第八話 変

2.少年は


 「どこがイメクラだ?」

 「さぁ?」

 四人は、落ち着かない様子で辺りを見回す。 彼らが通されたのは、旅館の外見そのままの広い和室で

そこが待合室らしかった。 そして、そこには先客がいた。

 「なぁ……あれはまずいんでないか?」

 「高校生、ひょっとして中坊だぜ」

 彼らと斜向かいの位置に少年が一人いた。 うつむいたまま、砂摺りの壁に背を持たせかけて座り込み

こちらを見ようともしない。

 「別にいいんじゃねぇか?」

 「馬鹿、危なぇ店だったらどうするよ。 ぼったくりとか、サツの手入れとか」

 少年の事より、自分たちの事が気がかりのようだ。


 「失礼いたします」

 音もなく扉が開き、白い和服の仲居が入ってきた。 四人の若者に会釈をしつつ、少年に優しい言葉をかけて

立たせ、外へと案内する。

 「ねーちゃん。 ここは旅館のイメクラか?」 出て行こうとする二人に墨屋が声をかけた。

 ぶしつけな質問にも、仲居は動じる様子も無い。

 「はい、こちらは『いめくら』でございます。 『さぁびす』の内容については、お客様のご希望を伺ってからと

なっています」

 「へぇ……じゃ、どんなサービスがあるか、メニューでもないのか?」

 「まことにすみません。 『めにゅう』は用意しておりません。 私は、この方のお世話を致しますので、別の者が

説明いたします」

 仲居はそう言うと、少年を伴って部屋を出る。 入れ替わるように、別の仲居が入ってきた。

 「失礼いたします。 私が『さぁびす』の説明を致します」

 そう言うと、仲居は部屋の隅にあった液晶TVのスイッチを入れる。 そこに映ったのは、なんと先ほどの少年と

仲居だ。

 「おいおい、この店は他の客のプレイを見せるのかよ」

 「ご安心を、前もってお断りいただければ、密室プレイも暗黒プレイもお楽しみいただけます」

 「いや……あ? 固い事いうな? 生の危ないプレイがみれる……うひひ、そうだな」

 四人はTVの前に座り込み、少年のプレイを『見学』する事にした。


 「……」

 少年は、見慣れぬ間取りに戸惑っているようだった。 そこはベッドとバスと洗い場が一つになった……

何のことはない、いわゆる『風呂屋』だった。 少年を案内してき仲居は、優雅な手つきで帯を解き、襦袢を

脱いでいく。

 「坊やは初めて?」

 少年は『坊や』と言う言葉に反応し、仲居を睨みつけたが、白い裸身を見ると赤面し、視線をそらした。 

 「どうだっていいだろう」

 言い放つ少年の首に、縄目がついていた。


 「おい……」

 「首吊り未遂か? 暗ぇやつだね」


 佇む少年の前で、仲居はエアマットを洗い場に敷いた。 やや順番が違うようだが、少年はそれを知らない。 

仲居はエアマットに横ずわりし、やや離れた少年を上目遣いに見る。

 「女の人は嫌い?」

 仲居の問いに、少年は顔を赤くする。

 「ここでは、自分に正直になっていいのよ」 

 少年はおずおずと顔を上げる 仲居の裸身をしばらく見つめ、慌てて目を逸らす。

 「内気なのね。 いいわ、誘ってあげる」

 仲居は、豊かな胸をそらしぎみにする。

 「さぁ、私を見て」

 少年は、再び顔を上げた。 母性の象徴が少年の目を引きつける。

 「見て……」


 仲居が、ゆったりと体を揺すっている。 胸に並んだ二つの果実はそれぞれ逆方向に小さく回り、薄紅色の

乳首がゆったりした円を描く。

 「……」

 少年の視線が、乳首から離れない。 やや強張っていた表情が緩み、安らいだものに変わっていく。

 仲居が、少年に他を差し伸べると、少年はゆっくりした動きでワイシャツのボタンをはずし、黒いスラックスを

脱ぎ落とした。 そして生まれたままの姿になると、エアマットの上で誘う仲居に、歩み寄り、その腕に体を委ねた。

 はぁ……

 少年は目を閉じ、安らかな吐息を漏らした。 仲居の体は柔らかく彼を受け止め、仲居の放つ女の香りが彼を

包んでいる。 このままずっと……そんな心地よさが、そこにあった。

 仲居の手が、彼の頬に触れた。 目を開くと、仲居は彼の唇を求めていた。

 少年は、ふっくらした赤い唇に口づけする。 唇を割って、仲居の舌が彼の口腔に滑りこみ、彼を味わう。 

彼の舌が、親を慕う子供の様に仲居の舌を追いかけ、二人の舌は湿った洞穴の中で激しく睦みあった。

 ふぅ……

