第八話 変

3.女に


 少年の濡れた瞳に仲居の顔が映る。 桜色に染まった唇が微かに動く。

 『……愛して……女の人みたいに……』

 少年の言葉は、不思議なほどはっきりと聞こえた。

 仲居は少年の傍らに寝そべり、彼の体をエアマットに預けた。 そして彼の右腕を乳房に挟み、耳元に何か

ささやきながら、彼の下腹部に手を伸ばす。

 「感じるままに……望むままに……変わりなさい……」

 仲居の手は彼のへその下に重ねられ、そこでゆっくりと円を描きはじめた。

 あ……

 少年が僅かに仰け反り、白い喉をみせる。 仲居の手の下で、下腹がヒクリ、ヒクリと小刻みに震え、以外に

逞しい太ももが摺りあわされる。

 「助けを……」

 仲居が宙に言葉を流す。 すると、少年の足先に白いもやもやとした物があらわれた。 その『白いもの』から

手が伸び、少年の足に触れた。

 ん……

 少年の視線が向けられると、『白いもの』は仲居と同年代の、全裸の女性に代わった。 その女は、少年の足先

から手を滑らせ、太ももを掴む。 そして少年の足を開くようにそっと力を加えた。

 ……

 少年は逆らわず、足を開く。 大人になりかけの少年自身が、さらけ出され、恥らうように縮こまる。

 「可愛い……」 「ほんに……」 女と仲居は微笑んだ。 

 女は、身を乗り出すようにして少年自身に顔を近づけ、縮んだ先端を軽くはむ。 すると、ぺろりという感じで、

隠れていた亀の頭が顔を出した。

 あ……

 微かに顔を赤らめる少年に、仲居がほお擦りをした。 そして仲居が下腹を愛撫し、女が亀頭の舐め上げる。 

二人は、一つの生き物のように動き、少年を慈しむ。

 あ……ん……

 ヒクリ、ヒクリ…… 

 少年は、女達に身を任せ、その愛撫に浸りきる。 股間のモノは、固くしこりそそり立とうとしていた。

 ズ……ブッ……

 うっ……?

 不意に少年のモノが縮んだ。 太さはそのままに、長さが短くなったのだ。 見れば根元の辺りがいびつに

なっている。

 「御覧なさい……」

 仲居に促され、少年の視線が自分のものに向く。 股間のモノの周りで皮が盛り上がっている。 少年自身は、

イチモツと二つの玉に圧力を感じた。

 「さぁ……」 「感じて……」

 仲居の手が、女の口が、少年の下腹と少年自身を優しく愛撫する。 甘く痺れるような陶酔感で、腰が蕩けそうに

心地よい。

 あ……あぁぁ……

 足が勝手に動き、股間に力が入る。 すると玉と少年自身が、足の間に挟まっていく様な不思議な感覚が

沸いてきた。 性器がジンジン疼き、少年は感じるまま足を動かす。

 ズリュ……ズリュ……

 んーー……

 狭いところで二つの玉が擦りあわさる。 甘く痺れる快感が玉から搾り出されている様で、たまらない心地よさだ。 

少年は腰と足を動かし、甘い喘ぎを漏らす。

 『アレが……アレが……溶けちゃいそう』

 「いい気持ちでしょう……坊やは『女』に変わりつつあるの……」

 あ……ん……

 仲居の言葉に少年は喘ぎで応じた。 その足の間にもはや二つの玉の姿はなく、淫靡に蠢く肉の隙間から、

トロトロと涎のような雫がたれている。 そして小さな怒張も、亀頭を残して胎内に引きずり込まれていた。

 あは……いい……とってもいいの……

 少年の唇は笑みの形に緩み、こちらからも一筋の雫が流れている。 仲居は少年の雫を舐め上げ、唇を重ねる。 

少年は夢中で仲居の口を求め、舌を絡めてきた。

 むふぅ……あふぅ……

 その間にも、少年の股間は『変身』を続けていた。 亀頭だったものは、女としてあるべきところに収まり、美しい

女の真珠に姿を変えていく。 テラテラ光り震える真珠に、少年の股間を愛していた女が口付けし、強くすった。

 んーー……!!

