沼の娘

4:悪魔の交わり


「……」
一行はそれを見つけた、衣服の残骸…正体不明の粘る液体でぐっしょり濡れている。
血痕はないが、何かに襲われたらしいことは判る。

「おい、じいさん」ボスがドスの聞いた声で、教授を呼ぶ。
「じいさんとはなんじゃ、わしはまだ…」文句を言う教授。
「やかましい!これは何だ、何にやられたのか判るか?」
「わからん。この辺は、お前さんたちの方が詳しいじゃろうて」
「けっ、…ジャガーにやられたな…」
「ち、違うと思います」とコットン助手。
「何ぃ?」睨む男。どうやらボスらしい。
「血痕がありません、むしろボアのような大蛇ではないかと…」意見を述べるコットン助手。
「それはないじゃろう、いかな大蛇でも人一人飲み込むには半日はかかる。第一、服を脱がす事はできまいて」と教授。
「じゃあ、なんだ…他に何が…」手下の一人が呟く。
「…『カンツェーラ』…」とコットン助手。
一行がぎょっとして、コットン助手をみる。
「ふざけるな!そんな物が現実に…」ボスが否定するが、声に力が無い。
「四の五の言うより、来た道を戻ったほうが良いぞ」と教授。
「なんだとぉ!」ボスは大分カリカリしている。
「相手の正体がわからん。しかし、危険であることははっきりしておる。今まで安全だった道を通るべきじゃろうて」
「む…」ボスは考え込む…が「だめだ、いつもの道まで戻るとアジトまでの食料が足りん」
辺りをぐるりと見回し、服の残骸を銃で突付く。
「一人にならなきゃ大丈夫だ。いいか、これからは単独行動は厳禁だぞ!夜は見張りを立てる、いいな!」
仕方なく頷く一行、だが、程度の差こそあれ全員が不安そうであった。
そして一行は密林を先に進む…

やがて日没が近くなった頃、少し開けた場所を見つけ、テントを張って野営の準備をする。
教授とコットンも手伝わされる。
「教授…」
「む?」
「暗くなったら…」
「駄目じゃ…夜の密林、町まで二日、正体不明の襲撃者…そっちの方が危険…というより無謀じゃ」
「そうですね…」
やがて簡単な食事を山賊達と取った後、教授とコットンはおとなしく寝てしまう。

山賊達は、交代で一人が見張りに立つ事にした。
人質がぐうぐう寝ていて、山賊が不寝番…多少の不条理を感じななくもない。

夜もふけ、午前3時ぐらい…交代した3番目の見張りが立っていた。
真っ暗な密林を見ていても何も見えないが、明かりを点ければ目印を点けているようなものだ。
見張りは、明かりは点けずに、耳をすませて警戒している…
ガサ…草の揺れる音が微かにした。
「!…」見張りは緊張する…まず確認だ…
音のする方に向き銃をかまえ…いきなりライトで照らす!…が、何もいない…
一、二歩踏み出す…やっぱり何もいない…
辺りをさっと照らしてみるが、深い草むら以外何も見えない…
首を振って元の位置に戻り、明かりを消した…明かりを点けたので、目が暗闇に慣れるまで、また少しかかる…

「…オイデ…」
微かな声がする。見張りはギョッとして誰何する…「だ、誰だ!」
「オイデ…オイデ…コッチニオイデ…」
微かな声が続く、どこか人間離れした、単調な声…女の声のようだ…
「オイデ…オイデ…コッチニオイデ…オイデ…オイデ…コッチニオイデ…」
声の出ている所を突き止めようと、じっと耳を澄ます…
「オイデ…オイデ…」
頭の中に響く…心地よい声…聞いていると頭の中に染み込んでくる…見張りの目の焦点が合わなくなっていく…銃を構えていた手がだらりと下がっていく…
フラフラという感じで、見張りは密林に分け入り、声の呼ぶ方にとぼとぼと歩いていく。