 少年が息をつくと、仲居が彼の手を捕らえ、右手を胸に、そして左手を女性の神秘に導いた。 左手の滑る感触に

少年は躊躇した。

 あん……

 仲居が甘い喘ぎを上げた。 少年は、その声が天使の喘ぎに聞こえた。 その声をもっと聞きたい、彼の体が

そう望んだ。

 あ……あぁん……

 少年の左手は、神秘の谷を行きつ戻りつして快楽の泉を溢れさせる。 そして右手は、極上のマシュマロの

ような果実に捕まり、求められるままに愛撫を続ける。

 あ……あ……あぁ……

 仲居の声に操られるように、少年は右の乳首をはむ。 唇が乳房に触れると吸い付いて離れなくなった。 

少年は構わず乳首を舌で転がし甘噛みする。 仲居は少年をしっかりと抱え、その愛撫によがった。

 あぁ……

 仲居の手が、少年自身を弄った。

 ひゃぅ

 いつの間にか固く張り詰めた少年自身は、触られるだけではじけそうだ。 仲居はそれを巧みにあやしつつ、

少年の腰を両足でくわえ込む。 神秘の谷は女体の顎と化し、少年自身をくわえ込む。

 うっ……

 少年自身が蕩けるように柔らかい肉に包み込まれた。 そして甘い、とても甘い愛撫が彼を襲う。

 あぁ…… あぁ…… あぁ……

 少年の両手と口が、仲居の胸を愛撫する、仲居の望むまま。 肉襞の動きが、仲居の喘ぎが、少年の体を通り

抜け、彼の手と口を動かしている様だ。 今、彼と仲居は一つの生き物だった。

 あ……くぅ……

 きゅっと絞られた肉襞が、熱い精を求めてきた。 彼は流されるままに、仲居に精を捧げた。

 あー!!!

 仲居の体がビクビクと振るえ、彼をぎゅっと抱きしめる。

 このまま、仲居にうずまってしまうような錯覚を覚えつつ、少年もまた極上の高みに押し上げられた。 二人は

しばし、固く抱きしめあった。


 「くふぅ……」

 時が弛緩し、少年は息を吐き、自分を慰めたときのような空虚な虚脱感に浸る。

 「どうだった?」

 仲居の顔がまともに見れず、彼はその胸に顔を隠した。 乳の香りが彼を包む。

 「素敵だったわよ」

 仲居の声には、女の性が濃くにじんでいた。 少年は顔を挙げ、何とはなしに言葉を発する。

 「女の人って、どんな風に感じるの?」

 仲居は微笑み、白い手を少年の下腹に重ねる。

 「ここにね、暖かい愛が溢れて。 とっても幸せな気持ちになるの。 そして、とても心地よくなって……

しばらく続くの」

 少年は、仲居の笑顔に嫉妬した。 なんだか不公平な気がしたのだ。 そして、彼はそれを言葉にした。

 「……そう、あなたは女の快楽を感じたいのね」

 仲居は笑った。 さっきまでの微笑とは少し違う、どこか狂ったような笑みだった。


 仲居は、少年を抱きなおし、乳を彼に見せ付ける。 乳首がゆっくり円を描きはじめる。

 「……」

 少年は、自分から乳首を見つめる。 魂が吸い込まれていくような気分になり、誘われるままに乳房に

口付けた。

 もぁ……

 柔らかい乳が、彼の唇に張り付く。 が、今度は柔らかい乳房はふわふわと蠢き、彼の口に入ってくるではないか。

 あ?……あ……あ……

 不思議と苦しくはなかった。 それどころか、柔らかい乳房に口の中を愛撫されていると、口腔がたまらなく

心地よいのだ。

 「気持ちよいでしょう? それは私達だけの特別な技。 いま、貴方のお口は、女の人の下のお口と同じ、そして

私のおっぱいは……うふ」

 ふぁぅ……

 少年は、口いっぱいに乳、いや『おっぱい』をほお張らされ、犯されていた。 感じるところが近い為か、彼は頭の

中を『おっぱい』で愛撫されているような気になった。

 「そろそろ、よくしてあげる……」

 ヒクヒクヒクヒク……ドブリ、ドブリ、ドブリ……

 ねっとりとした生暖かいクリームの様な『乳』が彼の口腔に溢れる。 なんという甘さ、いや味覚とは違う。 

それは『快感』だった。 粘る『快感』が彼の粘膜を覆いつくし、じんわりと染み込んでいく。

 んー…………

 頭の中に『快感』が染み込んでくる。 少年は『快感』に浸りきり、幸せな暗黒に落ちていった。


 仲居は、腕の中で失神した少年を愛しげに抱きしめ、囁く。

 「さぁ……貴方の希望を……言葉に……」

 少年の唇が微かに動いた。

 「女に……女の人に……なりたい……そして……いっぱい愛されたい」

  少年の目がゆっくり開く。 潤んだ瞳が、宙をさまよっていた。

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