電子妖精セイレーン
成長(4)
「おおっ、またここだ」
銅鑼は声を上げ、辺りを見回した。 『お姉さん』の歌が聞こえたと思ったら、真っ白な小部屋の中にいたのだ。
「どこなんだよ、ここは……おっ」
『はーい♪来たわよ』
さっきまでブラウザの中にいた『お姉さん』が、しゅたっと手を上げて挨拶する。
「来たって……俺がここに連れて来られたと思うんだけど。 この部屋っていったいどこにあるんだい? どっかのサーバの中に作られた『仮装現実』なん
だろ?」
『んー、ボクはそう言うのよくわかんないけど……ボクの感覚だと、ボクが君の中に入ったんだけどね』
「『お姉さん』が俺の中に?……するとさっき聞いた講義の様に、俺は夢の中にいるのかなぁ」
首をかしげる銅鑼に構わず、『お姉さん』は銅鑼に抱き着いてきた。
『そんなこと、どうでもいいんじゃないの』
明るい口調で、グラマラスなお姉さんが抱き着いてくる。 銅鑼は躊躇したが、すぐに鼻の下を伸ばして『お姉さん』とキスをした。
「むむむむ」
『んむむむ』
二人の口の中で、舌が絡み合い淫猥な音を立てる。
「ぷはぁ」
『んはぁ……ね、これって夢だと思うの?』
「うーん……まぁどうでもいいか」
銅鑼は深く考えるのを止めにした。 夢だとしても、肉感的なお姉さんが誘ってくれるのだ。 拒む理由はどこにもなかった。
『じゃぁ、気持ちよくしたげるね』
『お姉さん』はそう言うと、銅鑼のズボンを引き下ろし、立ったままの銅鑼の男性自身を大胆に咥え、舌で弄び始めた。
「わぁ」
いきなりの行為に流石に銅鑼はびっくりした。 『お姉さん』の両肩を掴んで引き離す。
「あれ? 良くなかった?」
けろりとした顔で尋ねる『お姉さん』に向かって銅鑼は疑問を口にした。
「そうじゃないけど……何でここまで積極的なのかなって。 話がうますぎるというのか……」
『ボクは君に喜んでほしいのさ』
「喜ぶ?」
『そ。 笑顔っていいなおそうか。 君が笑顔になると、ボクもうれしくなるんだ』
そう言った『お姉さん』の笑顔こそ、非の打ちどころのない笑顔だった。 その顔を見ていると、銅鑼もなんだかうれしくなってきた。
「そうなんだ。 じゃあ遠慮はいらないんだ」
『そうそう』
『じゃあ横になって』
銅鑼が床に横たわると、『お姉さん』は銅鑼に覆いかぶさってきた。 でっかいオッパイが銅鑼の胸の上にのっかり、『お姉さん』と銅鑼の間で餅の様に
形を変える。
「うわぁ、おっきい」
『んふふふ♪』
『お姉さん』は含み笑いをながら、銅鑼の上で体を揺らした。 オッパイがフニャフニャと揺れ動いて銅鑼の胸をくすぐり、『お姉さん』の足が銅鑼の足に
絡まって、むっちりした太腿が銅鑼自身に圧力をかける。
「うわぉ」
すでに大きくなっていた銅鑼自身は、『お姉さん』の太腿の刺激でガチガチに固くなってしまった。
『わぉ♪ やる気まんまん』
「う、うん」
銅鑼にその気はあるのだが、実技経験はほとんど無く、進め方が分からない。 どうしようかと考えていると、『お姉さん』がそれを察してくれた。
『ボクに任せてくれる?』
「あ。 うん、お願いします」
『お姉さん』は銅鑼自身を手で掴むと、そっと自分の秘所へと宛がった。 ヌルリとしたモノを亀頭に感じ、銅鑼はブルッと震えた。
『あ、いい表情。 好きだな、そういう顔』
「そ、そう?」
『じゃ、入れるね』
『お姉さん』は、銅鑼自身を秘所に宛がい、銅鑼の上にまたがると、ゆっくりと腰を落としていった。
「うあっ」
