第八話 変

10.『ずぶり』の恋人に


 ヌチャ、ヌチャ……

 『ずぶり』の乳房の谷間、そこは魔性の快楽で満たされた場所。 少年にされた墨屋は『ずぶり』に弄ばれて女を、いや『ずぶり』を知ることになる。

 「あぁ……」

 乳首から流れた粘り気のある乳、それが墨屋少年を濡らす。 白く染まった瑞々しい少年の体を、巨大な乳房が優しく揉み解す。

 「暖かい……」

 穏やかな温もりは、墨屋少年をまどろみに似た不思議な快感に誘った。 体から力が抜け、心は穏やかになり、全てを受け入れる準備が整えられていく。

 ”うふん……”

 フヤフヤフヤ……

 乳房が、少年をあやすように波打ち囁く。

 ”好きよ……”

 「僕も……好き」

 ”大好きよ……”

 「僕も……大好き」

 ”交わりましょう…”

 「交わろう……」

 ”深く……深く……”

 「深く……深く……」

 呟きが心に、その奥底に染みていく。 墨屋の傷が、女性に対する恐怖が埋められていく、『ずぶり』の言葉で……

 「深く……もっと深く……」

 墨屋少年は幸せな気持ちで深い快楽に浸る。 やさしい乳房にくるまれて、温もりの中で『初めて』を迎える。

 「あ……ぁぁぁぁ」

 ヒック……ヒック……ヒック……ヒック

 密やかな絶頂に幼いからだが震え、喜びに満たされる。

 ”さぁ……やり直しましょう……愛しい人……”


 「……?」

 墨屋はぼんやりと辺りを見回した。 子供の頃の夢を見ていたような気がする。

 「……!?」

 首筋にひやりとするものが巻きついた。

 「だ、誰だ!?」

 振り返ると、美しく白い顔が視界に入ってくる。 

 「いらっしゃいまし……」

 ねっとりとした女の声が耳に絡みつき、次にやわらかい重さがのしかかって来る。

 「ず、『ずぶり』……」

 正体が判った途端、鼓動が跳ね上がった。 そして……ズボンの前がせり出してくる。

 「ぬふっ……」

 白い蛇のような腕が墨屋のズボンの中に滑り込み、彼自身に絡みつく。 ぬめる指先が精の証を揉みほぐし、男の宝玉を求めてやまない。

 「うはぁ……」

 墨屋は熱いため息を漏らし自分の上着に手をかけてボタンを外す。 そして胸元を広げて、背後の『ずぶり』に自分から抱きつき、唇を合わせる。

 ヌチャリ……

 生暖かい『ずぶり』の乳房が墨屋の胸に粘りつく。 墨屋はかまわず、自分の胸を『ずぶり』の乳房に擦り付ける。

 「あぁぁ……」

 『ずぶり』が喜びの声を上げ、粘っこい乳で墨屋の胸を白く染める。 そして墨屋は……

 「ひぃ……もっと……もっと……」

 滑る乳に濡れながら、『ずぶり』の胸をもみし抱く。 握れば溢れ、抱けばくびれる『ずぶり』の乳。 その柔らかな感触に墨屋は溺れる。

 「はぁぁ……」

 『ずぶり』が高まるにつれ、乳房はずんずんと膨らんで墨屋の手からはみ出し、腕から溢れ、逆に墨屋を包み込む。 しかし墨屋はそれを恐れるでもなく

自分から乳の谷間に潜り、そこを攻め立てる。

 「ここか……ここだな……どうだ」

 「あぁ……たまりませぬ、そのように激しく……あぁ……おさえきれませぬ」

 すでに墨屋の視界は乳で遮られ、その上半身は乳に包み込まれていた。 そして、今度は下半身にしっとりとしたしたものが絡み付いてくる。

 「さぁ……こちらも……」

 腰が擦り付けられ、女陰が陽根に擦り寄ってきた。 あっという間に彼自身が『ずぶり』に呑まれる。

 「あぁぁ……」

 ヌメヌメしたモノが彼自身を攻めあげ、えもいわれぬ感触で熱い奥に誘う。 墨屋は腰を動かし、誘われるまま『ずぶり』の奥に自分自身を突きこむ。

 「うぁぁ……」

 声を出したのは墨屋の方だった。 興奮し熱く蕩けた『ずぶり』の奥は、肉の極楽以外の何者でもなかった。 墨屋自身は其処にはまり、熱い精をトクトクと吐き出す。

 「感じます……愛しい方……もっと……もっと」

 『ずぶり』が彼の肉棒を伝って這い上がってくる。 溶けた『ずぶり』が彼の腰を包み込み、さらに下半身を包もうとしている。

 「呑まれる……ああ、呑み込まれる」

 墨屋は狂気にも似た歓喜の声を上げた。 彼の心には、其れがどれほどの快楽であるかを刷り込まれており、拒むことなど出来る筈もなかった。

 「溶ける……蕩けていく」

 「おいでませ……私の中に……私と交じり合い……快楽のうねりを楽しみましょう……」

 『ずぶり』は形を崩し、墨屋を包み込んだ肉のオブジェと化した。 その中から墨屋の喘ぎと『ずぶり』の睦声がもれ聞こえる。

 そして墨屋は『ずぶり』と交わっていく、『ずぶり』の恋人として。

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