第十話 酔っ払い

4.酔い覚まし


 男は一心不乱に走る、はしる、ハシル。 赤い悪夢から逃げる、にげる、ニゲル。

 はっ、はっ、はっ……

 駆け足が小走りに、そして早足に……やがて足を止め、乱れた息を整える。

 (どうする、どうすれば……)

 ”助けを求めるのよ……”

 「そうだ助けを……交番!」

 男は辺りを見回す。 見知らぬ住宅地に人影はなく、無機質な街頭の明かりに照らされたマンションは、映画のセットのように

現実感が薄い。 そのマンションの向こうに、ポツンと赤い光が見えた。

 「あれは……交番だ!」

 男は赤ランプ目指して走り出した。

 
 「お巡りさん……あ、婦警さん!」

 男の声に、派出所の中に居た婦人警官が面を上げた。 男の顔をみた警官の表情が引き締まる。 階段から転げ落ちたせいで

顔に血が流れていたのだ。

 「どうされました?」

 「た、助けてくれ、いえ、下さい……実は……」

 男は婦人警官に薦められるままにパイプ椅子に腰掛け、起こった事を包み隠さず話す、正直に……


 数分後

 「……そうですか、判りました」

 婦人警官は大きなため息を吐いた。

 「だいぶお酒を飲みすぎたようですね」

 「そうなんだ、まさかあんな恐ろしい酒だったとは……」

 恐怖に青ざめた男を、婦人警官はやや冷たい目で見ていたが、つと立ち上がって交番の奥に姿を消す。

 「婦警さん?」

 婦人警官はコップに水を入れて戻ってきた。

 「とにかく酔いを覚ましてください」

 「おお、判ってくれたか!」

 男はコップを受け取ると、冷たい水を一気に飲む。 そして、盛大にむせ返った。

 「ぶほぅ! こ、これは……」

 男はコップに残った液体を見直す。 それは、血の様に赤かった。


 フッフッフッフッフッ……

 不気味に笑う婦人警官。 その顔はいつの間にかあの『赤ワイン』女になっていた。

 「き、汚いぞ」

 「私はコップを差し出した、飲んだのは貴方よ」

 立ち上がろうとする男を、婦警の制服を着た『赤ワイン』女が体で押し戻す。 婦警の制服の胸元、深く赤い谷間が彼の視界を

遮った。 

 「ぶわっ」

 弾みでボタンが弾け、飛び出した赤い生乳に頭が挟まれた。 思わず顔を横に振ると、赤いネットリした谷間が、顔に吸いついて

離れない。

 「まぁ、いやらしい。 不敬罪ね……いえ婦警罪……ぶっ、キャハハハハハハ」

 「つ、つまらん!……うぉっ」 

 『赤ワイン』女は、タイトな婦警の制服のままで、椅子の上の男に無理やり跨り、体を摺り寄せている。

 ビリ、ビリリッ……婦警の制服のあちこちが裂け、むっちりした赤い肉体が次第に露になっていく様は、全裸よりも扇情的であった。

 「う、ううっ」

 ミニスカートの下、赤い秘所がズボンごと、彼自身を咥え込もうとしている。 彼自身は耐えようとしているのだが、肝心の彼の息子

は耐えるつもりが無いようだ。

 ジッ、ジジジッ……

 慌てていたので、ベルトもしていないしズボンのホックも止めていなかったらしい。 息子の圧力の前に、ついにジッパーまでが彼を

裏切る。

 「まぁ、体は正直ね」

 ジーッ!

 一気に開いたジッパーから、息子が勢いよく飛び出した。 それがミニスカートの下、赤い顎に咥え込まれる。

 「ひぃぁっ!……あっ……ぁぁぁ」

 赤い粘体に包み込まれる快感は、およそ耐えられるものではなかった。 熱く火照った彼の息子を絡めとり、不気味な粘着感と

蠕動でおぞましい快楽に引きずり込みつつ、ありえない冷たさで息子の暴発を許さない。

 「あっ……ぁぁぁ」

 「ねぇ、たまらない心地でしょう……」

 「あぅあぅ」

 男は壊れた人形のように、かくかくと首を縦に振る。

 「ほーら……楽しい夢を見ましょう」

 ニチャニチャ音を立てて、赤い粘体が彼の息子を愛撫する、それとも咀嚼しているのか。 そして、それが中に入ってくる異様な感触。

 「ひ!」

 「犯してあげる。 中から、出す前に全部……ほら」

 「ひぃぃぃぃぃぃ!」

 ビクビクと息子がのたうつ。 出している感覚があるのに、出ていない。 息子を犯している『赤ワイン』女の一部が、精の袋から直接

精を貪っているのだ。

 「あぁ……おいしい……」

 「ひ……ひひ……」

 体をひくつかせ、椅子の上で男は悶え、男の上で婦警姿の『赤ワイン』女が乱れる。 赤い濡れ場は、永久に続くかの様に感じられ

た。


 「ふふっ、駄目ねぇ。 もっと頑張らないとつまらないわ……」

 婦警姿の『赤ワイン』女は、フラフラする男を立ち上がらせ、交番の外に放り出す。

 「ほら、行った行った」

 男は千鳥足でよろけつつ、交番を後にした。 

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