ヌルヌルした襞が銅鑼自身に絡みつき、快感が背筋をゾクゾクさせる。
「お、『お姉さん』のなか……凄い」
「ありがと♪ じゃ、もっと感じて」
『お姉さん』はゆっくりと腰を上下させた。 ヌルヌルした筒の中で、銅鑼自身が弄ばれ、亀頭が舐めあげられる。 想像以上の心地よさに、股間が縮み
上がり、ヒクヒクと蠢きだした。
「ああっ」
『あはぁ♪ 熱くて固くなってきたよ、君。 もっとも、もっと来て』
うっとりとした声を上げ、『お姉さん』は深く腰を沈めては、亀頭が抜けるギリギリまで腰を持ち上げる。 『お姉さん』が腰を落とすたびに、亀頭の先端が
『お姉さん』の奥底に触わり、快感に亀頭が痺れていく。
「いいよぉ、『お姉さん』さんの中」
『君のも凄いよ。 固くて、熱くて……ボクも……飛んじゃいそう……』
うっとりした顔の『お姉さん』は、銅鑼の上で腰を弾ませ始めた。 銅鑼のお腹の上で、グラマラスな『お姉さん』の肢体が淫らに上下して、銅鑼の視線を
くぎ付けにしている。
「い、いきそう」
『いいよ、いって。 そして来て』
『お姉さん』に誘われると同時に、抑えきれない絶頂の波が銅鑼を襲った。 頭が真っ白になり、止める間もなく銅鑼自身が熱いものを迸らせる。
ド……ドクドクドクドクッ……
『ふぁぁぁ、熱いよぉ』
銅鑼自身が放った熱い情熱を受け止めた『お姉さん』は絶頂に身を震わせ、忘我の表情で快感に身を委ねる。 そのまま二人は、動かなくなった。
「あああっ……」
『ふはぁっ……』
しばらくして二人は、同時に息を吐いて力を抜いた。
「よかったぁ」
『うん、喜んでもらえてボクもうれしいよ』
ニコニコと笑う『お姉さん』を見ていた銅鑼は、『お姉さん』に疑問を抱いた。
「ねぇ、俺の笑顔を見ているとうれしくなるって言ってたけど、俺の事……好きなのかな」
『うん、大好きだよ♪』
『お姉さん』は笑顔で応えてくれるが、銅鑼は『大好き』の対象が、自分だけでは無いような気がした。
「ひよっとして、『お姉さん』は誰でもいいのかな……」
『え?』
お姉さんが凍り付いた様に動きを止めた。 笑顔がまるで仮面の様に見える。
「『お姉さん』?」
銅鑼の呼びかけにも彼女は応えない。 そのまま10秒ほどが経過する。
『……やだなぁ。 誰でもいいわけじゃないよ』
「そう?」
銅鑼はあいまいに返しながら考えた。
(今の『間』はなんだ? なんだか俺ががっかりしないように、無難な回答を考えていたようだけど……いや、少し違うな……)
銅鑼は、笑顔のまま静止していた『お姉さん』に既視感を覚えた。
(そうだ、あれ。 ネットで動画を見ている時、読み込みが間に合わずに画面が制止する、あんな感じだった)
銅鑼はじーっと『お姉さん』の顔を見る。
「ねぇ、君は一体何者なの? ここはどこなのさ」
『お姉さん』はあいまいに笑った。
『そんなことどうでもいいんじゃないの?』
彼女がそう言うと、辺りがぼやけ始めた。
「待って、まだ……」
銅鑼が続きを言う前に彼女と白い部屋は消滅し、銅鑼はヘッドセットをつけて椅子に座っている自分に気が付いた。 銅鑼は舌打ちして、ヘッドセットを外す。
「どうでもいい……のかなぁ」
銅鑼は拍子木と太鼓腹との会話を思い出した。
「『アクセスしない方がいい』か……」
ブラウザのURLを確認しながらつぶやく。
「そういう訳にもいかないよな……」
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