白い人魚

6:水平線の彼方には…あ〜あ


そして、3か月後…
教授と姫は今後の身の振り方を話し合っていた。
「率直に言って、私はあなたが好きだ…しかし、私には教授としての責務もある…何より体力が限界に近い…」
「…はい…」
「人魚には雄がいないという…ならばここは、人間の雄がいつまでも暮らしていい場所ではない…違うだろうか?」
「…気づいていらしたのですね…」
「私を人間の世界に帰してもらえないだろうか…」
姫はしばらく泣いていた…しかし、結婚後の別離は、人魚の結婚慣習でもあるらしい。
やがて、教授の提案を承諾する。
教授は続ける「私は、あなた方の存在を調査する為にやって来たし、その成果に関して報告する義務があるのだが…」
「あなたを信頼します…決して悪いようになさる方ではないと…」
そして、2人は別れを受け入れた。

人魚には、人前に姿をさらしてはならぬという決まりがある訳ではないらしいが、大っぴらにする理由も無い。
船が近くを通る島に、夜のうちに運んでもらう事になった。

久方ぶりに、姫の母上(義理の母という考えはないらしい)に運んでもらうことになった。
教授は、例によって彼女の口の中にいるため周りの様子は全くわからない。

やがて、小さな島の砂浜に上陸させてもらった。満月が美しい。
姫が波打ち際までずりずりやって来た。姿が見えないが、周りの海には、娘達の気配もある。
沖には、姫の母上の巨大な頭がが満月に届かんばかりの偉容を見せている。
教授「名残惜しいが、ここでお別れだ…元気で…」
「はい…娘達からもお別れを申し上げます…」
姫はそういうと、沖を向いて叫んだ「娘達!…お父様にお別れを!…」

そして、海が動いた。
教授の見たものは…水平線の彼方まで、海をびっしり埋め尽くした人魚達であった…
人魚達が一斉に頭を下げる。
人魚達『お父様…有難うございましたぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
教授は失神した。


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