気がする。

 「……?」

 胸に手をやってみると、わずかに膨らんでいるような気がした。 ジーニーたちを交互にみやると、クスクスと笑っている。

 「……何か、変な気がするんだが……」

 疑問を口にすると、ジーニーたちが驚くべき答えを返してきた。

 ”お気づきになりましたか?……”

 ”ご主人様は……ご主人様の体は女の体に変わり始めているのです……”

 「な!?」

 男の頭の中に、驚愕と怒り、激しい感情が沸き起こり……あっという間に鎮静化した。 あとには、なぜそうなったのかという疑問だけが残る。

 「……そうなのか? 何故、俺の体は女性化しているんだ?」

 ”先ほど召し上がられました、私達の乳……”

 ”おれには、ご主人様を女性に……それも、とびきりの女性に変える効果があるのです……ふふふ……”

 とんでもないことを言い出したジーニー達に、おとこは怒りを爆発させ……ようとしたが、あっという間に心は平静になる。

 「そうだったのか……しかし、なぜそんなことを?」

 ”それは……”

 ”とても気持ちいいからです……女になるのが……”

 そう言いながら、イスナーニが彼のモノを手で包み込み、ヤワヤワと揉み始めた。

 「あ……」

 彼自身に、あの府甘酸っぱい快感が蘇ってくる。 イスナーニの手は巧みに動き、その半透明の手を透かして、彼のモノが悶えている様子が見えた。

 「イ……イスナーニ……」

 ”ふふ……気持ちいいでしょう?”

 男はこっくりと頷いた。 イスナーニの手の中で、自分の魂が弄ばれているような錯覚すら覚える。

 「ああっ……」

 ”ふふふふ……”

 ”ご主人様……もっと気持ちよくなりましょう……”

 ”そして……とってもきれいで、愛らしくて、淫らな女の体に……”

 ”作り変えて差し上げます……”

 最後の言葉を男が理解するより前に、股間からめくるめく快感があふれ出てきた。 頭の中にピンク色の霞がかかってきて、ものを考えることが出来なく

なっていく。

 「ああ……いい……いい気持ち……それ……もっと……して」

 陶然として呟く男の背後から、ワーヒドが体をかぶせ、イスナーニは股間を弄りながら彼を前から抱きしめる。 二人のジーニーに抱きすくめられながら、

男は甘酸っぱい快感に次第に溺れていく。

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