電子妖精セイレーン

変異(9)


 「あ……ふ……」

 ヘッドセットをつけたエミの口から妖しい呻きが漏れた。

 「えーと……ほっといて大丈夫かしら」

 麻美は呟き、宙を見つめているエミとPCの間で視線を往復させる。

 「……!?」

 エミの髪が動いていた、いや、髪の下からエミの『角』が姿を現そうとしている。

 「こ、こんなところで正体を出さないでよ!? あーどうしよう。 ス、スイッチを切った方が……」

 麻美はPCに手を伸ばし、寸前で止めた。 思いとどまったわけではない。

 「あーん、操作の仕方が分からない」

 
 『ふふ……可愛いわよ……』

 エミは『セイレーン』の秘所へ、そっと口づけした。 横たわる少女の体がビクリと震える。

 『あん……ああ……ああっ!』

 『セイレーン』が大きく体をのけ反らせ、クタリと床に崩れ落ちる。

 『いっちゃったのね』

 エミは『セイレーン』の脇に、添い寝するように身を横たえ、『セイレーン』の体を優しくなでる。

 『くすぐったいよぉ』

 鼻を鳴らす『セイレーン』に、エミ微笑みかけた。

 『いった後が大事なのよ、こうやって優しくしてあげるのがね。 男の子でも、女の子でも』

 『そーなんだ……そんなの見たことなかった』 『セイレーン』が言った。

 『見たって、どこで見たの?』 エミが尋ねる。

 『んとね、○○○とかXXXとか』

 『セイレーン』が答えたのはアダルト・サイトのURLだった。 どうやら彼女の知識は、そこから仕入れたものらしかった。

 (それで偏ってるのね……)

 エミは『セイレーン』の肩に手を回し、起き上がらせた。

 『ね、さっきのよかった?』

 『うーん……うん!』

 にこっと笑った『セイレーン』にエミも笑い返す。

 『ああやって、ゆっくり盛り上げて、気持ちよくなってくれた後、さらに優しくしてあげるといいのよ』

 『そうなんだ……そうしたら、いっぱい笑ってくれる?』

 『笑う?』

 『うん! 笑ってくれると、ボクうれしいんだ!』

 『へぇ……そうなんだ』

 笑って答えながら、エミは『セイレーン』の性格について考える。

 (あまり考えているようには……いえ、考えなしに気分の赴くままに行動しているとしか思えない。 やはりスーチャンより『幼い』……いえ、生まれて

間もない?)

 『……どしたの?』

 はっと気が付くと、『セイレーン』がエミの顔を覗き込んでいる。

 『ああごめんなさい。 ちょっと考え事をしていたの』

 『ふうん……』

 『セイレーン』は首を傾げたが、すぐに笑顔に戻る。

 『今度はボクがしてあげる』

 そう言って、『セイレーン』エミに身を寄せてきた。

 『へぇ、お姉さんに挑む気ね』

 『挑む? ううん、お姉さんを笑わせたいだけだよ』

 にっこりと笑った『セイレーン』の笑顔はまさに『天使』のごとし。 しかし、エミはその中に危険なものを感じた。

 (もし生まれたばかりと言う推測が当たっていると、加減を知らないかもしれない。 でも、ここで終わらせると何も有益な情報が得られない……)

 エミは、『セイレーン』をそっと抱きしめた。


 「ああっ……もう」

 麻美は焦っていた。 角だけでなく、エミの背からは羽が、尻からは尻尾が伸びてきたからだ。 特に尻尾は蛇のように這いまわり、狭い個室の壁を

叩こうとする。 間仕切りでしかないネットカフェの壁を尻尾が叩けば、隣の部屋から苦情が出て、店員が様子を見に来るかもしれない。

 「さ、触っても大丈夫よね」

 麻美はエミのしっぽをハンカチで包み(直接触るのがなんとなく嫌だった)、動かないように抑え込むもうとした。 意外に力強い尻尾に悪戦苦闘する

羽目になった。


 『んふ……ふふっ……』

 『やるじゃない』

 エミと『セイレーン』は、正上位で互いの胸を擦り合わせる。 エミの乳房の方がやや大きく、『セイレーン』は押され気味だ。

 『じゃ、スーチャン直伝の技ぁ』

 『へ?……ひゃあ?』

 『セイレーン』を抱きしめていたエミの腕が、その背中にめり込む。 同時に『セイレーン』の乳房がドロリと溶け、エミの乳房を半ばまで呑み込んだ。 

そして、肌色だった『セイレーン』の体が、透明な赤色に変わっていく。

 『わわっ……これは驚いた』

 『へへー、すごいでしょ』

 『セイレーン』は得意そうに言うと、体の表面をヌルヌルにし、エミを全身で愛撫し始めた。 

 『ああん……』

 甘い声を上げるエミの顔を『セイレーン』は嬉しそうに見つめる。

 『いくよ……』

 宣言した『セイレーン』は、エミの足の間に自分の足を滑り込ませる。 しなやかに滑る足が、エミの秘所を柔らかく刺激する。

 『ふっ……』

 息を吐いて刺激を逃したエミは、ヌルリと腰を滑らせ、自分の秘所を『セイレーン』の秘所に合わせたた。

 『ひぇ?』

 一瞬のスキを逃さずグリンと腰をうねらせたエミは、お互いの秘所を深くすり合わせる。

 『やぁん……』

 なんとか反撃しようとする『セイレーン』だが、踏んだ場数と年の差は如何ともしがたかった。 主導権を握られたまま、悦楽の渦に巻き込まれていく。

 『やん……ああん……』

 『ふふ……フフッ……クフフフフフッ……』

 笑っていたエミの瞳が金色に輝き、背中から黒い羽が伸び、尻からに尻尾が伸びて来る。 羽が二人の体を包み、伸びた尻尾が蛇のようにのたうち、

『セイレーン』の背後を脅かす。

 『ふやぁ? なに?』

 『ククッ…油断シテイルト……ホラ……』

 背後から迫ったエミの尻尾が二人の秘所の間に滑り込み、『セイレーン』の秘所へと潜り込んできた。 のけ反る『セイレーン』。

 『ひ……ぁ……ぁ……』

 『ホラ……ガンバリナサイ……』

 エミの言葉に『セイレーン』は自分を取り戻す。

 『う……がんばる……』

 『セイレーン』はエミに抱き着きなおし、体を強くこすりつけた。 ヌルヌルだった体がさらに柔らかくなり、エミの体を赤く染めていく。

 ゾクゾクゾク……

 エミの背筋を快楽の波が走り抜ける。 胸から腹に『セイレーン』の肌がへばりつき、ヌメヌメと蠢いている。

 『ヤルワネ……デモ、ココマデ来タラ、一気ニ……』

 『セイレーン』の中に潜り込んだエミの尻尾がグネグネと動き、『セイレーン』の急所とおぼしきところを摺り上げた。

 『!!!』

 一気に絶頂に押し上げられた『セイレーン』は目を見開き、くたりと気を失う。

 『ククク……カワイイ子……モット、教エテ上ゲル……』

 エミは、『セイレーン』の背中をスーッと撫でる。

 
 「うわぁぁぁ」
 麻美はエミの姿を見て頭を抱える。 角と尻尾、羽が伸び、目が金色に光り、完璧にサキュバス化している。

 「ど、どうしよう」
  
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