第十四話 褥(しとね)

8.その夜2


 「あ……」

 幽霊の様な桜花の胸から迸る乳は、一筋の流れとなって鈴虫の顔に注がれる。 それは彼の顔で広がり、本物の乳の様に

彼の顔を白く染めていく。

 スゥ……

 息を吸うと、口の中に甘い乳の香りが溢れた。 そしてトロリとした甘いのモノが胸に溢れる。

 「あぁ……」

 その不思議な甘い感覚は、たちまちのうちに全身に広がり、鈴虫は夢とも現実ともつかぬ不思議な世界に漂いだした。


 ”あぁ……”

 細い声を上げ、桜花が鈴虫にしなだれかかってきた。 幽霊の様な姿なのに、しっとりとした肌の感触と、ふっくらとした乳房の

弾力がはっきりと感じられる。 鈴虫はためらうことなく桜花の胸に顔を埋めた。

 「……」

 女の肌の匂いが彼を誘う。 鈴虫は顔を左右に動かし、谷間の感触を堪能する。 

 ”ああ、たまりませぬ……”

 桜花の喘ぎが胸郭を震わせ、鈴虫の顔に心地よい振動を伝えてきた。 鈴虫は、桜花の声をたよりに、唇で桜花の乳房を

探った。

 ”そこを……そこは……ああっ”

 喘ぐ桜花の声が、妙なるしらべとなって鈴虫の耳朶を打つ。 そして、彼はそこを探し当てた。

 ”あああっ”

 鈴虫の舌が、深々と桜花の乳を抉った。 桜花は一度のけ反ると、体をしならせて鈴虫を胸にかき抱いた。

 「むうっ……」

 桜花の胸に鈴虫の頭が包み込まれ、唇を乳首が割って彼の口腔を満たした。 ありえないはずの事が起きるのは、彼女の

体が煙でできているからなのか……そんな思いが彼の心をかすめる。

 ”あああっ……”

 喘ぐ桜花が彼を激しく抱きしめ、胸を擦り付けた。 口の中の乳房が、口腔の粘膜をすりあげながら動いている様な気がする。

 「うぅっ……うぱっ……」

 しっとりとた乳房の肌が口の中を擦りあげる度に、甘酸っぱい疼くような感覚が広がってくる。 それを快感だと認識した瞬間、

彼の口は桜花の乳房を受け入れる為の性器と化していた。

 (いい……いい……もっと……もっとして……)

 鈴虫は動きを止て桜花の乳房を受け入れい、桜花は激しくよがって、ひたすらに鈴虫を犯す。 

 ”くはっ……まいります……まいります……”

 (きてっ……)

 ぎゅうっと鈴虫を抱きしめた桜花が、ヒクヒクと体を震わせた。 同時にその乳首から、生暖かい乳が溢れだし、鈴虫の口を満た

す。

 ビクリ、ビクリ、ビクリ、ビクリ……

 (!)

 熱い乳が喉の奥に溢れた瞬間、彼の口の中を絶頂の嵐が襲った。 頭のすぐ下で弾けた快感は、彼の意識を快楽の嵐の中に

叩き込む。

 (ああっ……)

 ”くうっ……”

 二つの体は、不自然な形で固く抱き合ったまま、熱い快楽の絶頂に酔いしれた。

 
 「ふうっ……」

 解放された鈴虫は、ベッドに体を預けて横たわった。 激しい快感の為か、体が気だるく力が入らない。

 ”失礼……”

 桜花が、すうっと彼の上に重なり、かれの男性自身を手で包み、そのまま軽く口で咥える。

 「うっ……」

 蕩けきった鈴虫の其処は力なくうなだれたままだったが、桜花の軽い口戯に震えるほど敏感になっていた。

 ”まぁ……”

 桜花は軽く微笑むと、彼の顔をまたぐ様にして彼自身を口に収め、優しく舐め始めた。

 「お、桜花さん……」

 ”如何ですか?”

 「と、蕩けそう……」

 先ほどの不自然な絶頂のせいなのか、彼の分身は普段と違い、力が抜けたまま気持ちよくなってきたのだ。

 「ああ……駄目」

 ”いっていいのですよ……さぁ”

 桜花の口の中で優しなぐさめられ続けるうちに、トロンとした生温かな快感に股間が緩んでいくのが判る。 桜花に導かれる

ままに、彼の分身がヒクヒクと蠢き、白いものを吐き出した。

 「……?……ええ!?」

 鈴虫が目を丸くした。 彼の分身が吐き出したものは、下に落ちることなく宙を漂っているのだ、煙のように。 唖然とする

鈴虫をよそに、ヒクヒクと動く分身は途切れなくその『白い煙』を吐き出し続ける。

 ”うふ……”

 桜花は微笑むと、その『白い煙』に手を触れた。

 「くっ!?」

 鈴虫の体を、電気にも似た痺れが走った。 桜花は鈴虫の表情をみて、うっすらと笑う。

 ”大事ありませんわ、鈴虫様……これは蕩けきった貴方様自身の魂の様なもの……ほら、こうすると”

 そう言いながら、桜花は『白い煙』に顔を寄せ、桜色の唇で舐めあげた。

 「ひぁぁぁぁぁ……」

 鈴虫の背筋を電撃の様な快感が走り、あまりの刺激に息が止まりかけた。

 ”あら申し訳ありません……もっと丁寧にいたしましょう”

 息も絶え絶えの鈴虫が止める間もなく、桜花はそっと『白い煙』をたぐりよせ、優雅な手つきで自分の体に塗りつけるような仕草

をした。

 「ひっ……ぃぃぃぃぃ……」

 むき出しの神経を直接愛撫されるような快感に、鈴虫の体はビクビクと震え、その分身はとめどもなく『白い煙』を吐き出し続ける。

そして、桜花は微笑を顔に張り付かせたまま、その『白い煙』を己の体に導いている。 その様は、背徳的な儀式のように見えた。

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