第十五話 病

8.悪しき宴


 高熱にうなされていたジャックは、夜半に目を覚ました。 真っ暗な天井に星が二つ見える。

 「星……星……星……」

 うなされた様に呟くジャックの耳に囁く声が一つ。

 「ジャック」

 「……スティッキー」

 「当たり」

 何処から入ったのか、スティッキーがジャックのベッドの上にいた。 彼女は、横たわるジャックに馬乗りになり、

彼の額に手を伸ばす。 冷たい少女の手をジャックは心地よいと感じた。

 「熱いね」

 「うん……」

 火照った顔でジャックは頷く。 彼女の手で冷やされた為か、意識が確かなものになってくる。

 「僕、駄目かもしれない」

 弱音を吐くジャックに、スティッキーは不思議な笑みを見せた。

 「そう……」

 スティッキーは、汗ばむジャックの肌着をまくり上げ熱っぽい体をスゥッと撫でた。 熱のせいで少年のは敏感に

なっていた。 そこに冷たい女の子の手が触れたので、ジャックは思わず声を上げる。

 「ひゃっ」

 「大げさだな……」

 スティッキーはクスリと笑い、服を脱ぎ始めた。

 「冷やしてあげる……」


 衣服をはぎ取られたジャックは悪寒に震え、熱っぽい体は汗にまみれていた。 スティッキーは、炭より暗い

納屋の中でジャックを抱きしめる。

 「ひゃっ」

 スティッキーの体は手同様に冷たかった。 不思議なことに、スティッキーに抱かれると悪寒がうその様に収まり、

熱が下がってきた。

 「なんだか……気分が良くなってきた」

 「そう?」

 スティッキーは片目をつぶってみせると、体をしなやかにくねらせてジャックに身体をすりつける。 みずみずしい

肌の感触が、墓場の時より鮮やかに感じられる。

 「熱いよ、キミの体……冷やしてあげる」

 スティッキーの言葉通り、ジャックの体温は高いまだだった。 その体温を楽しむように、スティッキーの冷たい

肌がジャックの肌に吸い付く。

 「スティッキー……冷たい……」

 「いや?」

 「ううん」 ジャックは首を横に振った。 「冷たいけど……気持ちいい」

 ジャックは熱が下がっていくのを感じた。 あたかも、スティッキーが熱を吸い取っているかのように。

 「よかった。 ボクは熱い肌が好きなんだ」

 そう言うとスティッキーは目を細め、猫の様にジャックの顔に頬ずりをする。 目の前のスティッキーに、ジャックは

顔を赤くする。

 「そして……こっちも」

 スティッキーは艶めかしい声で呟くと、ジャックの下腹に自分の神秘を擦り付けてきた。 

 「!?」

 冷たいなんてものじゃない、スティッキーの神秘は雪の洞窟の様に冷え切っていた。 それがジャックの下腹の

上を滑り……ジャック自身を咥えこんだ。

 「ひっ!?」

 「ああん……熱い」

 ジャック自身はすでに固く熱くなっていた。 準備のできてい『少年』を、スティッキーの氷の様に冷たい『女』が

咥えている。

 「ああっ、ああっ!?」

 異様な感覚にジャックが呻く、そんな少年をステッィキーは舌なめずりして眺めている。

 「ふふっ、逃がさない。 ほら……」

 ズズッ、ズズズッ…… 異様な音を立て、スティッキーがジャックを呑み込んでいく。 冷たくヌメヌメとした感触に、

ジャックのモノは硬直したまま、ただ震えていた。

 「つ、冷たい……」

 「熱い……熱いよ……ああ……キミの熱いのが……ボクの胎内に……」

 ジャック自身は熱く、そして敏感になっていた。 それが、スティッキーの冷たい『女』に抱きすくめられ、締め

付けられ、そして熱を奪われる。

 「し、痺れる……ぅ」

 「ふふっ……でも悪くないだろ? ほら……だんだん……良くなってくる……」

 スティッキーに囁かれるうちに、ジャックは自分自身に甘い疼きを感じてきた。 体の奥底から、得も言われぬ

不思議な感覚が湧きあがり、それがかれを内から犯していくような……

 「ああっ……ああっ……あ……は……いい……いい気持ち……」

 次第に緩んでいくジャックの様子を、スティッキーは冷たい笑いで観察する。

 「ジャック……」

 「いい……スティッキー……」

 「じゃあ……来て……」

 スティッキーは、ズブリとジャックのモノを迎え入れた。 ジャック自身が『雪の洞窟』を突き抜け、スティッキーの

奥へと誘われる。

 「う……あ……熱い」

 スティッキーの奥は、一転して熱く溶けていた。 雪の洞窟で冷やし固められていたジャック自身に、熱く溶けた

女の肉が絡み付き、熱い快楽の渦に引きずり込む。

 「ああっ……ああああ」

 容赦のない快感に少年自身がビクビクと痙攣し、体の中に渦巻く熱を吐き出したがる。 しかし、異様な快感の

渦に捕えられた少年の体は、正しく反応できずにただ悶えるだけだった。

 「ス、スティッキー……た、助けて」

 「ジャック……どうしたの?……」

 「よくわからない……判らないけど……スティッキー」

 混乱する少年に、スティッキーは囁いた。

 「いきたいの?」

 問の意味も分からず、少年はコクコクと頷いた。 スティッキーは冷たく笑うと、ジャックのモノを胎内で締め付け、

囁いた。

 「きて……なかに」

 「!」

 『女』の声にジャックの体が反応する。 体の中の熱を、自分自身を通じてスティッキーに注ぎ込む。

 ドクリ……ドクンドクンドクン…… 

 「!」

 「きゃぁ……熱い……」

 ジャックが放ったモノを奥で受け止めたスティッキーは、眼を見開いて甘く喘いだ。 薄い胸にしなやかな肢体の

未成熟な少女の肢体が、ぞっとするほど妖艶な舞を少年の上で舞った。

 「ああっ……あああっ……あああっ……」

 ジャックのモノは、熱いモノを吐き出し続ける。 命の全てを吐き出すがごとく。 そして、スティッキーきよがり狂う、

少年の命を飲み干すがごとくに。


 「……」

 数分間の饗宴の後、少年と少女は一つの影となって動きを止める。 暗い納屋の中で、二つの息の音だけが

宴の激しさを留めていた。 だが、その一つはひどく儚げに変わっていた。

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