第十三話 ナイトメア

7.実験1


ズルリ。

 『赤い女』はベッドからすべり落ちた。 そして彼のつま先の方に這い上って来る。 彼は首を少し上げ、女の動きをじっと

観察する。

 ”ふふ……逃げないの?”

 「逃げるも何も、ここはどこなんだ? 研究棟によく似ているが、建物の作りが違う……しかし……」

 ”『わざわざこんな物を用意する理由がない』”

 男は、言おうとしたことを先に言われ、舌打ちした。 その間に、彼女は体の滑りを巧みに使い、ソープ嬢の様に彼の両足に

自分の体を擦り付け始めた。

 ヌリュ、ヌリュ、ヌリュ……

 不規則なリズムで、滑る女体を足の上で前後させ、時折、勢いをつけて彼の急所に胸をぶつけてくる。

 「……」

 その一瞬、柔らかいゼラチンが彼自身を包み込む。 そして、彼女が波の様に引く時、赤い胸が柔らかく揺れ、彼を谷間から

送り出す。

 「き、器用だな……」

 赤い谷間にモノが包まれると、何か『涼しい』ものが纏わりつくような奇妙な感じがする。 そしてその感覚は、谷間から吐き

出された後も、しばらく後に残るのだった。

 ”フフ……これがいいのね……”

 『赤い女』は訳知り顔に頷くと、一気に胸を寄せてきて、彼のモノを谷間に呑み込んだ。 そして、両手で胸を揉むように動かす。

 「む……」

 赤いゼラチンの中で、自分自身がもがいている。 精の袋はだらしなくかき回され、屹立した亀の頭が盛んに首を振り回している。

 「うぅっ?」

 あの『涼しい』感触が、じんわりとモノに染み込んで来る。 じわじわと、モノが冷えていくような、奇妙な感じ。

 「あ……」

 不意に、『涼しい』感触が心地よくなり、大事なところが縮み上がる。 いつものくせで、彼は意識をそらして耐えようとした。

 ”いいのよ……いっても……”

 『赤い女』に囁かれると、こらえ切れなくなった。 力を抜いて、感じるままに任せる。

 ヒクヒクッ!! ヒクッ、ヒクッ、ヒクッ……

 赤いゼラチンに捕まった彼のモノが、ヒクヒクと痙攣し、女にされるがまま、悦楽の極みにのたうっている。

 ”フフ……可愛いわよ……”

 女は彼の顔を上目づかいに見つめ、舌を出すと優しくモノを慰める。

 「は……」

 快感に浸って敏感になったソレを、優しい愛撫が包み込む。 彼は、軽く目を閉じ、しばして女にされるがままに余韻を楽しんだ。


 ”フフッ……あれがいいのね……”

 眼を開けると、目の前に女の顔があった。 彼に体を重ね、甘えるようにすり寄っている。

 「ああ……よかったよ」

 そういいながら、彼は女の背に手を回した。 赤き透けて見える体は、胸同様に柔らかく、しなやかだった。

 「……」

 滑った体を愛撫してみる。 モノに感じたような、『涼しい』感触が手に残る。 

 「不思議な体だ……いったいお前は何なんだ? 宇宙人か? 妖怪か?」

 ”『宇宙人』というのが半分当たり……”

 「半分? どういう意味……それに言葉……」

 男の唇を女が唇でふさいだ。 押し付けられた唇から、あの感触が伝わってくる。

 ”『『宇宙人』なら、なぜ言葉がつうじるものなのか?』 でしょう……”

 男は頷き、続いて女の舌が口の中に滑り込んでくるのを感じた。

 ”話していないのよ……私達は”

 女の形がグチャリと変わる。


 ペチャ、ペチャ……

 男は、目の前にある『赤い女』の神秘を責めていた。 形こそ人のソレと変わらぬが、赤く透き通ったそれには、人間の生々しさ

が欠けている。

 ペチャ、ペチャ……

 ”ああっ、もっと……もっと舐めて……”

 そう言って、女が尻を振って彼をねだる。 彼は、求められるままに女の尻に舌を差して、女を愛した。

 グチャリ、グチャリ……

 お返しとばかりに、女が胸で彼のモノを責める。

 「ううっ」

 先ほど達したはずなのに、久しく女に触れていなかったかのように、モノが喜んでいる。 深くそして重々しい快感に、引きずり

込まれるような恐怖すら覚える。

 ”怖いのね……でも、それもいいみたいね……”

 女が確認するかのように呟く。 彼女の言うとおりだった。 赤いゼラチンの様な女体は、触れているだけでも心地よく、そして

じわじわと沈んでいくような感じがする。

 「ああ、君は怖い……だが、それも悪くない……」

 何故そのような事を言うのか、そもそも、自分はこんなことをしていていいのか。 そんな疑問が沸き起こる。

 ”いいのよ……心配しないで……もっと感じて……”

 だが『赤い女』の囁きが耳朶を打つと、心の声はたちまち雲散霧消してしまう。 

 「ああっ……いい……いきそう」

 ”いいのよ……気持ち良くなって……”

 ヒクリ、ヒクリ、ビクリ

 再び彼のモノが快楽にのたうつ。

 ”可愛いわよ……あなた”

 女の舌が、忠実なペットを可愛がるように彼を舐める。

 「それも……いい……」

 彼は、首をふってよがり目の前の女の秘所に顔を埋め、女に応えた。

 ”あはぁ……”

 女が喜びの声を上げ、ゼラチン状の体をフルフルと振るわせ、そして彼は、赤い闇に沈んでいく。


 「……」

 気が付いた時、彼は一人でベッドに横になっていた。 頭を振って起き上がる。

 カサリ

 手の中に何かある。 開いてみると紙を握っていた。

 『後ろのドアを抜ければ、ここから出られる……先に進めば……次の実験よ』

 「……」

 男は無言で紙を握りつぶして、服を着る。 そして入ってきたドアを開け、廊下に出た。

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