ガールズ イン ア ボトル

Part10:教授の挑戦


 教授は心の中で、クー・レイシアに呼びかけた。

 (レイシア君。 条件とは、君の中にある君達の故郷の記憶、それを見せてほしい)

 ”?”

 (君は創造主の記憶……そう『創造主の魂』とでも呼べるものを保管してきたと言う。 では、君の『脳』……またはそれに類する器官は、

『他人の魂』を記憶し、保管し続ける機能と容量があるのではないか?)

 ”だったらどうだと言うのだ?”

 (私の条件とは、私の『魂』を君の中に取り込み、君の記憶を覗かせてほしいと言うことだ)


 ランデルハウス教授以外の3人が、一様に驚いた。


 『教授!?』

 ’異星の方!?’

 ”若くない男性体……いや、教授と呼ばせてもらおう。 貴殿の提案は理解できない。 それにどういう意味があるのだ?”

 (意味だと? わしはただ知りたいだけだ。 異なる星に生まれた人間が、どんな文化を築き、何を考えて星を渡ってきたのか)


 教授がクー・レイシア、サティ、コットン助手を見渡した。


 (コットン君、私は自分の好奇心を満たすために学問の道を志し、望的に小さい可能性にかけて、世界を巡って来た。 そして今ここに、私が目指

したものとは違うが、他の星の人類と話をし、その世界を覗き見る得がたい機会が現れたのだ。 これは命を懸けるに十分ではないか)

 『教授、正気ですか!? 彼女の提案に乗ると言うことは、例え教授が彼女の記憶を見ることができても、教授自身はこの世から消えてしまうに

等しいのですよ!?』

 (判っているつもりだ。 しかしコットン君、サティ、クー・レイシア達は命を懸けて星を渡って来た。 彼女達と取引するならば、私も命をさし出す覚悟が

必要だ)

 『教授! 彼女達は一方的に我々を捕まえ……』

 
 なおも言い募るコットン助手を教授は手で制した。


 (コットン君、これは二度と来ないチャンスなのだよ。 今まで私のわがままに付き合ってくれて有難う。 感謝しておるよ)

 『教授……』


 コットンは教授の決心が固いと知り、項垂れた。

 ランデルハウス教授は、彼の労苦に礼を述べ、クー・レイシアに向き直った。


 (さて、こちらの話はついた。 そちらはどうするかね)

 ”貴殿の提案を受け入れる。 貴殿の魂を我が内に招きいれよう……それで貴殿の目的は達せられるだろうが……貴殿は

ある面創造主に似ているな……”

 (ほう? それは光栄だと言うべきかな)


 クー・レイシアの触手がザワリと動き、教授ににじり寄っていく。

 ”サティ、教授を解放しなさい。 ここまで言ったのだ、逃げることはないだろう”

 ’クー・レイシア……’

 
 サティが悲しげに首を横に振る。 しかし、クー・レイシアが”口調”を強めると、サティは名残惜しげに教授から離れた。


 「ふぅ」 教授は一息はき、体操するように手足を動かしてみた。 「体がちゃんと動くのはいいことだな」

 「さて、教授……我が内に招待しよう」

 頭に無数の触手を蠢かせた褐色の妖女が、ランデルハウス教授ににじり寄ってきた。 が、教授は彼女を手で制する。

 「やはり教授も我が恐ろしいか」 微かな悲しみを込めて、クー・レイシアが呟いた。

 「いや、こう言うの事は、互いの気持ちが大事なのでな。 わしに任せたまえ」

 そう言って、教授はシャツのボタンを外し始めた。

 「?」

 クー・レイシアが首をかしげている間に、教授は服を全部脱ぎ、その場にたたんで置いた。 そして恐れる様子もなく、うねる触手に

囲まれたクー・レイシアに歩み寄ると、その褐色の女体を優しき抱きしめる。

 「……」

 僅かに動揺するクー・レイシアに微笑んでみせると、彼女に優しくキスをした。

 「あっ……」 クー・レイシアが小さく呻く。

 教授はかまわずに唇を甘噛みし、舌先で形の良い唇をなぞる。 震えるおとがいを持ち上げ、喉の舐めるよう愛撫する。

 クー・レイシアは小さく体を震わせると、教授を両手で抱きしめた。 ふくよかな乳房が教授の胸に押し当てられ、柔らかく形を変える。

 「むっ……」

 教授は胸が溶け合っていくような錯覚をおぼえた。 見れば滑る液体が乳首からとろとろと分泌され、互いの体を濡らしている。 その

接触している皮膚から、クー・レイシアの感覚が伝わってきているらしい。

 「互いの感覚を共有……これはあまり長いこと正気でいられんかな」

 人事の様に呟くき、教授は互いの胸を強くすり合わせる。

 「あっ……」

 「うっ……」

 お互いが感じていることが判るので、事が的確に進む。

 教授の指が、クー・レイシアの秘所に滑り込み、熱い溝を優しく撫でると、クー・レイシア細い指が教授の男根に絡みつき、それを固く熱い塊に

作り変えていく。

 「……」「……」

 二人は視線を交わすと、ごく自然に互いの性器を結合させ、長年連れ添った夫婦でもこうは行かないというほど息の合った動きで、互いを優しく

慰めていく。

 『は……あ……』

 喘ぎ声まで一つにして、違う星で生まれた男と女が、互いの快楽に溶かされながら一つになろうとしていた。

 ニュリル……ニュルリ……

 今まで動きを止めていたクー・レイシアの触手が、蛇の様に蠢きながら二人を包み込み始めた。

 教授はわずかに自分を取り戻し、背中を這うクー・レイシアの触手の感触に意識を集中する。

 熱く滑る蛇が背中張り付き、溶けていく。 不思議な高揚感と共に、教授は自分の体の感覚が、あいまいになっていくのを感じた。

 (やはりこの触手は、彼女の『脳』の一部……普通の人間の数倍の容量があるやもしれぬ……)

 不意に彼女の顔が視界に入る。 触手の塊の中で、その表情に微かな陰りがある。 クー・レイシアと精神的に一つになりつつあった教授には、その

『陰り』の理由がわかっていた。

 「そなたは美しい。 心からそう思う」

 教授の言葉に、クー・レイシアの顔が輝いた。 同時に、熱い喜びが互いの性器を溶かしていく。

 「あ……あああ……」

 微かに呻いた後、教授のまぶたが閉じられた。 彼の『魂』がクー・レイシアの中に取り込まれたのだ。

 ランデルハウス教授は、クー・レイシアの内宇宙を旅する。 始まりの惑星『クー』に向かって。

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