電子妖精セイレーン

増殖(5)


 琉特は『セイレーン』の胸に顔を埋め、谷間に舌を這わせた。

 『きゃっ! くすぐったい』

 『セイレーン』はおどけた調子で呟きながら、琉特の背に手を回して彼を引き寄せる。

 『んんー……』

 琉特は頬に纏いつく柔らかな感触楽しみつつ、『セイレーン』の顔に向けて体をずらしていった。 『セイレーン』の乳房の感触が肩から胸へと移っていき、

二人の乳首が互いの胸をくすぐる。

 『んむ』

 『ちゅう』

 琉特は『セイレーン』の唇に自分の唇を重ね、強く吸った。 『セイレーン』の舌が、彼の口の中へ滑り込んで、中を舐めまわす。 『ぷはっ』

 口を離して息を吐き出すと、『セイレーン』が右手で彼の首にしがみつき、左手を彼の股間へと滑らせてきた。 ヒヤリとした感触の細い指が熱い肉棒に

絡みつく。

 『わぁ、元気いっぱい』

 『セイレーン』が感嘆の声を上げた。

 『う、うん』

 琉特は、やや恥ずかしそうに頷くと、自分も『セイレーン』の下腹に手を這わせた。 つるりとした肌の先に潤う谷間の感触。

 『エッチ』

 『ご、ごめん』

 『セイレーン』はクスリと笑い、琉特のモノで自分の谷間をなぞった。 はち切れそうな亀頭が『セイレーン』の愛液で濡れる。

 『あ』

 『いい?』

 コクンと琉特が頷くと、『セイレーン』は自分の中に琉特を迎え入れた。

 『ああっ……』

 亀頭が優しい温もりをかきわけ、濡れた襞が肉棒に纏いつく感触。 心地よい感触と共に、琉特の中で雄の本能が目を覚ます。

 『いくよ』

 ゆっくりと腰を動かす琉特。 亀頭が『セイレーン』の中で前後する感触がはっきり感じられる。

 『あう』

 『ああ、いいよ……』

 『セイレーン』の中はたまらなく心地よかった。 纏いつく肉襞の感触、熱く湧き出る愛液、亀頭を待ち構える神秘の極み。 琉特の頭から自分自身が

消え、男性自身がすべてになる。

 『ああっ……』

 『セイレーン』の秘所が彼を包み込み、淫らな肉の衣で彼を包み、余すことなく愛撫する。 体を包む快楽に、体が溶けてしまいそうだ。

 『はぁ……あああ……』

 『きて……』

 『セイレーン』に促されるままに己を解放する。 体が震え、熱い情熱が迸るのを感じた。

 『あああっ!』

 熱い快感に若い体が支配される。 『セイレーン』の中で、琉特は雄の歓びに震えた。


 「『午前中ならば時間があります。 大学前の喫茶店にてお会いしましょう』……」

 エミはアイスコーヒーを飲みながらスマホでメールをチェックしてたいた。 昨日、メールを鉦助手に送ると、すぐにこの返答が返ってきた。 それで、今は

待ち合わせているという訳だった。

 「あ、きた」

 喫茶店に鉦助手が入って来た。 あちこち視線を巡らした彼は、エミを見つけると向かいの席に腰を下ろし、挨拶をする。

 「お忙しいところ、申し訳ありません」 エミが頭を下げる。

 「いえかまいません。 それでご用件はなんでしょう? 『尋ねたいことがある』とのことでしたが」

 「はい、少し長くなりますが」

 エミは、マジステール大学と付属高校の学生の間で、奇妙なサイトの情報が広まって問題になっていたことを告げた。

 「そうですか、それは知りませんでした。 しかし、それはうちの大学の問題の様ですが、なぜあなたがそれほご存じなのですか?」

 「そのサイトにアクセスした学生が、異常……いえ興奮した様子で私の被保護者を追いかけ、警察に通報されたからです……あ、ご心配なく。 被保護

者は、『大学生のお兄ちゃんが遊んでくれた』ぐらいにしか思っていませんでしたから」

 「そ、そんなことが……」

 うろたえる鉦助手に、エミは落ち着いた様子で話を続ける。

 「警察の方も、調書を取っただけで不問にしてくれました。 それに問題のサイトは、レンタルサーバから削除されたらしいと、これは警察の方から連絡が

ありました」

