第十九話 ランプのせい

6.肉欲


  くすくすくすくす……

 何がおかしいのか、男はベッドの上に横たわったまま、含み笑いを続ける。

 ”おかしいですか?”

 ジーニーが聞いてきた。 もっとも彼女の口は彼のモノを咥えているのでしゃべれない。 声を発したのは、目の前で息づく赤い女体の神秘だった。

 「なんだか、おかしくてな……うっ……」

 ヌラリとした舌が彼のモノにへばり付き、ゆっくりと舐めまわしてきた。 べっとりとした感触が亀頭を包み込み、溢れかえる快感が精の源を噴火直前の火山

へと変える。

 「ああっ……い………」

 ”ご主人様……どうぞ……”

 ジーニーに促されるまでもない。 堪えきれない圧力に彼自身が屹立し、ジーニーの口にマグマを溢れさせる。

 「かっ……はぁ……」

 ”ああ、熱い……”

 ドクリ、ドクリ、ドクリ…… 

 快感に震えながら、熱い粘液を吐き出す彼自身。 その熱い粘液が、赤く粘る女の口腔を白く汚す。

 ”うふ……おいしい……”

 ジーニーは妖しく笑い、赤いナメクジの様な舌で男のモノを舐め、溢れて柱を汚していた白い粘液を舐めとる。 一滴たりとも逃がさないとでも言うかのよう

に。

 「はぁ……は……」

 一戦終えて萎えかけていた柱が、ジーニーの舌で固さ取り戻していく。 不思議なことに、放った後の脱力感も回復してくるような気がする。

 「すごいな、お前は……」

 男の言葉に、振り向いたジーニーがくすりと笑った。


 ”ではご主人様……こんどは加減なしで交わりましょう……”

 「加減……なし?」

 ジーニーは頷いて再び体を入れ変え、男を自分の下に組み敷く。 そして、固さを取り戻した男自身をゆっくり自分の胎内へと迎え入れた。

 「ううっ……」

 再びジーニーの胎内を感じたモノが、妖しい歓びに疼き、同時に男の頭の中にもやもやと渦巻く黒い感情。

 (おれは……何をしている?)

 ”あら、ご主人様ぁ……いけませんよ……”

 そう言うとジニーニは、ゆっくりした動きで胎内のモノを、優しく擦りあげた。 滑る感触がかれのモノを包み込み、妖しい快感がじわりと染み込んでくる。

 「う……」

 ”気持ちいいでしょう……さぁ、動いて……”

 促されるままに男は腰を動かす。 亀頭が、鈴口が、そしてモノそのものがジーニーの中と擦れ合い、甘い快感に震える。 そして快感が高まるにつれて

疑念は消えてなくなっていった。

 「ジーニー……」

 ”ご主人様……”

 男の体から力が抜けてベッドに横たわり、ただ腰だけがジーニーを突き上げるように動いている。

 ”もっと深く……交わりましょう”

 「ん?……それはいったい……むぅ」

 問い返してきた男の唇をジーニーが奪い、しばしペチャペチャと濡れた音が口腔の中で響き渡る。

 (うむ……なんだ?)

 軟体動物の様なジーニーの舌を味わっているうちに、口の中が痺れていく様な不思議な感じがしてきた。 自分とジーニー、どちらの舌が何をしているのが

判らなくなり、頭がボーっとしてくる、奇妙だが不快ではない……いやむしろ

 (……頭がボーっとして……妙な気分だ……)

 プハッ

 唐突にジーニーが口を離した。 男はの視線はしばらく宙をさ迷っていたが、やがて焦点が戻ってくる。

 「いまのはなんだ?」

 ”くふふ……ご主人様と、舌で交わりました”

 「……舌で……」

 コクンと頷いたジーニーは、男の体に覆いかぶさってきた。 赤くかすかな粘る女体が、男の素肌に粘りついていく。

 ”皮膚のした、神経に直接触れるのは、あそこだけじゃないですぅ……舌も……腕も……そしてオッパイも……”

 赤く垂れ下がった乳房が男の胸に吸い付き、彼はしっとりとした重みを感じた。 ジーニーはじゃれるようにオッパイを男の胸に擦り付けていたが、その

感覚がだんだんあいまいになって来た。

 「ジーニー……これは……」

 ”ジーニーの肌と、ご主人杣の肌が一つにくっついて、お互いの感覚が共有されるんですう……ほら”

 ジーニがプルンと胸をり、乳首がずるりと男の胸を滑った。 その時男は、胸の上に甘い疼きを覚えた。

 「う?」

 ”感じました?……ほら……”

 ジーニーが男に体を摺り寄せる。 ジーニーの体が心地よい滑りを男の肌に残し、冷たい肌に暖かい肌のぬくもりを感じた。 二つの異なる感触に、男が

困惑の声を上げる。

 「わわっ?……」

 ”うふッ……じきに慣れますよご主人様……そして慣れてまえば……もうその感覚の虜……”

 そう言ったジーニーは、男をべったりと抱きしめると、腰をユサユサと振り始めた。 胎内深く潜り込んだ男のモノが、ジーニーの中を叩く。

 「う……あ?」

 ”ア……ゥ”

 男はイチモツにジーニーが絡みつくのを感じた。 そこに突然、体の奥を暖かいものが押し上げるような感覚が加わる。 困惑する間ももなく、熱い快感が

込みあげてくる。

 「うぁっ」 

 口から喘ぎが漏れると同時に、腰がジーニーを求めて勝手に動き出した。 固く熱い棒でジーニーの中をかき回し、奥を突き上げる。

 「ひっ!」

 体の奥から、熱い快感が脳天を付きあげてきて、頭が真っ白になった。 これはジーニーの快感だと頭の片隅で何かが言ったようだが、すぐにそんなこと

は忘れ去られる。

 男の欲望がジーニーを求めて腰を動かし、探り当てられたジーニーの奥底が正解のご褒美と強烈な快感を男に投げ返す。 男は自分と、そしてジーニーの

肉欲に支配された人形となってジーニーを激しく求めた。 そしてジーニーも

 ”はあっ……いい……いいっ!!”

 ジーニーは男の猛攻を受け止めながら、夢中で男の唇を奪い、舌を絡め、胸がつぶれんばかりの勢いで男を抱きしめる。

 逃げ惑う舌を絡めとり、甘い唾液を流し込み。 柔らかな双丘で男の胸を弄る。

 頭の中が蕩けそうな、甘く生暖かい快感が男の上半身を包み込み、その感覚がジーニーにも返ってくる。

 ”ああ……ジーニーは……蕩けてしまいそう……”

 半ば蕩けながら、ジーニーは男を自分の体に埋め込む様にして、狂ったように彼と愛し合う。

 お互いの快感が伝わり、互いに相手の最も感じるところを攻め合い、文字通り一つになって快感を貪る。

 「ふぅ……ふぅっ……はぁっ!」

 ”イイッ……イイッ……イクウッ!”

 意味不明の唸り声を上げながら、ペッドの上でグチャグチャと音を立てて蠢く肌色と赤色のオブジェ。 そのタイトルはさしずめ『肉欲の塊』であろうか。

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