電子妖精セイレーン

変異(1)


 妖品店『ミレーヌ』。 そこは、古より伝わりし魔道の技にて作られた数々の魔法の品が並べられた、現実と異界のはざまに位置する神秘の場所……

 「おいこらミスティ。 スーチャンは『スマホ』が欲しいぞ」

 「スーチャン。 仮にもご主人様に向かって、使い魔がなんと言う物言いを……」

 「『スマホ』『スマホ』『スマホ』ォォォォ!!」

 店の片隅でにいた小悪魔ミスティに、使い魔のスーチャンが『スマホ』をおねだりしている。 抵抗していたミスティだったが、スーチャンの勢いにタジタジ

となり、『スマホ』の入手を約束させられてしまった。 しかし、ミスティは魔法の道具は作れても金はない。 スマホの入手は他人に頼ることになる。 まず

近場にいる妖品店の主人、魔女ミレーヌに相談する。

 「という訳で、ミレーヌちゃん『スマホ』作って♪」

 「……『スマホ』とは何ですか?……」

 「知らない♪」

 「……知らない物を作りようがないでしょう……」 ミレーヌが疲れた様子で首を横に振る。

 「おお、そうか。 ねぇスーチャン。 『スマホ』って何?」

 「あのね、うーんと高くて、いろんなことができる携帯電話の一種だって」

 「何、携帯電話!? これは電脳小悪魔としてはぜひ入手せねば……という訳で、ミレーヌちゃん、お願い♪」

 お気楽なミスティに、ミレーヌはため息をついた。

 「……貴女方は私を何だとお思いですか……」

 「魔法使いでしょ。 なら、スマホの一つや二つ……」

 「……ミスティ?。 その理屈ならば、悪魔を自称する貴女こそ『スマホ』なるものを作れるのではないですか?……第一、貴方の携帯電話だって……」

 「おお、そうだった」

 ミスティが取り出したのは古い型のピンク色の携帯電話。

 「これを下取りに出して、『スマホ』を手に入れよう」

 「……どこに下取りにだすと言うのですか……」

 魔法使いと小悪魔がずれた相談をしているところに、エミがやってきた。

 「何の相談?」

 「あ、ちょーどよかった♪」

 ミスティが振り返るとにっこり笑う。

 「『スマホ』買って♪」

 ミスティとスーチャンの「『スマホ』買って」攻撃にエミが白旗を上げたのは3時間後の事だった。

 
 翌日の午後、スーチャンは5人のハムスター幼女を連れて公園に遊びに来ていた。 ハムスター幼女たちは金髪を黒く染め、スーチャンは厚着をして

緑色の肌を隠しているが、相当目立っているためか他の子どもが近寄ってこない。 仕方なく、隅のベンチの方に行くとそこには先客がいた。
 

 「ふーい」

 太鼓腹は息を吐きながら公園のベンチに腰を下ろす。 リュックを傍らに置いて、スマホを取り出しメールだラインだSNSだと忙しく指を動かす。

 「これって時間の無駄だよなぁ……自動応答のソフトでも作ろうか…ややっ?」

 スマホの画面に、突然『セイレーン』の顔が現れた。

 「セ、セイレーン?」

 ”太鼓腹さん、こんにちわ”

 太鼓腹はあわててスマホを隠し、左右を見回した。 そして、顔を隠す様にしながらスマホにイヤホンを繋いだ。

 「こちらからアクセスしていないのに、どうやって繋いだんだい」

 ”あら?そんなの簡単よ……それより……会いたいの……”

 スマホの中のセイレーンが、熱っぽい視線を送ってくる。 相手が大学の地下の実験装置であっても、そう言われると男として悪い気はしない。

 「あーうん……そうだね。 帰ったらすぐアクセスするから」

 ”いや。 今すぐがいいの……♪”

