第十六話 窓辺

8.捕獲


 −−”さぁ……”

 −−青年の眼前でクラリスが妖しく笑い、彼の腰に女の腹が擦り付けられた。 続いて、ぬるりとした感触が彼のシンボルを

    包み込んでいく……

 −−’うぅ……’

 −−ゆっくりと彼自身がクラリスに呑まれていくのがわかる。 彼女の腹が小刻みに震え、細かな動きで彼を煽り立てている。

 −−”あぁ……大きい……”

 −−うっとりと呟きいたクラリスは、体をゆっくりとうねらせた。 彼の上で冷たい女体が蛇のようにのたうち、その動きでクラリス

    の胎内に呑まれた彼自身が一層、固くなるようだ。

 −−’クラリス……’

 −−”さぁ……動いて……”

 −−クラリスに求められるままに、彼はクラリスの胎内に自分を打ち込み、引いた。 冷たいクラリスの襞が、固くなった彼自身に
    纏わりつく。 一打ちごとに妖しい快楽が彼を包み込み、深みへと導いていく。

 −−’いい……いい……’

 −−”もっと……もっときて……”

 −−クラリスが青年を抱きしめる。 柔らかく冷たい女体に体が埋まり、体の熱が奪われていく。 それがたまらなく心地よい。

 −−’はぁ……ぁぁ……’

 −−”ふふ……さぁ……いって……”

 −−クラリスが促すと、青年の冷えた体に熱が戻ってくる。 それが次の瞬間には得も言われぬ快感へと変わる。

 −−’ああっ……’

 −−喘ぎをもらし、体をよじって快感に悶える青年にクラリスが愛しげに身を寄せる。

 −−”気持ちいいでしょう……感じて……もっと感じて……”

 −−’いい……もっと……ああっ’

 −−クラリスの肌から快感が乗り移ってくる様だ。 体の中の快感が出口を求めて彷徨った挙句、ようやく行き場を見つけた。

 −−’あぁーっ……’

 −−女の様にか細い声を上げ、青年は快楽の証をクラリスへと放つ。

 −−”熱い……もっと……もっと……”

 −−クラリスは妖しい笑みを浮かべ、ゆるやかに体をくねらした。 その動きに合わせて、青年の体の中で快感の波が頭の

    先からつま先までを走り抜けた。

 −−’ううっ……’

 −−青年はとっくに絶頂に達していた。 しかし、それを越えてなおも送り込まれる快感。 彼は天国と地獄を同時に味わって

    いた。


 −−’……くっ’

 −−長々と続いた絶頂から解放された青年は、吐息を漏らして横たわった。 その彼の体にクラリスが寄り添い、手や足、首に

    腕や髪を巻きつけて戯れる。 サラサラと流れる髪の感触が、興奮の極みから解放された肌を滑っていく。

 −−”ふふ……よかった?……でも……”

 −−クラリスの笑みが彼の眼前にある。 雌の欲望に溢れる、情熱的な笑みだ。

 −−”こんなものではないのよ。 本当の私は……”

 −−クラリスの笑みが近き、彼の首に回された腕に力がこもる。 彼を捕まえ、逃がさないとの意思表示だろう。 

 −−’本当のクラリス?……どういう意味……’

 −−彼の問いに、クラリスは答えなかった。 妖しい笑みをたたえたまま、首に回した腕の力が増し、息苦しさを覚えた。

 −−’クラリス……苦しいよ……腕が……’

 −−”貴方の魂頂戴……ふふ……苦しいのは一瞬よ……ふふふ……”

 −−クラリスの腕が首筋に食い込み息がつまる。 目の前のクラリスの顔がぼやけだした。 

 −−’クラリス!……’

 −−青年はクラリスの腕を掴んで払いのけようとした。 固く細いクラリスの腕を掴んだ指に、鋭い痛みが走った……


 ギリッ

 縄がしなる音に青年ははっとした。 彼はいつの間にか椅子の上に立ち、梁にかけた荒縄で首をくくろうとしているではないか。

 「!」

 青年は縄に手をかけ、首を抜こうとした。 しかし、手が言うことを聞かない。


 ”さぁ……来て……”


 足が椅子をけり、荒縄が首に食い込んだ。

 ぐぅっ!