トボ、トボ、ズブリ…「う、うわっ…」
突然足が落ち葉を踏み抜く、底なし沼だ…はずみで正気に戻った。
手を伸ばしてもがくが、胸まで沈んでしまった。何かを掴もうにも手の届く範囲に何も無い。
その時、見張りの手を誰かが掴んだ…ちょっと冷たく細い手が、意外な力で見張りを固い地面に引っ張り上げる。

見張りはずぶ濡れで、うつ伏せのまま息を整えている。
「ぜいぜい…た、助かった…えと、君は誰だ?」周りは相変わらず真っ暗である、命の恩人の顔すら見えない。
うっすらとシルエットが判る…妙に背が低い、見張りと同じようにうずくまっているのか?…
「ライト、ライト…よかった、紐が切れてない…うわっ?誰だ?…」
見張りの背後から、別の誰かがのしかかってきた。両手でシャツを脱がせ始める。
「おい、何をする…ひっ?…」
背後の相手に向き直り、その顔をライトで照らして驚いた…
女だ、髪は無いが整った顔立ちで、美人といって通るだろう。
だが、皮膚の色が茶色い。ラテン系の褐色の肌ではない、黄土色だ。
そして、顔全体が濡れている…ライトの光を反射してヌラリと光る…

さらに、女の体を照らそうとしたが、その暇は得られなかった…
異形の女は見張りに抱きついてきた…起き上がりかけた見張りを優しく押し倒す…鋭い爪が皮膚を浅く引っかく、微かな痛みが走った…。
ヌラー…フニャアア…
「いいっ…お、お?…」
女の抱き心地は、想像外だった…ヌラリとした感触が胸の皮膚全体を舐め上げ、そして柔らかい胸が見張りの胸全体を包み込む…
変だ…乳首も乳房もないような…アバラ骨の感触もなかった…
ヌラー…ヌラー…
女は上体をゆっくり動かし、柔らかい胸で見張りの胸を愛撫する…ヌラヌラした皮膚が乳首を柔らかく刺激する…大きな舌で舐め上げるように…
「なんだ…お前の体…変だ…変…」
不思議な感触のボディ・マッサージ…不快ではない…むしろ快い…とても…

女は長い舌を伸ばして、見張りの口を舐め始めた。
キスではない…見張りの口を割って、口の中にヌラヌラした舌が侵入し、舐めまわす…
見張りは抵抗しようとするが、なぜか力が入らない。
ヌチャ…ヌチャ…口腔が犯されていく…

「げはっ…ぐ…」
やっとの事で女の舌を口の外に押し戻す。
逃げようとするが、足が体が動かない。
手で這いずって逃げようとするが、異形の女達もズリズリ這いずって来て見張りを捕まえた。
もがく見張りを仰向けにして、一人が上に這い登ってくる。
そのとき女達の体が、胸以外も異様に柔らかくフニャフニャした感触である事に気がついた…
全身ヌルヌルしている…人の体の感触ではない…ウナギかナマズのようだ……得たいの知れないもの達に対しての恐怖が巻き起こる…

「助け…ゴボァ…」叫ぼうとして口を開けるが、女が柔らかい唇で口を塞ぎ、舌を絡める…舌も動かなくなってきた…
見張りの胸から腹にかけて、女のフニャフニャした胸と腹がベッチャリと密着し、ヌルヌルした体を擦りつけている。
「ハァッ、ハァッ…アハッ…」女の息が荒く、甘い声になってきた。
”ううっ…き、気色悪っ…よ、よせ…”見張りは、女を引き剥がそうと抵抗するが、女はしっかり抱きつき離れない…
ヌラリ、ヌラリ…見張りの体に、女が体全体を使って、粘る液体を塗りつけていく。

”な、なんだか…変だ…妙に…気持ちいい…頭が…おれは…何を…”
体が動かなくなっていくにつれ、全身の感覚は逆に鋭敏になっていく。
ヌルヌルした女の全身が、皮膚を通して心を直接愛撫する…女の愛撫だけに感覚が集中していく…

