第九話 ツルの恩返し

3.父っちゃ と 坊ず は、山に柴を刈にいったげな


 チチッ、チチッ……

 「おう、目覚まし鳥かえ」

 ゴンベェは、がばりと起きた。 小屋の中はまだ薄暗いが、窓から見える稜線は白みがかり、夜明けまで間が無いことを告げている。

 「……ツルや?」

 寝床の脇を探る……が、誰もいない。 ゴンベェは、はぁとため息をついた。

 「夢だったかや……」

 寝ワラを片付け、粗末な着物を身に着ける。 冷たい土間の土をペタペタ踏んで表に出る。 と、夢ならぬ昨夜の女、ツルがそこにいた。

 「ぬし様、おはようございます」

 ツルが深々と頭を下げる。

 「おお、夢ではなかっただか」

 「はい?」

 「いやこちらの事だ。 しかし、おんめぇは早起きだなぁ」

 「ぬし様。 女は男に寝顔を見せるものではございませぬ。 さ、朝餉をどうぞ。 火が使えぬ身にて、さみしゅうものですが」

 「いやいや、そないなこと気にするでねぇ。 少しぐらいの引け目がねぇと、わっちの方が気後れするだでや」  

 「まぁ」

 ツルは、ゴンベェの背に付き従って小屋に戻る。 その背後で、畑の土が微かに動いた。

 
 その日の午後、ゴンベェの小屋の裏山に、近くの百姓親父が坊ずを連れて柴取り来ていた。

 「ほれ、坊。 お前もそろそろ役に立つだ」

 「うんだ、お父。 おらもう大人だで」

 坊ずは胸を張るが、その背は父親の半分ほど。 大人になるにはまだ数回は季節が巡る必要があるだろう。 それでも坊ずは張り切って柴を

集めていた。

 「柴刈るだ〜♪柴刈るだ〜♪……あれ」

 潅木の間から、奇妙なものが覗いていた。 草のような緑色をした塊が、にょっきり生えている。

 「なんだべ?……でっけぇ草……んにゃ、豆さやみたいだ」

 坊ずの見つけたそれは、それは豆のツルに生る『豆さや』を大きくしたような形をしていた。 ただ、その大きさが尋常ではない。

 「なんて大きさだ、おらが中に入れそうだ。 中身はでっかい豆だろか」

 子供は恐れ知らずだ。 目の前の『巨大豆さや』に近寄ると、中が見れないかと合わせ目から中を覗く。 そしてその願いはすぐに叶えられた。

 「わっ!?」

 『巨大豆さや』が、ピチピチ音を立てて開いていく。 しかしその中にあったものは、豆などではなかった。

 「お、おんなの子?」

 図らずも彼が呟いたように、『巨大豆さや』の中には子供が一人入るぐらいの空間があり、そこに目を閉じた少女が収まっていた。 彼より少し年上

だろう、んで、その肌の色は。

 「緑色だ……」


 パチリ

 少女が目を開けた。 黒く大きな瞳が彼を見ている。

 「あ、あの……わった!?」

 少女は、『巨大豆さや』から身を乗り出すようにして、彼を押し倒した。 『巨大豆さや』がマントの様に背中についている。

 「な、何するだ……ひえっ……」

 少女が笑った。 無邪気な笑みでも、可愛らしい微笑でもない。 隠微な、そして獲物を狙う獣の笑いだ。 しかし子供の彼には、その意味がわからな

かった。

 「うふっ……ふふふっ……」

 少女は含み笑いをしながら、彼に体を擦り付けてくる。 豆の中は濡れていたらしく、少女の肌はぬるぬるでベトベトした液体で濡れていた。 

そのためだろうか、彼の着物は少女の肌に張り付き、その動きで体から剥ぎ取られていく。

 「お、お姉ちゃん何をするだ……ひえっ?」

 少女はヌルヌルした手を、彼の下穿きに差し込んできた。 そして、変なところをさすっている。

 「へ、変なことをするでねぇ」

 少女はニタリと笑い、彼の耳元に唇を寄せた。 滑る頬の感触に、彼の顔が赤らむ。

 「うふふ……変なことを……するのよ」

 そう言うと、少女はその『変なところ』をきゅぅと握り、もみもみしている。

 「や……やめれ……ひっ」

 いつの間にか下穿きが脱げ、坊主の『変なところ』がむき出しになっていた。 少女はそこにまたがる様にして、腰を擦り付けてくる。

 「ほら……わかるでしょう? 私の『変なところ』が、お前の『変なところ』をなぞっているのが」

 ヌルリ……ヌルリ……

 彼女の言うとおり、彼の『変なところ』……いや『大事なところ』が、少女に変なことをされている。

 「ほぉら……固くなってきた……固く……かたぁーくなっていくのが判るでしょう」

 トック、トック、トック……

 胸の中で、坊ずの心がはげしく脈打つ。 少女の囁きの通り、『大事なところ』が固くなり、少女の『変なところ』が熱くなっていくのが判る。

 「ほら……動きたくなくなってきた……私にされたくなってきた……」

 彼には、少女が何を言っているのか理解できない。 しかし彼の体は、少女の言うとおり自由を失っていった。

 「さぁ、お前は私のものになるのよ」

 薄く膨らんだ緑色の胸、その乳首からタラタラと琥珀色の液体が垂れてくる。 密着した腰の間で、熱い蜜が溢れてくる。

 「お、お姉ちゃん……あ……」

 少女が胸を擦り付けてきた。 そして足を絡め、円を描くように腰を摺り寄せてくる。

 「あ……あぁ……」

 『大事なところ』が熱い。 熱い何かにはさまれ、じわじわと包み込まれていく。

 「ああ、お前の『アレ』が、私の中に入ってくる……」

 坊ずには少女の声が、とても遠くに聞こえた。

【<<】【>>】


【第九話 ツルの恩返し:目次】

【小説の部屋:トップ】