ガールズ イン ア ボトル

Part13:レイシアと教授


 『レイシア』達の『髪』が無数の蛇の群れとなり、ランデルハウス教授目指して床を這って来る。

 濡れて光る褐色の『蛇』が、淫靡に踊りながら迫り来る様に、教授は『レイシア』の女の業を見る思いだった。

 ヌルリ…… 褐色の『蛇』の最初の一匹が、教授の足に巻きつき、トクトクと脈動する。

 (ぬっ……)

 『蛇』から伝わってくるリズミカルな波が、教授の中に生暖かいものを呼び覚ます。

 うずく、うずく……うずいてくる。 教授の中の男の部分が、『蛇』の呼びかけに応え、チロチロと燃え始める。

 しかし教授は動こうとしない。


 ヌルリ……ヌルリ…… 

 『蛇』たちが一匹、また一匹とたどり着き、教授の足に纏いついてくる。

 断固として、しかし優しく、『蛇』達は欲望の疼きを教授に伝え、それは彼の頭の中で『レイシア』の言葉へと変わる。

 ”きて……”

 ”ねぇ……”

 『レイシア』の誘いは抗いがたい響きがあり、じわじわと高まっていく欲望に、理性が次第に奪われていく。

 (ふむ……悪くない)

 教授は、『蛇』を踏みつけないように注意しながら、妖しく招く『レイシア』達に歩み寄る。 そして、一人の『レイシア』の頤を持ち上げて、優しく口付けした。

 ”ああ……”

 『レイシア』が喜びの声を上げ、彼女の『髪』がうねり、教授を包み込む。 たちまち衣服が消えうせ、『髪』が絡み付いて教授の肌を優しく愛撫する。

 (おお……)  

 言葉にならない喜びが、全身を包み込み、教授の魂を揺さぶる。

 立ち尽くす教授に、他の『レイシア』達も肌をよせ、『髪』を絡めてきた。

 (あ……ああ……)

 『レイシア』達は、無抵抗になった教授の体を、丁寧に、念入りに愛撫する。

 ヌチヌチヌチ……

 静かな空間に、愛撫の音だけが響く。 それは、神聖な儀式の様にも見えた。


 胸に、足に、股間に、『レイシア』が絡みつく。

 滑る感触は、優しく後を引き、溶けてしまいそう。

 口をあけ、舌を求めれば、芳しい香りの唇が覆いかぶさってきて、熱い舌が教授の口腔をじわりと犯す。

 胸の奥にもどかしさを感じると、熱く柔らかい双丘が肋骨の浮き出した胸にかぶさってきて、その形を写し取ろうとする。

 柔らかな軟体動物のようなそれが、じゃれるように尖った乳首で教授の胸を弾いている。

 そして、男の欲望が男根を固くすれば、待ち構えていた『レイシア』の女がそれをくわえ込む。

 (うっ……)

 ジュルン、ジュルン、ジュルン……

 筒状の襞が教授の亀頭を弾いて、熱い粘りにも似た快感を生み出す。

 抗うことのできない喜びに、このまま全てを『レイシア』に委ねてしまいたくなる。 しかし……

 (ん……)

 教授は何かに口づけし、それを舌で愛撫する。

 舌を這わせ、唇で優しく挟み、強弱をつけてすする。 最初ははっきりしなかったそれが、次第に『レイシア』の女の形になっていく。

 ”あ……ぁぁ……”

 切ない声でよがる『レイシア』を、教授あくまで優しく愛し続けた。

 ”あ……あ……ぁぁぁぁぁ……”

 思いのほかかわいらしい声を上げ、『レイシア』は達し、同時に教授を愛していた『レイシア』の動きが止まった。

 ずるりと『蛇』の塊が崩れ、抱き合う『レイシア』と教授の形になった。

 二人はぐっしょりと濡れて床に横たわったまま、満足げな吐息を漏らす。


 「異星の男。 それで抵抗のしたつもりか?」 『創造主』は馬鹿にしたように言った。 「ここは『レイシア』の中だ、どう足掻いても、最後には

お前は『レイシア』ものとなる」

 『レイシア』が身を起こし、教授に寂しげに微笑む。

 「いまのはお気にめしませんでしたか? お望みの姿、お望みの快楽にて取り込んで差し上げます……例えば……」

 『レイシア』の肌が白く変わり、胸が大きく膨らんでいく。

 「……」

  白いアメーバのような乳房が、横たわるき教授を谷間に包み込み、蠕動して教授をの全身を解きほぐす。

 「それとも……」

  白い塊は小さく縮みつつ青く変わり、女に目覚めたばかりの少女の姿になった。

 「私を女にして……」

 恥じらいながら『少女』は教授に体を摺り寄せる。

 「そうか……それなら」 教授は『レイシア』の肩に手をかけ、そっと体を離しながら言った 「『クー・レイシア』、現実の君の姿で愛し合い、君のもの

となりたい」 

 「そうですか……」 『レイシア』は『少女』の姿から、髪の代わりに触手を生やした『レイシア』の姿に戻る。 「この姿がお気に召しましたか……」

 『レイシア』の口調に微かに苦いが混じったのを教授は感じ取った。


 「『クー・レイシア』、君が君でなければ、私はこんな事は言わない」 教授はきっぱりと言い放った。

 「?」『レイシア』が首をかしげる。

 「姿形が問題でないと言えるほど、私は人間ができているわけではない。 しかし、『クー・レイシア』。 君はその姿で生まれてきた。 その姿は『クー・

レイシア』の形だ。 ならばそれを受け入れずして『クー・レイシア』を愛することにはならん」

 そう言って、教授は彼女にキスをする。

 「一方的に君に『喰われる』つもりはない。 男として私は君を愛し、結果私は君のものとなる。 そして、君を愛するなせば、全部丸ごとだ。 それが最低限

守るべき男と女の約束事だ」 

 「いやはや……」 『創造主』は呆れた様子で言った。 「『レイシア』は幸せものだ、こんな奇特な男とめぐり合えたのだから」

 「いいや、彼女は不幸だろうて」 教授が言い返す。 「貴殿が彼女達の行く末を考えていれば、こんな異星への旅に送りだす事も、『人間記憶装置』として

作り出すこともなかったのだからな」

 しばし教授と『創造主』は睨みあった。

 二人が睨みあう間も、教授の右手は『レイシア』の乳首を転がし、左手は『レイシア』自身に伸びつつあったが。

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