第十四話 褥(しとね)

27.再び宿坊


 轡虫は楓の谷間に、顔を擦り付けるように動かした。

 あぁ……

 楓の喘ぎ声が耳を満たし、彼女の胸が歓びに震える。

 「こう?……ここ……ここですか」

 半ば自分に問いかけつつ、轡虫は楓の胸を咥え、すり寄り、吸う。 そのたびに柔らかな女の証は揺れ動き、彼を

誘う。

 「ううっ……」

 楓の体から甘い香りが溢れだし、それを嗅ぐと体が熱くたぎってくる。 彼の男性自身が鎌首をもたげ、彼の腰に

跨っている女自身をヒタヒタと打つ。

 「ふぅっ……」

 楓は妙に幼い微みを見せると、轡虫に跨ったまま腰を前後に動かし始めた。 蜜を滴らせた淫花が、少しずつ綻び

ながら轡虫の腰の辺りを濡らしていく。

 「楓さん……」

 切なげな声を漏らす轡虫の唇に、楓の唇が重なった。 柔らかな舌が彼の口に滑り込み、彼の下に絡み付く。

 ピチャ……ピチャ……

 舌が睦み合う濡れた音が、耳の奥で聞えていた。 体の奥底で楓とつながっている事を感じ、轡虫の男性自身が

震えた。

 ニュルン……

 滑った感触が、男性自身の上を滑った。 一瞬楓の中に入ったかと錯覚したが、どうやら陰裂が陽茎の上を滑っ

ているらしかった。

 「……」

 轡虫は目を閉じて、腰の上の楓の動きを追った。 熱い蜜を滴らせた淫花が彼自身をなぞっている。 先端のすぐ

下までを濡らしたと思えば、するりと逃げて精の袋を柔らかく咥え、そしてまた上に…… 不意に柔らかい温もりが

彼自身を包む。 楓の淫花が轡虫の男性自身を先端を捕らえたのだ。

 「う……くっ」

 呻いた轡虫、その口を捕えたままの楓の唇が微かに動いた。 笑ったのだろう。 そして、腰がゆっくりと動き始めた

 「あ……」

 花の奥から暖かい蜜が湧きだし、トロトロと男性自身を濡らしている。 蜜を浴びた男性自身が歓びの痺れに震え

膨れあがって楓を求める。

 ヌル……ヌル……

 「!……」

 楓の花びらが巧みに蠢き、暴れる轡虫自身に巻きついて奥へ誘う。 花芯の奥からは熱い蜜が湧き出し続け、

轡虫自身を伝って彼の下腹にまでを濡らしたいる。

 「貴方を……感じさせて……」

 そう囁した楓の腰がうねり、轡虫の腰に強くすり寄ってきた。 二人の間で蜜の滑りが広がっていく。

 「うぁ……」

 蜜でぬれた個所に甘い快感が広がり、轡虫は思わず動きを止めてそれを味わう。 それを察した楓が、積極的な

責めに出る。

 「もっと……良くしてあげます」

 楓は腰をゆったりと動かして、轡虫のモノをじわじわと胎内に沈めつつ、轡虫を柔らかく摩りあげて溢れる蜜をその

体に塗りつけて行く。

 「あ……ぁぁ」

 『良い』という言葉では足りなかった。 広がっていく快感に、もはや彼の意志と関係なく体が動かなくなり、動きの

止まった所をさらに楓が愛していく。 

 「良い心地でしょう……」

 「え……えぇ」

 頷くのが精いっぱいの轡虫に、楓がくすりと笑った。

 「では……極みを」

 楓は轡虫に強く抱きついた、胸を押し付け上体を揺すり始めた。 柔らかい双丘の下から愛の滑りが這い上がり、

二人の胸の間を熱く濡らす。

 「あぁ」

 柔らかな乳房が、轡虫の胸に吸い付き、摩りあげ、甘い乳をこぼして彼を愛し、別な生き物のように彼を官能の渦

に引きずり込んでいく。 そして、彼女の宣言通りに快感の極みがこみ上げて来た。 しかし……

 「あぁっ?」

 熱い快感は腰が広がり、それが出口を間違えたかのように腹をそして胸を満たしていく。

 「ひぃ」

 息ができないほどの快感に体が硬直する。 今や轡虫は一個の性器と化し、絶頂を迎えようとしてヒクヒクと痙攣し

ていた。 その彼を愛しながら、楓は再び彼の口を捕らえる。

 『きて』

 短い命令に、彼の体が従う。

 「ぐぅ」

 熱い快感に身体が激しく震え、なにか熱いモノが口から吹き出していく様な感覚。 楓は驚く様子もなく、轡虫の

口から吹き出す快楽の証を己の口腔で受け止め、飲み下した。 もし第三者がそれを見ていれば、楓が轡虫から

何かを口から奪いとり胎内の奥深くへと飲み下す、その様に見えたかもしれない。

 コクン……白い喉が最後の『何か』を飲み下すのと同時に、力を失った轡虫の体が楓の腕の中に崩れ落ちる。 

荒い息をつき、激しい快感の嵐の余波に流される轡虫を楓が不思議なまなざしで見つめていた。


 息を整え落ち着いた轡虫は、改めて色々と思いを巡らすうちに、体に妙な感触を覚えた。

 「?」

 自分の手を目の前にかざしてみる。 さっきまでの激しい交わりの余韻なのか、身体をうすい絹か何かに包まれて

いるような妙な感覚がある。 そうしながらここに呼ばれるまでの事を思い、覚悟を決めて楓に疑問をぶつけてみる

ことにした。

 「か、楓さん」

 「はい?」

 楓の声が意外なほど近くから聞こえた。 そう思いながら轡虫は言葉を続ける。

 「僕らは、貴方達に……その魅いられた……のか……もう一度会いたいと思いって、でも……なんというか…」

 自分の心の中がうまく言葉にできず、轡虫はいらだった。

 「彼らはどうなったんですか。 僕の友人たちは」

 聞いてはいけない事だろうか、おそらく自分にも待ち受ける運命。 知ってしまえば後は恐怖しかないはず、だが。

 「気になるの?」

 轡虫は頷いた。

 「彼らは……『褥』にこもったわ」

 「『褥』?」

 問い返す轡虫に、楓は襖を指さした。 宿坊の狭い部屋を仕切る襖が、音もなく滑って隣の部屋にある物を轡虫の

視界に入れる。

 「え?」

 轡虫にはそれが何か判らなかった。 薄暗い部屋の中にある白っぽい塊、見てわかったのはそれだけだった。

 「これが?」

 「それが『褥』……」

 そう言った楓が、彼の背後から抱きついてきた、じんわりとした温もりが驚くほど心地よい。 そして、その温もりが

じわじわと染み透ってくる様な感覚、それには覚えがあった。

 「楓さん……」

 振り向いた轡虫の手を、楓がとって自分の胸に導く。 背中で感じたのと同じように、染み透ってくるような不思議

な温もりを感じ、その手が柔らかな胸にじわじわと沈んでいく。

 「わたしも『褥』……私の中で……」

 楓が顔を寄せ、轡虫に頬ずりする。 そこからも温もりが伝わってくる。

 「まどろんで……ずっと……」 

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