第十四話 褥(しとね)

28.まどろみの時


 「まどろむ……ずっと……?」 

 楓が静かにうなずく。

 「まどろみ……それは覚醒と睡眠、現実と夢が交じり合う黄昏の世界……。 私が『褥』、私の中でまどろんで……」

 「楓さんが『褥』……?」

 轡虫が首を捻り、言葉の意味を考えようとするが、楓の体がそれを許さない。 柔らかな女の肢体が轡虫を弄り、

自分の方に引き寄せる。

 「あぁ……」

 女の香りと、絹の感触、そして微かな温もりは何物にも代えがたい極上の感覚。 顔を胸に埋めて、甘えるように

ゆっくりと左右に揺り動かした。

 「う……」

 タプタプと波打つ白い果実が彼の頬をからかう様に叩き、かぐわしい匂いを辺りに放つ。 轡虫は谷間の奥に

口づけて、マシュマロの様な乳房の感触を唇で楽しみながら、口づける位置をずらしていった。 そして頂を探り当て

乳首を吸った。

 「あ!」

 楓がのけ反り、しなやかな体が反り返った。 彼女に抱かれていた轡虫の体は、一気に彼女に引き寄せられ、

そして屹立していたモノが、楓の神秘にするりと吸い込まれる。 

 「ひっ」

 いきなりの挿入に、彼の分身が慌てふためいて暴れる。 ビクビクと震えて、勝手に楓の奥を目指そうとする。

 「ああっ!」

 楓が艶めかしい声で喘ぐと同時に、熱い女の蜜が溢れだし暴れる轡虫の分身を、そして彼のふぐりをドップリと

濡らした。 熱い蜜をかけられたそこは、一瞬遅れてぎゅっぅっと縮こまって、快感を凝縮する。

 「ううっ」

 勝手に腰が動き、轡虫のモノが楓を深くえぐり、その動きに楓が激しく反応する。 手綱を失った馬の様に、

二人の体は感じるままに互いを貪り。 再び絶頂へと駆け上った。

 『あ……あぁ』

 そろった声で、快楽の極みを迎えた二人は、固く抱き合ったまま床に突っ伏した。 楓の息に耳朶を擽られながら

轡虫は静かに目を閉じて熱い交わりの余韻を彷徨った。


 はっ、はっ、はっ……

 荒い息を漏らす轡虫の体が微かに揺れ、楓の胸が彼の胸板と擦れ合った。

 ヌル……

 ふっ……

 楓の喘ぎを感じ、彼女の顔に視線を移す。 上気した楓の顔に、恍惚の影がさしている。

 「それ……もっと……」

 柔らかい胸が軟体動物の様に彼の胸にへばりつき、フニフニと蠢いている。 得体のしれない感触だが、轡虫は

それを心地よいものとして感じていた。 彼女の求めに応じ 自分の胸を楓の胸に強く押し当て、身体を小刻みに

揺らす。

 「うふ……あはっ……」

 楓は擽ったそうにしながら、轡虫の動きを喜んでいる。

 「気持ちいいですか……」

 「とっても……ね」 楓は轡虫の眼を覗き込んで続ける。 「感じてみたい? これ」

 「え?……」

 どういう意味かと尋ねようとすると、楓は人差し指を立てて轡虫の口に封をした。 そして、身体を逸らせるように

して上体を離した。 薄桃色に染まった双丘が彼女の胸で揺れて、轡虫の視線を誘う。

 ん……

 楓は自分の胸を揉み、乳首を指で弄った。 指の間から白い物が迸り、彼女の肌を白く汚す。

 「では……お楽しみください」

 楓は、再び轡虫の体に抱きつき、彼の胸に自分の体を摺り寄せる。

 「ひゃ?」

 ネットリとした感触が自分の胸を上下するうちに、自分の胸がほんのりと温かく、そしてなんだか切なくなってきた。 

視線を胸に映すと、楓の胸の下で自分の胸が膨れてきている。

 「あ……れ?」

 一瞬驚きかけたが、頭がボーっとして何が起こっているのか良くわからない。 そのうちに、切ない感じがなんだか

心地よくなってきた。 甘酸っぱい快感が胸に溜まっていく。

 「あ……あん」

 思わず漏れた声が、なんだか女の子のような響きを帯びていたが、轡虫は気にならなかった。

 「楓さん……胸が……とっても……いい」

 「気にいった?……もっと……してさしあげます」

 楓は荒い息を轡虫の顔に落としつつ、豊満な胸から妖しい乳染み出させつつ、轡虫の胸の上で円を描く。 

乳首から染み出た乳が轡虫の胸板に染み透ると、暖かい快感の疼きが彼の胸を走り、女の胸の様に膨らんでいく。

 「あぁ……ん」

 轡虫の乳首に楓の乳首が吸い付き、音を立てて離れる。 その度に頂は少しずつ膨らみ、轡虫の胸に女の快感が

生まれていた。

 「さ……こちらも……」

 楓が何か言っているが、女の快感が轡虫の頭に桃色の霞を生じさせていて、頭が働かない。 轡虫はただ楓の

言葉に頷くしかなかった。

 「うふ……」

 楓は自分の手で乳を受け、白く濡れた手で轡虫の股間を弄った。

 「!?……あ……」

 熱い感覚が彼のモノを襲った。 次の瞬間、股間が溶けていく様な濃密な快感に彼自身が包まれる。

 「と、蕩けそう……」

 「良い心地でしょう……」

 妖しく微笑む楓の手の下で、白く濡れた轡虫のモノがギクシャクと暴れ、暴れながら縮んでいた。

 「気持ちいい……これ」

 本体の方は、すっかり快楽の虜になり、楓にされるがままになっていた。

 「女の胸も宜しいですが……こちらもたいそう、宜しいものですよ」

 楓の手の下で、轡虫のモノは小さく縮こまり、消え失せようとしていた。 が、変異はそこで止まらずさらに彼の

股間の形が変わっていく。

 「ああ……中に……気持ちいいのが入ってくる……」

 うっとりと呟く轡虫の体は、線が細くなり、少女の体形に変わりつつあった。 その可憐な肢体に楓の妖しい体が

絡み付き、魔性の快楽で溺れさせる。

 「ああっ……もっと……」

 綻びかけた固い蕾の様な乳首に、楓のふっくらとした唇が吸い付き、ナメクジの様に舌が這いまわると、乳房が

ブルブルトと震え、乳首がそそり立ってくる。 綻びかけた蕾の様な可憐な秘所を、楓の魔性の花弁がおし包み、

女の熱い蜜で化粧を施すと、そこは成熟した女の花へと姿を変えた。

 「楓さ……もっと……ああっ」

 轡虫は青年から少女、そして女へと姿を変えられながらも、熱に浮かされたように楓を求めた。 

 「これはきっと夢……それとも現実……」

 「どちらでもあり、どちらでもないのです……現実と夢が交じり合うまどろみの時……其処を漂っていれば……」

 女に変えられた轡虫は、楓と絡み合い、ただ快楽に溺れる。 すべてを忘れて。

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