ザワザワ…草むらから同じような女達が、さらに何人も現れた。皆這いずってくる。
女達は、見張りの体中に群がる。見張りは裸にされ、全身くまなく女達に舐めらる。
ペチャ…ベロリ…ベロリ…ペチャペチャペチャペチャペチャ…
”こ、こいつら…何を…人間じゃない…じゃ…何だ?…”
ベロ…ヒク…チュク…
”い?…今度は…何だ?…”
ベロベロ…ヒクヒクヒク…ジュン、チュク、ヌル…
見張りは奇妙な感覚に襲われる。
女に舐められている所が、ジンジンと暖かいような冷たいような不思議な感じになる…
そして、意志と関係なくヒクリヒクリ蠢き…体の内側がヌルヌルになっていく…
体のあちこちで巻き起こるその感覚が、次第に広がり一つになっていき…
突然、それが蕩けるような快感である事に気がつく…

見張りは、快感のヌメリの中で悶え、身を捩る…
”蕩けそうだ…あぁぁ…悪魔…悪魔だ…溶ける…悪魔の舌で舐めとかされる…うぁぁぁ…”
まだ理性が残っているが、女達は見張りを舐めつづけ、快楽の沼に引きずり込んでいく…
「溶ケロ…溶ケロ…身モ心モトロトロニ溶ケテシマエ…」

一人の女が陰嚢を咥え、ヌラヌラした舌で転がしながら、ヌルヌルの唾液が溢れる口に呑み込み、モニュモニュ柔らかく咀嚼する…
2つの睾丸が擦れ合い、金属的な快感を生み出す…陰嚢が膨れ上がっていく…
”だめだ…いく…いってしまう…悪魔の口でいってしまう…神よ…”
「イケ…イッテマエ…」「イケ…イケ…」「ダセ…ダセ…」「エサ…エサ…」
気配を察して、女達がはやし立てる…
女達の声が心に響く…悪魔に犯される…耐え切れなくなり、射精してしまう…張り詰めた亀頭からドロリとしたものが吹き出る感触がある…
ドローリ…ドローリ…
粘っこい液体が、大量に出て行くような異様な射精感がある…普通の射精よりずっと感じる…何より、止まらない…

ペローリ…ペローリ…
誰かが、舌で吹き出る物を舐め始めた…射精の快感と、舐められる感触が心を捉えて離さない…
見張りは抵抗をやめ…積極的に快楽を貪っていく…それとも、心が快楽に貪られているのか…
体の上にのっている女が、体をズリズリ動かす…何を?と思ったときには、一物がヌルヌルした穴に呑む込まれていくのを感じた…
口ではない…悪魔の膣?…一物が濡れる肉に呑まれていく…感じやすくなっている一物が快感でビクビク震える…
”うぅぅぅ…悪魔と交わっている…おぉぉぉ?…なんて柔らかい…”
膣の中は異様に柔らかい…亀頭が動くと、淫肉がヌチャリ、ヌチャリと纏わりつく…じっとしていると、亀頭と淫肉が溶け合ってしまいそうだ…
”いぃぃぃぃ…あぁぁぁ…頭の中が沸騰しそうだ…おれの物が、体が蕩ける…悪魔に食われる…”
「サァ…ダセ…エサ…ダセ…モット…」「ダセ…ダセ…」
射精の勢いが強くなる。
ドップ…ドップ…ドップ…ドップ…女の中、子宮の奥に、命じられるまま注ぎつづける…

やがて、女がずるりと体から降りる…直ぐに次の女が這い上がり、男根を濡れた肉の穴に呑み込み、柔らかい淫肉が一物を蕩かそうと舐めしゃぶる…
見張りは抵抗しない…女達にされるがまま…時折ヒクヒク蠢くのみ…
妖しく蕩ける快感に溺れ…喜びに震える魂が快楽地獄に沈んでいくのを感じていた…

見張りが無抵抗になったのを見計らい、女達が次の行動を起こす。
「オイデ…」女が囁く。
「あぁ…」
「オイデ…」
「いく…どこへでも…」
「オイデ…暖カイ沼ニ…蕩ケル沼に…」
ズリズリ、ザワザワ…見張りは、女達に何処かへ運ばれていった…

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