第十一話 シェア

5.彼女は彼を


 『タカシ』がベッドに身を横たえると、『サツキ』が覆いかぶさって来た。 上気した『自分』の顔が迫ってくる

 「……」

 当然の反応として、力いっぱい目を閉じる『タカシ』。 

 「ちょっとぉ」

 『サツキ』が抗議する。

 「だって……」

 消え入りそうな『タカシ』の呟き。

 「むー」

 『サツキ』は不満そうに唸り声を上げている(目をつぶっているので表情が判らないが)。

 「仕方がないなぁ」 しばしの沈黙の後、『サツキ』が切り出した。 「目を閉じていていいけど、軽く目をつぶるだけにして。 

それと体の力も抜いて」

 『タカシ』は頷いて、ひたすら力を抜くことに専念する。

 「そうそう、で、自分の体を想像するの、男の時の」

 「んー……」

 『タカシ』は想像する。 自分は男で……男の『サツキ』に……

 「うわぁ!!」

 「何、想像してるの! やり直し!」

 「はいっ!」

 (僕は男、で女の子の『サツキ』に……組み伏せられて……)

 キュン……

 Hな期待に胸が鳴った。


 「可愛いよ……ここをこんなにして」

 『サツキ』の指が『タカシ』の大事な所をそっと弄る。

 (あっ……)

 男でも女でも、大事な所は柔らかく感じやすく、場所もさほど変わらない。 指が触っているモノをいつものモノだと思い

込むのに苦労はいらなかった。

 (あっ……ああっ……)

 股間を撫でる手は、大胆かつ繊細にそれを愛でる。 

 (もっと……)

 そう思っただけで足が開く、『サツキ』を誘う様に。

 「可愛いよ、キミは」

 耳をかみながらささやく声は、なぜか『サツキ』の声に聞こえ、頭をジーンとしびれさせる。 そして……

 チュク……

 (あ、熱い……)

 股間が熱く、愛の滴で濡れている。 そして、経験したことのない疼きが広がっていく。

 「こんなに濡らして……」

 『サツキ』の指が、『タカシ』を愛で始めた。 疼く場所を知っているかのように(当然だが)、指が巧みに蠢いている。

 (うまい……あ……あん……)

 かゆいところに手が届くような『サツキ』の絶妙な指使いは、疼きを悦楽に変えいていく。 『タカシ』は知らず知らずのうちに

腰をくねらせ、『サツキ』に体を開いていく。

 (ひっ?……)

 足の間で広がっていた疼きが、向きを変えた。 体の中にするすると潜り込んで来るかのように、疼きがせり上がって来る。

 「あ、あぁ……」

 「ほーら……欲しくなってきた」

 (欲しい?……い?)

 『タカシ』の愛の泉に、柔らかなモノが吸い付いた。 指かと思ったが、もっと太い。

 (こ、これは……ん?)

 ソレは、甘える様に『タカシ』のソコを上下している。 感じやすいソコはその感触を余すことなくえ、『タカシ』の頭の中に

形を浮かび上がらせる。

 (僕んだ……)

 ソレが中に入りたがっているのが判る。 そして『タカシ』の体は、それを欲しがって疼いている。 しかし『タカシ』自身は

怖がっていた。

 「タカシ……お腹の中に『玉』があるのが判る?」

 「玉?」

 『サツキ』の囁きに従い『タカシ』はお腹の中の『玉』を想像した。

 (あ……)

 『玉』がある、そう思うと同時に『疼き』が真っすぐ体の中に入ってきた。 そして『玉』に届く。

 (……あ……あぁ)

 疼く、体の中で『玉』が疼く。 ズクン、ズクンと脈打って欲しがっている。

 「サ、『サツキ』……ほ、欲しい……の」

 「『タカシ』……」

 『サツキ』の声が上ずっている。 『タカシ』の声に体が反応しているのだろう。 『サツキ』は『タカシ』の腰に自分の腰を

擦り寄せ、ゆっくりと前後させ始めた。 太い芋虫の様な柔らかいモノが、二人の間でのたうつ。

 「ん……あ……あぁぁぁ」

 濡れた顎が芋虫を咥えた。 体の方が正直だったようだ。

 「あ、熱い……」

 「や、柔らかい……あっ……ああっ……」

 若い愛の証は互いを求め、次第に深く、より深く結びついていく。

 「タ、『タカシ』……」

 「サ、『サツキ』……」

 主と従が入れ替わった。 魂は肉の入れ物に支配され、快楽の交わりの傍観者となる。 

 (あぁぁぁぁ)

 『玉』が疼く、女の疼きが男を呼ぶ。 それに応え、自分のモノが自分を愛している。

 (もっと……もっと……)

 モノが入ってくるにつれ、疼きが悦楽に置き換わっていく。 すでに腰から下は熱く蕩ける悦楽に満たされ、女の本性の

ままに男の体を貪っている。

 (きて……奥に……早く……)

 ついに『玉』にモノが触れ、疼きが熱い悦楽に変わる時が来た。

 「あ!」

 足が絡み付き、男の腰を引き寄せる。 熱いモノを、より深く自分の中に招くために。

 「あ!あ!ああっ!」

 『玉』をモノが突くたびに、熱い悦楽が背筋を走る。 『タカシ』は夢中で『サツキ』を引き寄せ、貪った。

 「い、いくぅ」

 『サツキ』が呻き、一瞬遅れて。

 「いっちゃぅぅぅぅ!」

 熱い『滑り』が『玉』包み込み、悦楽の大波が『タカシ』を翻弄する。

 (あぁぁぁ……あ?)

 頭の中で、『滑り』がサツキに変わり、『玉』がタカシに変わる。 タカシは、滑りと化したサツキの熱い抱擁に包まれていた。

 (タカシぃ……)

 (サツキぃ……)

 熱い、とても熱い快感のなか、二人は一つになる。 いつ果てるともなく続く快感は、やがて生ぬるい幸福の暗黒に

変わっていった。

 ……… 


 ……ん……

 『タカシ』はゆっくりと手をつき、体を起こす。 自分の手を見て、次いで大事な所を確かめた。

 「ある」

 傍らにいる人を見る。 サツキだ。

 「女の子」

 「指さし確認はやめてほしいな」

 サツキが目を開けた。

 「あ……ごめん」

 「戻ったね」

 よいしょっとサツキが体を起こす。 桜色に染まった艶やか少女の体に、少年の頬が染まる。

 「さっきまでのは夢?」

 「さぁ……確かめる?」

 サツキがほほ笑んだ。 タカシに依存はなかった。

 「うん」

 二人は互いの体を慈しむ、幸せな時間に戻っていく。


 「えーと……何回目かな」

 「さぁ、ただ正式なのが奇数回なのは確かだよ」

 『サツキ』がタカシの顔でしゃべった。

 「今、ボクがこっちだもの」

 「だね」

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