 「そうでしたか。 当校の学生がご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした」

 深々とお辞儀をした鉦助手だったが、不安げな様子は消えていない。

 「それでここからが本題なのですが、その学生の話では、サイトにアクセスすると『セイレーン』と名乗る女性が相手をしてくれたと言うのです」

 「『セイレーン』ですか? うちの実験装置『電気頭脳』と同じ名前ですね」

 「ええ、そこなんです。 お尋ねしたいのは」

 「はい?」

 「率直に言います。 その学生がアクセスしたサイトは、その『電気頭脳』に関係した……いえ、『電気頭脳』にアクセスしたのではないでしょうか?」

 「はぁ?」

 鉦助手は少しの間ポカンと口を開けていた。 それから瞬きし、困惑した表情になった。

 「……その、どうしてそう言う話になったのでしょうか」

 「根拠あってのことではありません。 部外者の思い付きです」

 エミは断言して続ける。

 「『セイレーン』と言う名前が同じだったこと。 次に『電気頭脳』が本格的に稼働しだした直後に、そのサイトの情報が広まった点。 最後にサイトの情報が

広まったのが、マジステール大学と付属高校だったことです」

 「そ、それだけですか」

 鉦助手は笑うべきか、怒るべきか決めかねているようだった。

 「それだけです。 ただ、関連性が3つもあるとなれば、一応疑ってかかるべきでしょう」

 「う、疑ってて……あなた、『電気頭脳』はそんな装置じゃありません。 人間の意識のシミュレータというか……」

 「はい、前に説明していただきました。 その時に、『予想外の反応を示した』と言われていましたよね」

 「それは……そうですけど。 でも、『セイレーン』がネットにサイトを開いて、そこにアクセスした学生が異常になったと? それは無理ですよ。 第一、

『セイレーン』は大学の実験棟の奥に設置されていて、外部からはアクセスできません」

 「大学のネットワークは私のあずかり知らぬところです。 ただ昨今、スマホ一つあれば外部ネットへの接続は可能ですよね」

 「う……」

 「私は警察ではありませんし、私の問題でもありません。 無関係な第三者です」

 「そうですよね……」

 「私はどうでもいいんです。 『電気頭脳』が『セイレーン』のサイトに関係していようがいまいが。 でも、もし『電気頭脳』と『セイレーン』サイトが関係

していたら、鉦先生は困ったことになるのではないですか?」

 「きょ、脅迫するんですか?」

 「脅迫なんて、事実を述べているつもりです。 それに、何かを要求しているわけではないでしょう、私は」

 エミにそう言われ、鉦助手はエミが何かを求めているわけではないことに気が付いた。

 「それで、あなたは私にどうしろと?」

 「確認したかっただけです。 『セイレーン』サイトと『電気頭脳』が関係しているのか」

 「でしたら断言します、関係はないと」

 「証明……いえ、確信を持って言えますか?」

 反論しようとする鉦助手をエミは押しとどめた。

 「貴方は自分の設備を監督する責任者ですよね。 責任者として、『セイレーン』サイトと『電気頭脳』は無関係であると、自分自身が確信していますか?」

 エミに迫られ、鉦助手は黙ってしまった。

 「私は貴方に対して、何を言う資格も、権限も、義理もありません。 ですからただ尋ねるのみです、『セイレーン』サイトと『電気頭脳』は無関係であると、

責任をもって断言できますかと」

 エミは一気にしゃべるとも深々とお辞儀をした。

 「いきなりこんなことを言われ、不快であったと思います。 その点はお詫びします。 ただ、私はどうしても疑念が消えないのです。 『セイレーン』サイトと

『電気頭脳』に何かつながりがないのかと」

 「……確認してみましょう」

 鉦助手は苦いモノを吐き出すように言った。

 「時間の無駄だとは思いますが」
 
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