 そう言ったセイレーンは、『歌』を歌い始めた。 イヤホンから『歌』が流れだし、太鼓腹の脳を直撃する。

 「わわっ!?」

 太鼓腹はスマホを過ぎり閉めたまま白目を剥いて硬直した。 そこに、スーチャンとハムスター幼女達がやってきた。

 「誰かいる……えーと確か……隣いいですか?」

 スーチャンは礼儀正しく尋ねたが、太鼓腹は白目を剥いていて返事をしない。 普通の子供であれば、気味悪がって逃げ出すところだが、あいにくスー

チャンもハムスター幼女達も、普通の子供ではなかった。 返事をしない太鼓のの両隣に座ると、太鼓腹のスマホを興味深げに覗き込む。

 
 太鼓腹は、自分が白い部屋の中いるのに気が付いた。 銅鑼や拍子木と同様に、彼も数回ここでセイレーンと会っていた。

 『わわ!? いきなりここか?』

 『そうだよ』

 そう言ったセイレーンは、太鼓腹好みの白いドレス姿の巨乳お姉さんの姿で彼に抱き着いている。

 『なぁ、ここっていったいどこなんだ?』 太鼓腹はセイレーンに尋ねた。

 『どこって?……ああ公園のベンチだよ。緯度と経度は……』

 セイレーンは笑顔でずれた回答を答える。 どうも、質問の意味を理解していないようだ。

 『あのなぁ……ちょちょっと……』

 セイレーンは気にした様子もなく、太鼓腹の股間を弄り出した。 男のモノが素直にそそり立つ。

 『んふ……ふふ……』

 セイレーンは巧みに太鼓腹のズボンを脱がしい固くなったモノを取り出し、自分の胸の谷間に迎え入れた。 驚くほど柔らかい乳房が、しっとりと太鼓腹の

モノを包み込む。

 『お、おい……ああっ……』

 セイレーンの胸の谷間は、信じられないほどの心地よさで太鼓腹を包み込む。 何も考えられなくなり、セイレーンに抵抗できなくなる。

 『さ……気持ちよくなろう……』

 セイレーンに囁かれた太鼓腹は、誘われるままに服を脱いで彼女の腕の中に飛び込んだ。 ふくよかな胸が彼を受け止め、白い両腕が彼を抱きしめる。

 『んむ……むふぅ……』

 太鼓腹はセイレーンの胸に顔を埋め、夢中で乳首を吸った。 柔らかな乳房が彼の顔を覆い、甘酸っぱい香りで鼻孔を満たす。

 『うふぅ……』

 太鼓腹は夢心地になりながら、やみくもにセイレーンに自分の体を擦り付けた。 固く反り返った自分のモノが、セイレーンの秘所に吸い込まれ、暖かな

ぬめりで包み込まれる。

 『はぁ……くぅ……』

 ず腰を動かすと、自分のモノがセイレーンの中を出入りするのが判った。 亀頭が滑る襞をかき分け、奥を突き上げる。 ザラリとした感触に、心地よく

股間が縮み上がっていく。

 『い……いく……』

 『いいわ……きて……』

 セイレーンの声と共に股間が快感で痺れ、激しく精が吹き出す。

 ドクリ……ドクンドクンドクンドクン……

 『いく……気持ちいい……』

 『いいわ……もっと……もっと良くなって……』

 終わらぬ絶頂が、太鼓腹を夢幻の幸福へと誘う。 かれは疑うこともなく、ただセイレーンの体に酔いしれる……


 「おおっ?」

 太鼓腹のスマホを覗き込んでいたスーチャンが声を上げた。

 「女の子が映っている」 スーチャンが言った。

 「おー」「ほんとだ」ハムスター幼女達が同意する。

 ”あれ? だれかそこにいるの?”

 太鼓腹のスマホから『セイレーン』の声が聞こえた。 彼女には、スーチャンたちが見えていないらしい。

 「スーチャン」

 「ハムその1」「ハムその2」……

 ”変わったお名前ね……ね、あたしと遊ばない?”

 「遊ぶ?」

 ”そう……ここにアクセスして……”

 スマホのセイレーンの上に、URLが表示された。 スーチャンは、そのURLを自分のスマホに写しとる。

 「ここにアクセスすればいいの?」

 ”そう……ふふっ……”

 スーチャンは、どうしようか言うように首をかしげた。 その時、白目を剥いて硬直していた太鼓腹が突然立ち上がる。

 「……うー……うがっ……」

 意味不明の言葉を発し、ぎくしゃくとした動きで歩くきだし……つまづいて転んだ。

 「わっ?」「なに?」「わー」

 スーチャンとハムスター幼女達は太鼓腹から離れ、彼を遠巻きにする。 転んだ太鼓腹はじたばたと不器用にもがき、ようやく体を起こした。 そして、

白目を剥いたまま不器用な動きでスーチャンたちに近づいてくる。

 「うが……」

 「こんなのみた事があるよーな……そだ! ゾンビ?」

 「えー?」「ゾンビ?」「わー初めて見た」

 思わぬ展開にはしゃぐハムスター幼女達。 その間にも、太鼓腹は彼女たちに近づいてくる。

 「えーと……どうしようか?」

 スーチャンはハムスター幼女達と顔を見合わせた。
   
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