第十話 酔っ払い

8.酔い潰れ


 数人の、それも年齢の異なる赤い女体が『レディーナ』風呂の周りにたたずんで、赤い湯に浸かって

唖然としている彼を見つめていた。

 ゴボリ……男の見つめる先で、赤い湯面がゆるやかに盛り上がる。 

 (終わりか……)

 盛り上がった油面はゼリーを思わせる赤い塊になり、さらに艶めかしい女体の曲線を形作りつつ男に迫る。 

男は逃げることもできず、その様を見つめていた。

 ”……怖いのね……」

 『レディーナ』の姿と共に、その声も明瞭に聞こえてくるようだ。

 「……」

 毒づこうと口を開いたが声が出ない。 これは恐怖の為か、それとも敗北感のせいだろうか。

 「見て……」

 『レディーナ』が顔を、そして唇を寄せてくる。 看護婦姿の時は目を閉じたが、今度は目を離すことができない。

 「……」

 真紅の瞳に吸い込まれるような気がする。 そして唇が触れ合う感触。

 チュ……ニュル……

 『レディーナ』の舌が、彼の口腔に滑り込みんだ。 ワインの香りのする粘った舌が、彼の口腔を蹂躙する。

 (ああ……ああ?……)

 ヌチャリ……

 体に何かが纏いつく。 目を動かすと、視界の隅で赤い湯が蠢いているのがわかった。

 「フフッ……感じて……」

 ニュルン……

 (!……)

 下半身を中心に湯が、いや『レディーナ』が粘りついていた。 彼の下半身全体が『レディーナ』の中で愛撫

されている。

 ニュル……ニュル……ニュル……

 赤い粘体は緩やかに、そして執拗に愛撫してくる。 それにつれ体の中にもやもやしたものがたまってくるようだ。

 「くぅ……」

 体が火照り、股間が内から膨れていく。

 「んふ……」

 『レディーナ』が笑う。 次の瞬間、股間がきゅぅっと絞られ、強く吸われた。

 「ひぇ……」

 ドクリ……ドクリ……ドクリ……

 精を放つと言うより、精を吸い取られる様な感触が下半身を襲う。 得も言われぬ快感に、頭の中まで真っ白になり、

何かを吸い出だされているような気がした。

 「ひ……ひ……ひ……」

 ヒクヒク痙攣しながら、男は失神した。


 「……ん」

 気が付いたとき、彼はまだ風呂場にいた。 弾力のあるマットか何かに寝かされ、右と左に『レディーナ』が

一人ずつ添い寝し、戯れるように胸を撫でたり、体を擦り付けてくる。

 「よかったでしょう?」

 「あ……ああ」

 頷きかえす男の手が『レディーナ』の胸に伸びた。 指が半ばめり込む、赤い粘体が指を舐める様に纏いつく。 

男は、手を動かしてその感触を楽しむ。

 「私の胸は好き?」

 「ああ……最高だ」

 陶然とした口調で男は応える。

 「ふふ……さっきの気持ちよかったでしょう? 『恐怖』を吸い出されるのは」 

 「『恐怖』……」

 呟く男の股間に、幼年体型の『レディーナ』がじゃれていた。 隆々とそびえたつ股間のものを、キャンディーの

様にペロペロと舐めている。 男の息が荒くなった。

 「楽しむのに邪魔だもの。 だから、先に吸い出してあげたの」

 右側の『レディーナ』が頭を起こし、かれに笑いかける、『悪魔の微笑み』で。

 「楽しむ……うっ……」

 彼の左手が、左側の『レディーナ』に秘所に誘われていた。 ビラビラした陰唇が指に絡み付き、熱い蜜を湛えた

魔窟にズブズブと指を引きずり込む。

 「……」

 体を起こす男の前で、一際豊満な体つきの『レディーナ』が横たわり、彼をその魔窟に誘う。

 「さぁおいで……ここに……蕩けさせてあげる……皮以外は全て、赤い蜜で蕩けさせて上げる……フフッ……

アハハハハハッ」

 呆然とたたずむ男の背中に、赤い女体が胸を摺り寄せる。

 「気持ちいいわよ……さぁ」

 男は豊満な体つきの『レディーナ』に倒れ込むように覆いかぶさり、彼女の中に自分自身を沈めた。

 「はぁ……うっ……」

 彼自身に『レディーナ』が絡み付く。 熱く粘りつき彼を愛する。

 「はぁ……うっ……」

 ため息のような喘ぎを漏らすと、続いてその腰が動き出す。

 「うっ……うっ……うっ……」

 粘りつく『レディーナ』の中は、まさに魔窟。 彼を誘い、翻弄し、そして虜にする。

 (もっと深く……もっと……もっと……)

 淫肉が声なき声で彼を誘い、愛の蜜が彼を酔わせ、そして魔性の快楽が彼を蕩けさせていく。 

 ヒック……ヒクヒクヒクヒクヒクヒク……

 『レディーナ』の中から、妖しい快感が伝わって来た。 甘い痺れに肉棒が固まり、彼の体が『レディーナ』のものになる。

 「うぁぁ……」

 ドクリ……ドック……ドック……ドク

 男は『レディーナ』の中に、快楽の証を放った…… 体の力が抜けていく。

 「うぁぅ……」

 崩れ落ちる体を、赤い女体が受け止めた。 弛緩していく男の体を、愛しげに撫でる『レディーナ』。


 「さぁ……私を飲んで……」

 赤い乳房が彼の口元ににじり寄り、乳首が唇に吸い付く。

 「吸って……」

 男は衝動の命じるままに赤い乳首を吸った。 甘いワイン味の蜜が、精を吸い出された体に染みわたり、ほんのりと

赤みを帯びる。

 「ああ……」

 ため息を漏らす男の体に、甘美な快感の波が走り抜けた。

 ”ふふ……さ……続けましょう”

 『レディーナ』に誘われるまま、男は赤い女体に再び自分自身を沈める。

 そして、その背中に別の『レディーナ』が覆いかぶさり、幼児体型の『レディーナ』が彼の脇の下に顔をうずめる。

 「ひぃ……」

 赤い女体のオブジェの中で、魔性の快楽に酔いしる男の体はピクピクと震え、そして蕩けていく。 

はみ出た腕が、足が、徐々に萎んでいく。


 『存分に酔うがよい……酔って……酔って……そして私に呑まれのよ……』

 『レディーナ』の呟きを、男が理解することはなかった。

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