 激しい女の絶頂が、出来たばかりの女の神秘を締め上げる。 少年の体は、腰からあふれ出す女の快感に支配

され、激しく震える。 その快感の中で、少年の理性は奪われ、魂は女の性に染め上げられていった。

 ふっ……

 再び失神した時、『彼』は『彼女』になっていた。 体つきは固いものの、全身から不自然なほどの色気が溢れ、

股間で生まれたばかりの『女』が妖しく息づいている。 そして少年だった体も、じわじわと柔らかい少女、いや女の

体に変わりつつあった。 それはあたかも、『女』が少年の体を乗っ取っているかのようだった。


 「気持ちよかった?……」

 仲居は囁くと、少女になった少年の右半身に自分の体を絡ませる。 そして少女の下半身を愛撫していた女が、

少女の左半身に体を重ねた。

 『……』

 少女はのろのろと目を開け、二人を交互に見やった。 仲居と女は、少女に微笑みかけると、それぞれの豊かな

胸を少女の胸に押し付け、少女の乳首に自分たちの乳首を重ね、体を揺らし始めた。

 はぁ……

 たっぷりとした乳房が、薄い少女の胸の上で重々しく揺れ、初々しい少女の胸に、女達のしっとりとした肌と、

ザラリとした乳輪の感触が甘い感触を刷り込んでいく。

 あーー……

 少女の瞳がトロンと濡れてきた。 乳首が甘く疼き、胸のあたりにもやもやと圧力を感じる。 そして……

 あ……

 小さな絶頂が背筋を走りぬけ、同時にヒクンと胸が振るえ、少し膨れた。

 「今の……よかった?」

 仲居の質問に、少女はこくんと首をふって肯定する。

 「もう少し……感じる体にしてあげる……そして、愛してあげる……ずっと……ずっと……」

 仲居の言葉に少女は淫靡な笑みで応じ、自分から仲居の胸に自分の胸をあわせ、体を揺する。 甘い声を

上げて少女がいく度その胸は膨れ、少女は『女』へと変貌していく。 


 「……」

 若者達は声も無く、その淫靡で不可思議な男女の交わりを見つめていた。 画面の中では、少女と仲居と女は

互いの体を求めて複雑に絡み、いつ果てるとも知れぬ快楽の宴に興じている。 

 「かの宴に終わりはありませぬ」

 涼やかな声に、若者達は、はっとして振り向いた。 そこには、白い着物を着たあの女将が座っていた。

 「あれはなんだ!」 黒川が声を荒げた。 「あんな事があるわけがない! ここは『イメクラ』じゃないのか……」

 黒川の言葉が尻すぼみになった。 彼は『イメクラ』という言葉から、一つの馬鹿馬鹿しい、そして恐ろしい可能性に

気がついたのだ。

 「ここは『イメクラ』です」 女将は妖しい微笑で告げた。 「お客様は、此処で望むものに変化し、尽きることの無い

快楽の中で、この世の終わりまでここに留まるのです」

 「なんだそれは……何なんだお前、いやお前達は!?」

 「我らは『ずぶり』。 人は我らをそう呼びます」

 女将の言葉は、若者達にとって何の意味も持たなかった。 女将はするりと着物をはだけ、豊かな胸を晒す。

 「う?」

 めまいにも似た欲望が沸き起こる。 若者達は、女将に吸い寄せられるような錯覚を覚えた。

 「我が乳を召し上がりなさいませ。 我らは決まった形を持たぬ、神の眷属。 わが乳を口にすれば、あなた方も

その恩恵に預かれるまする。 望みの姿に変わりて、快楽を欲しいままにできましょうぞ」

 「なに……お前達のおっぱいを飲むと、変身するだと? そうか、その乳の力であの子を女に変えたのか」

 「おお、なるほど。 ここは客が姿を変える『イメクラ』だったのか。 いやー思いつかなかった」

 「馬鹿野郎!! 呑気に納得するな!!」

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