 開いた口から息とも悲鳴ともつかぬものが漏れ、息ができなくなる。 息苦しさは苦痛から暗黒に変わり、そして彼は何も感じなく

なる。

 ギシッ

 縄がもう一度軋み、彼は動かぬものになり果てた。

 
 −−……

 −−……

 −−……?

 −−僕は……どうしたんだ?

 −−気が付くと彼は宙を漂っていた。 辺りを見回すと下宿屋の2階の部屋の様だが、部屋の中に靄が立ち込めているように

    視界が効かない。

 −−僕は……あ?

 −−体がすうっと引かれ、彼の体は二階の窓から通りの上に漂い出た。 外も白い靄が立ち込め、様子がよくわからない。 

    その中で、彼は自分に絡みつく糸に気が付いた。

 −−これは?

 −−手で触れると、糸は彼の手に絡みついてくる。 そんな糸が何本も、何十本も絡みつき、彼を引っぱっていた。

 −−どこへ……クラリス?

 −−糸に引かれた彼は、通りの向こうへ……クラリスのいる部屋へと滑り込んでいく。 そしてそこには……クラリスが腕を

    広げて彼を待っていた。

 −−”いらっしゃい……やっと……来てくれたのね”

 −−彼の体は、クラリスの腕の中に滑り込んだ。 彼女が纏う薄絹が、彼の体を絹のような感触で包み込む。 いま気が付い

    たが、彼は一糸まとわぬ姿になっていた。

 −−’わ……’

 −−赤面する彼に、クラリスは艶然と微笑みかける。

 −−”気にする必要はないわ……フフ……さぁ”

 −−クラリスの薄衣がするりと脱げ落ち、白い肌が露わになった。

 −−”貴方を頂戴……”

 −−クラリスは寝台に腰かけ、足を開いた。 白い肌と対照的に、紅の女性の神秘が青年にさらけ出される。 そのとき、青年

    は彼に絡みついている糸が、クラリスのソコから出ていることに気が付いた。

 −−’き、君はいったい……ううっ’

 −−青年の問いかけは途中からうめき声に変わった。 宙を漂っていた青年の体はクラリスに、彼女の紅のクレヴァスへと

    吸い寄せられ、テラテラと光る蜜を流すソコに彼自身が吸い込まれたのだ。 滑った感触が彼自身に巻き付くと同時に、

    熱くとろけるような快感が彼を襲った。 そして……

 −−’ああ……こ、これは……ううっ’

 −−グチチュグチュと卑猥な音を立てるクラリスの其処から、無数の白い糸が吐き出され、青年の精の源、腰、尻へと巻きつき

    そこを糸で覆い始めた。 

 −−’なんだ……こ、これ……’

 −−”いい心地でしょう……”

 −−糸で覆われた箇所に、ぬめったモノで擦られているような感触がする。 あたかも女の胎内にいるかのように。

 −−’ク、クラリス……’

 −−”ふふ……貴方はもう私のモノ……さぁ私の糸で……たっぷりとかわいがってあげましょう……”

 −−クラリスが腰をうねらせる度、彼女の秘所から白い糸が吐き出される。 いや、それはもう白い幕と言っていいほどの量と

    なり、青年を包み込もうとしていた。 そして、そこに包まれた箇所は……

 −−’き、気持ちいい……と……蕩けそう……’

 −−”そう……気持ちよくなって……蕩けるがいい……そして蕩けた後で……私が尽くしてあげる……”

 −−クラリスが告げた恐ろしい言葉に、なぜか彼は恐怖を覚えなかった。 彼は抗うこともせず、ただクラリスにされるがままに

    なっていた。

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