沼の娘

6:攻防


『カンツェーラ』達は、ボートから10mほどの所で止まる。
「警戒しているんでしょうか?」「おそらく…ん?」

パシャ…一匹の『カンツェーラ』がすっと手を上げる…手招きを始めた…
「オイデ…」
人間の声とは違う、抑揚に乏しい不気味な声…さらに一匹が
「オイデ…」
そしてまた一匹…。
「オイデ…オイデ…」
単調な…眠気を誘うような声…一匹…また一匹と声を合わせてくる…
「オイデ…オイデ…ココニオイデ…舐メテ溶カシテアゲル…身モ心モトロトロニ溶カシテアゲル…」
言葉の中身は無気味なのだが、彼女達の声は、耳に心地よい…
(言葉がしゃべれるとは、見かけより知能が高いのか…うむ…なんだか…)教授の思考が怪しくなってくる…
他の山賊たちも、声に呪縛されていく…
「オイデ…オイデ…ココニオイデ…舐メテ溶カシテアゲル…身モ心モトロトロニ溶カシテアゲル…」
「ああ…今行く…行く…行く…」何人かが抑揚の無い声で応じ始めた…

バッシャーン!激しい水音で皆が我にかえった、山賊の一人が声に誘われ水に落ちたのだ。
バシャバシャ…ボートのすぐ下にも『カンツェーラ』が潜んでいたようだ。
落ちた山賊に『カンツェーラ』が群がり、爪で引っかいて毒を注入し、服を剥いで全身を舐めあげ、ヌルヌルの体を擦りつけて愛撫する…
「た、助けてくれ!」まだ毒が回っていないのか、助けを求め、手を上げる…
他の山賊が手を伸ばして引き上げようとするが…
「うわぁ」ドッポーン!
別の『カンツェーラ』がその手を掴み、逆に沼に引っ張り込んだ。
バチャバチャ…たちまちその男にも『カンツェーラ』が群がる。
「た…たすけ…ああ…溶ける…蕩ける…」「溶ケロ…溶ケロ…」
「なんて…気持ちいいんだ…もっと…舐めて…」「エサ…エサ…」
『カンツェーラ』のヌメヌメした肌と手の愛撫は、男達の心を呪縛する…二人とも恍惚とした表情で『カンツェーラ』達を受け入れてしまった…
力を抜いて、あお向けにプカプカ浮いている男達、その周りで楽しそうに『カンツェーラ』が男達を舐める、愛撫する…
「エサ…エサ…」「溶ケロ…溶ケロ…」
「ああ…溶ける…蕩ける」「天国だ…もっと…舐めてくれ…」
『カンツェーラ』達は、彼らを愛撫しながら何処かに運んでいく…

バチャッ…
「おうわっ」待ちきれなくなったのか、『カンツェーラ』の一匹がボートに這い上がってこようとする。
「エサ…エサ…」笑っているように見える。なまじ人間…それも美少女に見える分、不気味さが増す。
コットンがオールで払い落とすが、すぐに別の一匹が這い上がろうとする。

バチャン、ビチャン…他のボートも似たような状況だ。ニ人を失い一人になったボートでは防ぎきれない。
「うわあ…くるな…」山賊が一人で奮闘しているが、背後から『カンツェーラ』が飛びついた。首に舌を巻きつけペロペロ舐める。
「あぁぁ…やめろ…」振りほどこうとして、バランスを崩し、ボートの中でひっくり返る。
小さな『カンツェーラ』達が次々飛びつき、男の服の中に潜り込む。
こんな状況でも、教授の冷静に観察していた。(おう、下半身はやはり魚じゃな…凄いジャンプ力じゃ…腹に吸盤でもあるのか?はりついてきよる…)

体中に『カンツェーラ』にたかられている男は、彼女達を引き剥がそうとしていたが…ヌルヌルしているくせに、意外にしっかり貼りつきはがせない。
「は、離れろ…服に入るな…ヌルヌルで、き、気色悪…い…あ…ああ…な、なんだか…気色いい…」
男の体から力が抜けていく…小さな『カンツェーラ』達の愛撫に心が奪われていく…
ズボンを器用に脱がしていた『カンツェーラ』の前に、男の一物がさらけ出される…
『カンツェーラ』はビチビチ喜びながら、亀頭を咥え、ペロペロ舐め始める…
「あぁぁぁ…いい…チ…チ××が…溶ける…蕩ける…」滑る感触に包まれ、異様な快楽に心が犯され、正気を失っていく…
「オイシイ…オイシイ…エサ…エサ…」
「ああ…だめだよ…おじさんは…ロリコンじゃないんだ…」
『カンツェーラ』が幼児にみえるらしい。
それが理解できるか、人間程に成長した『カンツェーラ』がボートに這い上がり、男に抱き付く…激しく口を求めながら…性器で一物を呑み込んでいく…
『カンツェーラ』の毒に犯された身には、それが至福の交わりに感じられる…
張り詰めた一物は、『カンツェーラ』の粘液に包まれ、そしてスリット状の性器に呑み込まれる。
男の体が反り返る…『カンツェーラ』の中は、溶けた肉のように柔らかく、たっぷりと粘液を出して一物を根元まで…そして陰嚢すらすっぽり呑みこみ…やわやわ、ヌルヌルと揉みしだく…
「ああ…こんな…素敵だ…もっと…もっと…どうなってもいい…」
「溶ケロ…溶ケロ…トロトロニ…」
「ああ蕩ける…蕩ける…溶けて全部出てしまう…もっと溶かしてくれ…」
文字通り蕩ける快感に溺れてしまう男…もう体の中が溶け始めているのか、ボートの上でヌルヌルの液体に包まれ、『カンツェーラ』の愛撫に浸っている…他の大きな『カンツェーラ』も寄ってくる…
「サア…連レテ行ッテヤル…快楽ノ沼ニ…」
そのままボートごと、どこかへ運びされれてしまう…

一方、教授達は善戦していたが、多勢に無勢…追い詰められつつあった。
「だ、だめだ…」
「あわわ」教授は手近の物を投げつけた。何かが飛んで『カンツェーラ』にあたり一緒に沼に落ちる…
「ギャン」「イタイ」「イタイ」
突然『カンツェーラ』達が残った2つのボートから離れる…
「な、何じゃ?」「さあ?」
「に、逃げろ」ボスの声で皆我にかえり、全力でオールを漕ぎ始めた…
『カンツェーラ』達の大部分は、沼に落ちた男達の始末に回ったらしく、2,3匹だけが追ってきたが、時たまオールで叩かれ、いつの間にかいなくなった。

30分程逃げると辺りは静かになったが、一行は8人になっていた。
「はぁはぁ…」「た、助かった…」
「いや、沼の中にいたのでは危ない」
「なんだと、じじい」
「とにかく陸に上がろう」
「ちっ…しかしどっちが陸だ?」
沼にはあちこち木が生えている。深さはさほどでもないらしいが、見渡す限り水面が広がっている。
だだっ広い上に、靄がかかっていて、あまり遠くまで見通せない。
「くそ…」
パシャ…微かな水音がして、全員がギクリとする。
バシャ…
「き、来た…」
「早く逃げるんだ!」
「待つんじゃ!…この音は違う…波が何かを叩くような…あっちじゃ」
教授達の乗ったボートは、教授の指示する方向に進む。
やむを得ず、ボスの乗ったボートも続く…

程なく一行は岸に着いたが、そこは崖になっている。高さは20m程で左右に見渡す限り続いている。
「これは…」教授は絶句する。
「貴様、これを上るのか!え!」ボスが教授を責める。
「やめて下さい、教授の責任ではないでしょう!それより向こうに穴があります。洞窟になっているかも」コットンが、右手の方を指す。
そちらに行ってみると、確かにかなり大きな洞窟が口を開けている。ボートごと中に入れそうだ。
幸い、懐中電灯は残っていたので、明かりをつけて奥に進む。10mも進むと砂が厚く積もって小さな砂浜になっていた。
一行は上陸し、ボートを引き上げる。
「うむ、とりあえずここならこちらが有利なはずじゃ」
「おぅ、追いかけてきたら、今度こそ銃をお見舞いしてやる」
「でも、ずっとここに隠れているわけにも行きませんよ」コットンが指摘する。
ボスがむっとするが、確かにそうだ。

教授は洞窟の奥を伺っていた。
「…風が抜ける、何処かに出られるな…」

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